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永遠の出口
【集英社】
森絵都
定価 1,470円(税込)
2003/3
ISBN-4087742784
大場 利子
評価:C
「私は、〈永遠〉という響きにめっぽう弱い子供だった。」で、この物語は始まる。この「私」とは、友達にはなれそうもない。
「入学式から約三ヶ月、席が近いというだけで同じグループになった彼女たちがみな善人であることに安堵しながらも、私は時折なんともいえない居心地の悪さに襲われた。」恥ずかしくてたまらない。いたたまれない。もし、誰彼もが、この「私」と、この思いを共有出来るのだとしたら、自分はどうしたらいいのだろう。なんて言ってみても、友達になれなくても、そういう人がいるって事を認めて受け入れなくてはいけないと、この「私」は思うかな、心の中で。
●この本のつまずき→「装丁 池田進吾(67)」この数字、年令か?
小田嶋 永
評価:B
これまでの読書傾向からいえば、本作品を読む確率は限りなく低かったと思う。森絵都の“ジャンル”である児童文学に対しても、かつて(かなり昔だが)児童であった頃にも取り付くことはなかったし。本作品は、もちろん小説です。大人への入口、かもしれない「永遠」の出口。「永遠に〜できない」という言われ方に、「取り返しのつかないロスをしてしまったような焦燥と闘」っていた小学4年生から高校卒業までを、お誕生会や給食やアイドルのブロマイド、アルバイト、恋、卒業などのエピソードをおりまぜて、その時々の「私」の思いや感じ方をつづっていく。一つ一つの話は、どこにでもあるような平凡な話。その平凡な日常の出来事に見出される感性や、時代の色が生き生きと描かれるのである。これは想像でしかないが、「私」の現在と同世代の女性ならば、単なる共感を超えた感動もあるのではないか。ぼくの娘も小学4年生になった今、この作品に出会ったことに運命的なものを感じる。お調子者の娘は、何を感じ、一人で何と闘っているのだろう。そして「大人」になったとき、大人への入口までの道のりを振り返ってみるときがくるのだろう。
新冨 麻衣子
評価:AA
十代の頃って人間関係が難しい。人生を上手くいかせる潤滑油のようなものを手に入れてないからだろう。人を思いやることもできないのに、傷つける言葉は知っていて、小さな諍いひとつで友情という言葉が意味をなくす。大人から見れば無邪気そうな姿も、心の中では綱渡りの疲れる世代なのだ。わたしはそんなことをぼんやり思い出していた。
これは一人の女の子の小学生から高校生までの成長の物語。ここにはこの時代に経験するさまざまな<はじめて>のエピソードがたくさん詰まっている。親や教師への反発、仲間はずれ、友達同士だけでの遠出、万引き、友達との別れ、アルバイト、デート・・・・いろんな初体験にぶつかりながら、少しずつ成長していく姿に、きっと誰でも昔の自分と重ね合わせて共感できる部分がある。青春小説好きな人だったらなおさら、もっと好きになれる。そのくらい、いい小説だ。
鈴木 恵美子
評価:C
第二章「黒い魔法とコッペパン」担任のオバサン教師を魔女の如くに忌み恐れた小学五年生たちが、魔女の魔法に対抗するべく秘密集会を開いて結束し対抗、なんて、この手の「無辜の正義感」コワイ。罪のない子供が誰かを名指して「魔女だ」と叫ぶと狂気のように魔女狩りが始まる映画「クルーシブル」の世界。今学校でおこってる学級崩壊現象の多くはこれ。先生が間違ってる、私たちは楽しくやりたいだけなのにと衆を頼んでやすやすと教師や学校を悪者に仕立て上げる。魔女と名指され排斥される側の立場を考える想像力はなく、嫌いな存在はただ悪と決めつけ自分たちは正義で無辜。自分の今の気持ちだけに忠実なのを純粋と誇ってるような若い子たちには受けるんだろうなあ。ある日ブツンと今までの「本道を逸れ脇目もふらずに枝道を突っ走」るバカやってても、中学生までなら許される試行錯誤ってな感じで何しろ、自己中なんだよね。高校生になっての第八章「恋」なんかも、一人でのぼせて一人やきもきドキドキ傷ついて、相手のことみてないちゅうの。どんな過去でも「想い出」にしてしまうのって何か、違ってるって感じ。
松本 かおり
評価:A
岸本紀子なる「私」が語る、小学校後半、中学校、高校時代の9年間のできごと。生きているだけでなんだかんだ刺激タップリ、楽しそうだ。自己肯定感あふれる余裕の思い出語りは、幸せいっぱい学校生活の証。非常にまぶしく清々しく、羨ましくもある物語であった。
紀子嬢の日常エピソードと心境変化を、小学校時代からよくもまぁこれだけ細かくリアルに、ユーモラスに描けるもんだ、と感心しきり。著者自身の記憶が鮮明なのか、児童文学作家ならではの少年少女観察眼の鋭さゆえか。仲良し6人組の誕生日会の波乱、オバン先生の「寵愛グループ」、中三の家族旅行で、改札の手前で父から切符を渡されるたびに感じた屈辱など、誰でもどこかひとつくらいは「あるある、それわかるっ」と頷くだろう。
センチにならず茶化しもせず、照れもなければ美化もない。地に足の着いた語り口が効いて、紀子嬢の青臭さもクサくないのが魅力。
山内 克也
評価:C
プロフィールによると作者の森絵都は、1968年生まれで同い年だ。小学生時代から高校卒業まで、主人公の出来事を断片的につづるこの「グラフィティ」小説は、どこかで見た情景を思い起こさせる。主人公の女の子が、「たのきん」トリオのプロマイドを買い求めたり、中学校の厳しい校則に反発し万引きしたりして荒れるなど、リアルタイムで見聞きしたようなシーンばかり。たしか、佐賀の田舎でも、同級生の女の子は「トシちゃん」だの「マッチ」だのわめいていたし、その当時全国的に中学校が荒れ、通った学校も毎日のようにガラスが割られていた。ストーリーを追ううちに懐かしさがこみ上げ、かつほろ苦い思い出が、次々と掘り返される。
ただ、後半になると、家族再生だの、恋愛だの主人公の物語性が強まり、時代の匂いが薄まったのは残念。最後まで、当時の雰囲気を嗅ぎ取り、共感したかったのだが。
山崎 雅人
評価:A
永遠という言葉に弱かった紀子は、永遠を克服し、大人への階段を登り始める。すべてを吸収したいと思っていた多感な少女の、十代の軌跡を描いた、成長の物語である。
誕生会、初恋、アルバイト。中途半端にグレて親を悩ませ、突然ばかばかしくなって更正する。身に覚えのある話ばかりである。何だか素晴らしく愉快で、意味もなく不機嫌だったあの頃の記憶が、ありありと甦ってくる。
描かれるすべての出来事は、特別なことではない。しかし、それはおとなの視点での話。成長過程の少年少女にとっては、初体験の最重要事項で、特別な意味をもつ事件なのだ。森絵都は、その視点をはずさない。
おとなとの感覚のズレを意識し、だれもが無意識に肌で感じていたはずの、時代の匂いや空気を、色彩豊かに表現した物語は、だから懐かしく、共感を呼ぶのであろう。
美化された青春の幻影を、りきみのない、ゆったりとした筆致で描いた傑作である。