「盗人にも三分の理」というが、500頁にもわたるこの手のアメリカ的限りなき自己肯定精神にのけぞった。作中再三繰り返されるのは、「確かに悪いことはした。が、社会の名の下で私に対して悪事がなされたことも事実であり」やられたら、やり返す、もっと賢くやられる前にやり返すのは当然だという主張だ。むむ、これってイラクに侵略爆撃し「フセインが亡命しないのが悪い。大量破壊兵器を隠しているのが悪い」というブッシュにも通じるぞ。日本人なら「御免なさい」と言うべきシュチエーションでも「It
is not my fault 」とのたまうアメリカ人に前から違和感あったが、悪を犯しても、微塵の倫理的逡巡もなく悪を犯させた社会が悪いと怒鳴り返す本書に至って極まれりの感。刑務所の中でも人種対立や些細な面子のために殺るか殺られるかの流血暴動がある。「西部開拓時代と同じでいかに素早く武器をぬけるかが勝敗を決める」精神が生きている国なのだ。平和ボケ日本が失った闘争心、怖いもの知らずの打たれ強さには恐れいるが作家的成功に自得してるところに「自伝」の難しさ空しさを感じた。