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重力ピエロ
【新潮社】
伊坂幸太郎
定価 1,575円(税込)
2003/4
ISBN-4104596019
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
大場 利子
評価:B
冒頭一行目。すごい。すごい。もう引き込まれている。はやい。意気込みもなく期待もなく、本を開いて目に飛び込んだ一行目。もったいないので、気合い十分になる日まで本を寝かせる。
やたら博識な兄弟の物語なのが気に入らないが、一行目に受けた衝撃は裏切られない。涙涙の感動物語ではない所が好きだ。
●この本のつまずき→帯の担当編集者の言葉「小説、まだまだいけるじゃん!」の大きな赤い字。目にした時、いやな気持ちになったのでその続きは読まないでいた。読了後、本文をより際立たせることが書いてあるのかもしれないからと読んでみたら、やはり不愉快になった。
小田嶋 永
評価:B
レイプによって生まれた異父兄弟と、がんで余命の短い父という家族の物語。彼らが、連続放火事件を追うミステリである。物語としては楽しめたのだが、惹句や著者紹介の文句が持ち上げすぎなところもあって、細部に少々ひっかかってしまった。テーマおよびミステリの謎ときの鍵として、「遺伝子」をはじめとした多くのキーワードというか関連事項を用意しているのだが、それらの必然性が感じられない。都合を合わせるための設定という印象も少なからずある。たとえば、主人公が遺伝子関連の会社勤務ということ。彼らの母も何で死んでしまったかは明らかにされず、それは男同士の家族を描くために舞台から引かされているように思えるのである。ガンジーやジョルジュ・バタイユの引用、ネアンデルタール人とクロマニヨン人の芸術論など、やたら理屈っぽい教養的な会話よりも、登場人物の造型や行動にフィクションといえどももっと下世話なリアリティがあったほうがミステリ度も増したのではないかと思う。さもなくば、ストレートに(シリアスに)テーマと勝負してもよかったのではないか。あと、ミステリの技術として、主人公の「あとから思えば」という思わせぶりな表現が多すぎるのも、大場さん的にいえば「この本のつまづき」であった。
鈴木 恵美子
評価:B
知的でしゃれてる、というべきか、まわりくどい衒学趣味が鼻につくというべきか、しばし迷った。が、ここは「春」の魅力と、その兄「泉水」の爽やかさ、「母」の美しさと、「父」の「賞賛に値する」人柄に免じて貶さずにおこう。
サーカスの空中ブランコを見て落下の恐怖に脅える兄弟を、「あんなに楽しそうなんだから落ちるわけないわ」「ふわりふわりと飛ぶピエロに重力なんて関係ないんだから」と安心させる母。だからかしら?春はいとも易々と飛び降りる。
兄はそれを見守る。人生にそういう風に見守ってくれる人がいるっていうのは、なかなかあることではない。生の暗号を読みとり、理解し、行動を予測し、その遂行を見守る、なんてその行動の正当性を抜きにしても知的にスリリングだ。
実際にはこんなピュアなつながりのある人間関係、しかも家族関係なんて、あり得ないと思いつつ、こんな風にあったらいいなと思わせるところが新鮮だ。
松本 かおり
評価:B
なによりもまず、著者はおそらく勉強家、というか、好奇心の幅がとても広く、いろいろなことを知っている人なのだろうなぁ、と感心してしまう。謎解きのキーワードこそ「放火」「グラフィティアート」「遺伝子」の3つだが、他にもジャズ、映画、NBA、絵画、文学、動物に花言葉など、豊富な知識が絶妙なタイミングでぽろっ、ぽろっと出てくるのだ。
また、登場人物たちの台詞が鋭く、気が利いている。「地味で、退屈な事柄にこそ、神様は棲んでるんだ」「その場かぎりの安心感が人を救うこともあるわ」「気軽に『さようなら』が言えるのは、別れのつらさを知らない者の優越的権利だと思う」、まだまだいくらでもある。きっと誰でも、お気に入りのフレーズをいくつも見つけることができるだろう。
終盤では、春クンの、そこまでやるかっ?!的純粋さに子供っぽさを感じてやや拍子抜け。結末に急がず、表現を味わいつつじっくり読みたい。巧妙に張られた伏線も、随所で「あーっ、そうかっ」と唸らせてくれる。
山内 克也
評価:C
仙台を舞台に次々と起こる放火事件と、現場近くに描かれたアートグラフィックな落書き。父親違いの兄弟が、その2つの関連性を追う。さらに落書きには遺伝子情報の暗号的な要素があり、謎は深まるばかり…。こうもキーワードが多いと、カンのいい読者なら犯人探しの絞り込みが早い段階で終わってしまうのではないだろうか。
確かにミステリとして読むならば、この小説に面白さはあまり感じられない。ただ、放火事件から派生し、弟の出自の真相を突き止めることになった2人が、それぞれの手法で目的を果たそうとする行動に、爽やかさを覚え「青春小説」として読み解ける。一方で半分の血のつながりしかないが、逆に2人の連帯感と信頼関係を強めさせる「家族小説」にも受け取れる。さまざまな分野がない交ぜになり雑多な味を持つ不思議な小説だった。
山崎 雅人
評価:B
レイプ犯の子ども。三浦綾子ばりの、地味で深い題材である。罪と赦し。苦渋に満ちた人生。犯罪者と同じ血が流れるということ。原罪を問う重い物語を、これほど現代的に、ポップに扱った小説があったであろうか。
連続放火事件を追う弟と、引きずり込まれ、のめり込んでいく兄と父。放火と落書のルールの謎解きは、家族をどこへ導くのか。
感涙の名作を目指すのであれば、およそ相応しいとは思えないプロットである。しかし、これがばっちりはまっている。さほど新しくない、ありきたりのミステリーの中に、心の闇が巧みにするどく表現されているのだ。
その描写は、躍動感あふれ、圧倒的な力で押し寄せてくる。気のきいたテンポの良い会話が、ストレートに胸をうつ。事件の謎の単純さも、全体の雰囲気を壊すほどのものではない。むしろ、そうでなければならないと思わせるものがある。重厚と軽薄の間を、あざやかにかけ抜けていく、新手の現代小説だ。