「鉄子」はどこからやってきた?~『鉄子のDNA 』

鉄子のDNA (小学館101新書)
『鉄子のDNA (小学館101新書)』
豊田 巧
小学館
735円(税込)
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 「鉄子」とは、鉄道好きの女性を表し、彼女たちの増加とともに、ここ数年で急激に広まった言葉です。そもそも鉄道趣味は、男性がほとんどを占めていました。鉄道ファンやマニアを指し示す「テツ」という言葉はありましたが、これまでは女性は存在しないと思われていたので、あえて表すような言葉がなかったのです。

 鉄子増殖のきっかけとなったのが、2001年から06年まで『月刊IKKI』に連載されていた漫画『鉄子の旅』。タイトルに「鉄子」という言葉を使っているこの作品が、鉄子にとっての起爆剤になったことは間違いありません。この漫画は、日本国内の全駅下車を達成した筋金入りの鉄道ファンである横見浩彦氏を旅の案内人に立て、今までまったく鉄道趣味と縁がなかった女性マンガ家のキク子とIKKIの編集者の3人が"鉄道そのもの"を目的にした旅にでかけ、その様子を漫画にしていく実録もの。

 また、100万本を超える大ヒットとなった鉄道エンターテイメントゲーム『電車でGO!』も大きな影響を与えているでしょう。ドラマ『電車男』『特急田中3号』も忘れてはなりません。

 ところで、鉄子には二つのタイプがあるようです。一つは、独身女性の鉄子。特に昔から鉄道趣味をしていたわけではなく、彼氏や家族がテツというわけでない。しかも、鉄子同士が知り合う機会はまだまだ少ないらしく、ひとりで鉄道趣味を楽しんでいる人が多いよう。

 もう一つは、子どもと一緒に鉄子をやっているお母さんたち。男の子は幼稚園児頃に鉄道が好きになります。そんな子どもと一緒に鉄道に触れていると、いつの間にかお母さんが鉄子になっているのです。

 10年前には「鉄子」の言葉すらなかった鉄道趣味の世界。『鉄子のDNA』では、なぜ「鉄子」が増殖しているのか、SLブームやブルトレブームという鉄道趣味のルーツにさかのぼり、また著者が関わってきた『電車でGO!』と『鉄子の旅』という鉄道エンターテインメントの二大ヒットに触れながら、その謎に迫っています。ひょっとしたら、あなたにも"鉄子のDNA"が備わっているかもしれません。

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