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├2001年7月
├2001年6月
└2001年5月
深夜のベルボーイ
【扶桑社】
ジム・トンプスン
定価 1,500円(税込)
2003/3
ISBN-4594039316
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
大場 利子
評価:B
「ノワールの鬼才 ジム・トンプスン!」と帯に。ノワールとは何か。これを読んで理解した。物語にのめり込めばのめり込むほど、ノワールをより深く理解できる構造だ。こんな痛い目に合うくらいなら、ノワールなんて理解出来なくてよかったのに。
いらつきが、物語を支配する。主人公の青年はいらつきに捕まったまま、ずっと。大学、夢、父さん、ベルボーイの仕事、弁護士など、いらつきの原因にしかならない。そんな主人公を見ながら、つらい気持ちになりつつも、悲劇を待ち望んでいた。
●この本のつまずき→キングの序文の中から。「この男は限度というものをまったくわきまえていない。」と著者について。そのまま、キングに返したい。
小田嶋 永
評価:B
ブームと呼べるのか、トンプソン作品の翻訳が最近少なくない。1954年に出版された本作品、原題はA Swell-Looking Babe、出版当時には『イカす女』という訳がつけられたそうだ。(ちなみに、1954年というのは山田風太郎は『妖異金瓶梅』を著している。)主人公ダスティは、南部の町でホテルの夜勤ベルボーイをしている。母親は亡く、父親も介護が必要な暮らしで、ある事件の裁判の弁護費用を出すために、ダスティは大学を中退して働いている。主人公が、罠とも思える美女の誘惑に絡めとられ、後戻りのできない犯罪へ加担していく過程を描く。物語は後半、意外な展開と真相が明らかになり、一気に読ませる。「ノワール」の定義がよくわからないこともあって、それほど「暗さ」は感じなかったが、主人公の父親への態度・感情の描き方はかなりリアリティがあり、人間の内面の(誰もがもつ)嫌な面を直截に表現しているのは、トンプソンの才能か。
新冨 麻衣子
評価:AA
いきなりの冒頭。スティーブン・キングによる賛辞が5ページにもわたっているのは、この本をなめんなよ、という意気込みが十分に伝わってきますね。そして作品を読めば、キングの前説が決してハリボテではないことがわかる。これは、ただのサスペンスではない。
いつしか夢をあきらめ、夜勤のベルボーイとして働くダスティは、真面目に働くものの、半痴呆の父親が金を使い込んでしまうことが悩みの種だ。ある夜ホテルに現れた絶世の美女に心を奪われ、ひいきにしてもらっている常連客タグからは強盗の計画を持ちかけられる。そこから彼のスリリングな数日が始まるのだが、むしろ注目したいのはラストのダスティと彼の父親の間における心理的なサスペンスだ。さまざまな誤解と悪意のない嘘、陰謀と善意による沈黙が若いダスティの運命を狂わせていく.。ものすごく奥深く、読者の心にがつんとくる作品だ。
鈴木 恵美子
評価:A
水は低きに流れ、人は易きにつく。金と色に流され易い人間を描くのは犯罪小説の常道ながら、上手いものだ。ハンサムな深夜勤務のベルボーイ、要介護老人の父を抱えて大学を中退し、金になるから敢えてこの仕事に甘んじている、そのシュチエーションからしてやばいことを呼び込みそうです。「貧すれば鈍する」で、知的なはずの人でもバカになる。境界線上に追いやられれば大概の人間はあっち側にためらいながらもあっという間に引きずられていく。でもなあ、実際自分の手を汚して殺すなんてできないけど、「死んでくれたらいいのに」位は思ってしまうのって、これも、罪なんですよね?キリスト様は「心で姦淫したものは姦淫の罪を犯した者だ」とおっしゃっていらっしゃるものね。でもその分でいけば、私たちの殆どは罪人じゃない?だから、この手の犯罪小説やけにリアル。小心翼々と日を送り、ビッグマネーや、色欲の誘惑からは無縁な凡人でも、「あの人死んでくれればいいのに」位はつい思ってしまうものだものね。
松本 かおり
評価:B
あのスティーブン・キング氏による序文にあおられて、本編が霞み気味。損な感じだ。キング氏は著者のトンプソン氏を大絶賛。「彼はビッグに書いた」「彼はすっごくおもしろい話を書いた」「この男は限度というものをまったくわきまえていない」。「トンプソンの作品のすべてが偉大なわけではない」とフォローもあるが、あまりに期待しすぎると読後の落差が身にしみるかも。
人生の貧乏クジを引いてしまったベルボーイのダスティ。ほんのささいなことを発端に、人生の歯車が徐々に、しかし大きくズレていくさまが不気味である。私もダスティ同様ひとりっ子だけに、老親の世話の重さに辟易する日々も他人事とは思えない。親には非常に申し訳ないが、将来「あいつを始末できれば……」と思わない保証はない。著者に見透かされたようでドキリとする。
要領よくヘラヘラ笑って生きている人間はごまんといるのに、運がない人間はとことん運がないまま社会から葬り去られるだけ。救いのない話ではあるが、その徹底した救いのなさ加減が現実的で、かえって爽快だ。
山内 克也
評価:AA
トンプスンのミステリは何冊か読んだけど、とにかく主人公の内面に潜む邪悪な考えをそろりそろりと表出させながら話しを進めていく。本書でも大学中退の主人公が、無職の父親に小遣いを与えても無駄遣いしかしないと思ったり、ホテルに宿泊した魅惑的な女性が悪党の一味だと思い込んだり…。主人公の疑惑の念をひたすら前面に出し、そこに巣食う卑屈さを引きずりながら、次々に起きる事件に巻き込まれていく。読者もろとも、ノワール小説の「ブラックホール」へと吸い込まれるような展開だ。
いわば、救いのない作品である。だが、風景描写など余分な文章を省き、短いセンテンスをつなぎ合わせたドライな筆致がサスペンス性を強め、物語にスピード感を持たせ、読了後に嫌みは残らない。構成も巧緻。「ドア」のノックでストーリーが動き、「ドア」の閉まる音で結末を迎えるトンプスンの粋なストーリー運びにため息が出る。
山崎 雅人
評価:B
失職中の父を抱え、目指していた医者にもなれそうにない。人生を半分諦めかけているハンサムガイ、ダスティは、夜勤のベルボーイとして働いていた。そんな彼の前に現れた女の中の女、絶世の美女。彼女の登場により、彼は人生の転機を迎えることとなる。
薄幸な人間を寄せ集めた社会は、真実を語っている者が誰なのかすらわからない。不幸が不幸を呼び、悲劇は悲劇でしかない。どこまでも救いの手が差しのべられられる様子はなく、やっと見えてきた希望の光も、さらなる試練の序章でしかない。きわめて迷宮的で辛辣な物語世界が展開する。
こんな小説のどこが楽しいのかと聞かれたら、答えはひとつ。楽しいところなどない。それでも何かに憑りつかれたかのように、最後まで読みふけってしまい、運命を呪う瞬間をみせつけられてしまった。
さわやかさのかけらもない青春ミステリーは、癖になること請け合いのおもしろさだ。