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第2回:沢野 ひとしさん (さわの・ひとし)

「WEB本の雑誌」の自称注目コーナー「作家の読書道」第2回目に登場するのは、毎月『本の雑誌』の表紙でイラストレーションとともに謎のメッセージを発信する沢野ひとしさん。あの独特な文字で書かれた沢野さんのつぶやきを楽しみにしているファンも多いはず。沢野さんはどんな読書生活を送っているのか?最近どんな本を買ったのか?我々「WEB本の雑誌」編集部員が沢野さんの事務所を訪ねてきました。

(プロフィール)
1944年、愛知県生まれ。
児童書の出版社に15年間勤務を経て独立。書評誌『本の雑誌』の表紙・イラストを創刊号より1人で担当。
椎名誠の著書をはじめとして数多くの挿絵を手がける他、雑誌や広告等でも独自の描線・色彩による世界を描く。
1991年、第22回講談社出版文化賞さし絵賞受賞。
山を愛し、80年中頃から北アルプス、ヨーロッパアルプス、ヒマラヤをアタック、登攀、登頂を重ねる。
主な著書に『昼寝主義』、『やまの劇場』、『沢野ひとしの絵旅日記』、作品集に『沢野ひとしの片手間仕事』、『センチメンタル』、『銀座のカラス』。対談集に『沢野字の謎』、『沢野絵の謎』、短編映画『スイカを買った』がある。。

【本のお話、はじまりはじまり】

〜人生、短くなったので最近はきちんと読書〜

沢: 「WEB本の雑誌」見ましたよ。「『本の雑誌』がインターネットか」と思いましたが、こういう形で読者と交流できるのは結構いいことだよね。

―― 最近沢野さんの読書生活はいかがですか?

沢: そうだねえ。最近読書量は減ったかな。38歳までサラリーマンだったんだけど、その頃のほうが喫茶店で読んだり、電車の中で読んだりしてたなあ。イラストレーターで仕事やるようになっちゃってからは、なんかだらだらしちゃってねえ。本読む量は減りましたよ。

―― じゃあ、今はどこで本を読むんですか?

沢: 最近は人生も短くなってきちゃったので、きちんとして読むようにしてますよ。

―― きちんとですか?

沢: 前は寝転がって本を読んでたんだけど、ちゃんとね、朝の6時半くらいに起きて、「さぁ勉強するぞ」みたいな感じで。もう人生短いんできちんと読むんですよ。メモなんかとりながら読むんだから。そうだね、そんな感じで本を読むから学術書みたいな本を読むようになったね。この前は千利休とかお茶の歴史とかね、そういう本を読みましたよ。

―― それなら、勉強になりますねえ。

沢: メモとってる時は覚えたつもりになってるけど、たいてい全部忘れちゃうの。自己満足ですね。(笑)

最近はきちんと本よんでるよ

〜本は大切にしないのだ〜

―― 本はどうやって保存しておくのですか?

沢: だいたいね、山とか、建築とか、興味のある分野で棚がいっぱいになっちゃうんだけど、棚がいっぱいになったらすぐ処分しちゃうね。昔は後生大事に本を取って置いたんだけど、最近は処分するようになった。

―― 処分しちゃうんですか?

やっぱり趣味が多いと読書も楽しい

沢: 僕はねえ、あんまり本を大事にしてないの。カバーとか面倒だからすぐ捨てちゃうんだよ。古本屋に持ってくと安くなるけど、最近は文庫本とか持ってっても断られるから本棚がいっぱいになると捨てちゃうんだよね。

―― 買った本はみんな読んでます?

沢: うーん、ほとんどおいておくだけだな。大体3割くらいは読んでないんじゃないの?癪だけど、同じ本を2冊買っちゃうこともよくあるんだよ。(笑)

【立ち寄る本屋】

―― どこで本を買いますか?

沢: サラリーマンの頃は、早稲田の古本屋に通いましたよ。今はそうだねえ、地元なら町田の久美堂、あとは事務所に近い渋谷のブックファースト。

―― ブックファーストですか。

沢: あそこはね、建築の本が結構充実してるんですよ。あとは事務所のある代官山駅前のブックス代官山にも行く。

“ブックス代官山”
代官山という土地柄かファッションやデザインの本が充実

―― なるほど。ブックス代官山は場所柄かデザイン関係やビジュアル系の本が多いですからね。

沢: そうだね。とにかく僕の買う本は絵が入ってるのが多いね。絵本も結構持ってるよ。

―― 本屋さんにはいつ行くんですか?

沢: 特に決めてない。でも本屋に行くときは必ずサンダルばきで一人。本屋は一人で行くのに限る!

【最近買った本】 (2000年10月)

―― 最近はどんな本を買ったんですか?

沢: ここ2,3年はねえ、建築の本を凄く読んでるんですよ。結構勝手に読んでますよ。『GA』とかの専門誌も読んでますね。建築関係だけで、本棚一つあります。

―― 建築に興味を持たれた理由は?

沢: もともとね、絵を描く仕事だからそういうことは好きだったんですよ。家具とか。街を歩いていて一つ一つ家を見ていくと建物に主張があるんだよね。特に安藤忠雄さんが作った建築とかはなにか心に感じますね。

―― なるほど。

沢: 結局ね、僕は「生きることは住むことだ」と思うようになったんですよ。僕の周りでも友達がマンションを買ったり、僕も家を建てたりしましたけど、人間の一番の根本は「住」だよね。

―― 建築の一番の魅力は?

沢: 最近、ニューヨーク、スペイン、パリと旅行をしたんだけれど、今まで単なる観光地だと思ってたところも、建築に注目してみるとまた違った面が見えてくるんだよね。それに建築の凄いところは、そこに行かなきゃ見れないことだね。

 

旅に出ると気に入った建物をスケッチするのだ

『建築を語る』 安藤忠雄

今まで建築家の書いたものは難しくてよく分からなかったんだけれども、安藤忠雄さんのこの本はなかなか分かりやすかった。

『昭和住宅物語』 藤森照信

この本も日本の住宅がていねいに紹介されているよ。昭和の風景は好きですね。

生きることは住むことなのだ

【自慢の一冊】

沢: あんまり本を取っとかなくなったんで自慢の本っていったら絵本かな。絵本だけは捨てられないね。初版本とかも多いから値も張るんじゃないかな。絵本の蔵書は自慢できるな。

―― 仕事場にはどんな本を置いてるんですか?

沢: ここに置いてあって自慢できるのは、ラブルール、ホックニー、ホッパー、そしてピカソの画集かな?特にラブルールのものは、6〜7万円するお宝だね。こういう画集は時々出して眺めるねえ。
沢野さんの自慢の一冊、
「ラブルールの画集」

―― マチスもありますね。

沢: マチスはいいねえ。線がいい。女体の線とか死んでないもん。まねできないよ、これは。

マチスは線がちがうねえ

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