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鯨岩
【光文社】
又吉栄喜
定価 1,785円(税込)
2003/2
ISBN-4334923887
大場 利子
評価:B
「午後二時すぎの砂糖黍畑の上に白い入道雲が幾重にも力瘤を作り、固まっている。」冒頭の一文。目に浮かぶ。沖縄へ物語へ身体ごと運ばれた。
黙認耕作地。軍用地主。呪術職能者の雨乞い。知らないこともたくさん出てくる。そうであっても、沖縄に実際居るような感覚はなくならない。装幀も装画も帯もすべてがそれを後押ししているようだ。主人公に大きく関わってくる女性の話し方、ペース、内容が、全体と妙にちくはぐで、楽しい。
●この本のつまずき→「黒いティーシャツからつんと盛り上がった乳房」。どうして「つん」なのか。いつもこの表現に会うと、不思議に思う。
小田嶋 永
評価:B
沖縄の話である。米軍用地、黙認耕作地(というのがあるのを初めて知りました)をめぐって生きる人たちの物語だが、濃密でけだるい空気のなかに浮き立つ幻想のようにも感じてしまったのは、登場人物の不思議なキャラクターのせいだろう。情景描写に粗さを感じるが、会話の妙がある。主人公・赤嶺邦博は軍用地主の孫、特に何をするでもない、したいこともないまま暮らしている。そこに、忽然と現れた魅惑的な女性・佐竹美佐子。2人のあやうい関係もさることながら、毎年莫大な土地使用料を支給されながらも、高級外車ではなくいまだ馬車に乗り自分の生活を守るおじい・亀市、軍用地料の確保のために米軍関係者の接待に奔走する農協長らの生きざまは、滑稽でもあり、あわれでもあり、切なくも感じる。
新冨 麻衣子
評価:A
沖縄県Y村でおじいと二人で暮らす邦博のところへある日、本土からやってきたという美佐子が転がり込んでくる。軍用基地地主であるおじいの金につきまとう人々、妬む人々、変わらない鯨岩、金網の向こうに広がるだだっぴろい野原。
主人公の邦博の視線は、突然の珍入者にも、見なれた風景にも、まるで傍観者であるかのようにたんたんと捉える。自分からアクションを起こすときでさえ、視点が少しずれて、そんな自分自身ですら客観的に見ている感じがする。また、予定調和的ではないだけに現実的で、登場人物たちが自由に動いている。上手くて、でも最近はこんな視点で書く人は少ない。川端康成っぽいなあ、と何となく思った。
鈴木 恵美子
評価:B
「南の島でとろけたバターのようにだらだら無為に過ごしたいなー。」というのが夢なのに、仕事は増え、休みと給料は減るばかりの私達から見れば、働かなくても基地や黙認耕作地の軍用地代が入ってきて、お金の使い道に困るという邦博の生活は羨ましいを通り越して、ろくでもない。が、「軍用地料のせいで身を持ちくずした」ろくでもなさに自覚的で、「わしは金に使われている。金はない方がいい。」とベンツを買わされても馬車に乗っているおじい、かっこいい。軍用地の「陸に上がったまま固まってしまった黒い鯨に似ている」大きな鯨岩が象徴的だ。その下には邦博の少年時代から秘密の場所、鍾乳洞が広がっている。ハワイに出稼ぎに行った祖先が苦労して働いて買った土地、日本軍が命がけの抵抗をした激戦地、60年近くも昔に埋めた美女の骨を捜して不発弾を掘り当てたり、工事をしようとした米兵が変死したり、狂ったり、事業欲にとりつかれた女がハブパークを作ろうとして空騒ぎする場所。無為自然の理想郷を下に隠し、陸の巨鯨が人為の歴史という愚かなる人の営みを見下ろして悠然と時は流れる。
松本 かおり
評価:B
沖縄県Y村の軍用地主・亀市は、軍用地料の不労所得がなんと年に3千万。亀市は国と米軍への怒りをくすぶらせつつ野菜を作って暇をつぶし、孫の邦博は定職もないのにベンツを乗り回して賭け事三昧。亀市の金目当てにスリ寄るハイエナこれまた多数。そこに訳アリ風情の自称画家くずれ・美佐子が登場、怠惰に緩みきった邦博の日常にだんだんと波紋を広げていく。
この美佐子という女、「沖縄の人は目の前がよく見えなくなっているから」なんて平然と言い放ったりして、けっこう不愉快な女なのである。自己満足的思いつきには唖然。ハブ?芸術?この女、実はヤバイんじゃないの?邦博、騙されんじゃねーぞ。いつの間にやら見張り気分も盛り上がり、先行き不透明なミステリー風味も加わって退屈しない。
沖縄のように複雑な過去を持つ土地には、ある程度住んで初めて見えるものごとがきっと多いに違いない。軍用地主の生活もそうだろう。しかし、本土の人間が沖縄を理解し溶け込むことの難しさも、本作品は随所で教えている。
山内 克也
評価:B
「沖縄」とはつくづく難しい土地柄である。太平洋戦争で唯一、日本国内の地上戦があり、終戦後はアジアを睨むアメリカの重要な軍事基地の島となった。その歴史的背景から沖縄を、「平和を希求する島」として本土の「大和人」はシンボル的にとらえようとする。だが、かの地に住む人々にとって、「平和」のために生きようとするには、ずいぶん窮屈な思いをしているのではないだろうか。
この小説の柱となる「軍用地主」は、アメリカのカネで生活を送るゆえに、沖縄では「窮屈」に生きる存在かもしれない。主人公の祖父はアメリカによる軍用地料の収入で財産的にゆとりがあり、交際のある飲み屋のホステスに「妊娠した」だのと突っ込まれると財布の紐を緩めようとする。こうした濡れ手に粟の軍用地主に対する周囲とのゆがんだ人間関係に、祖父は「金に使われている。金なんかないほうがいい」と吐露する。
風光明媚な南の国、独特な風習に彩られた沖縄。その華やかさの裏に根付く「軍用地主」という社会の影を、著者はユーモラスに描くことで、「沖縄の現実」を「大和人」に分からせようとしている。
山崎 雅人
評価:D
舞台は、けだるい時間が流れる夏の沖縄。軍用地による不労所得にどっぷりと浸かり、
勤労意欲も生活意欲も失った邦博。米軍接収の黙認耕作地で、おざなりに農作物を栽培するおじい。働かずして大金持ちのふたりの前に、離婚して東京からやってきたという、画家崩れの若い女がやってきた。
軍用地主。金にまとわりつく女たち。米軍接待に忙しい農協長。といった沖縄の抱える問題を提示したかと思えば、邦博たちの奇妙な行動を、まるで平凡な日常のように、まじめに淡々と語る。良くも悪くも基地に依存して暮らすひとたちの、奇妙でおかしな生態を、コミカルにとぼけた調子で描いている。
著者の土地への愛、批判や嘆きは聞こえてくるが、言いっぱなしの感がある。内地からきた女もパンチが足りない気がした。単調ではないが、変化の起伏は少なく、盛りあがりに欠けるのが残念だ。沖縄の風俗に軽くふれてみたいひとにはおすすめです。