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熱帯魚
【文春文庫】
吉田修一
定価 470円(税込)
2003/6
ISBN-4167665026
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
延命 ゆり子
評価:C
吉田修一の本を読んだ後はいつも、「えーとだから何」と思ってしまうのだが、それは私だけでしょうか。都会で暮らす情の薄い若者たち。行動に脈略がなく、その場の感情で行動する。コジャレた固有名詞が多いのが鼻に付く。そして伏線にはオチがなく、何事も解決しない。やるせない感情を持ったまま、周りの人たちに対する愛情も希薄なまま物語は終末を迎える。その閉塞感が時代の雰囲気を表していて、それが評価されているのかも知れないけど、私は小説を読んでここまでほっぽりだされたくはない。短編三作のうち表題作『熱帯魚』は大工が主人公で江戸っ子気質、今までとは少し趣が違うかなと期待していたら読後感は同じようなやるせなさだった。むむむむ。
児玉 憲宗
評価:A
「熱帯魚」は恋愛小説である。爽やかさは微塵も感じられない。睡眠を許さない不快指数が充満した熱帯夜の中で、湧き出た汗により腋の下や膝の裏やからだのあちこちを襲うぬるぬる感や、暴風雨によってずぶ濡れにされたシャツや靴下から漂う泥の匂いが、この作品のあちこちに散乱している。類を見ないほどに湿度の高い恋愛小説なのである。
主人公である大工の大輔は、単純でわかりやすい性格だ。同棲相手の真実はおそらく浮気性。義弟、光男はおそらく引きこもり。隣に住む時先生はおそらく同性愛者。でも彼に比べれば普通の人だ。彼より普通な分だけ、単純でもなく、わかりやすくもない。この事実が少しずつ歯車のズレを生じさせる。しかし、結局、救いは、大輔の単純さとわかりやすさが周りにもたらす安心感だったというお話である。
他の収録作品である「グリーンピース」「突風」においても、恋愛や人間関係から生まれる微妙な「歯車のズレ」が描かれている。どうやら、お互いの弱さを補いあったり、許し合ったりできる関係が居心地いいみたいだ。納得。
鈴木 崇子
評価:C
帯にある“芥川賞作家の最高傑作”や“前代未聞のラブロマンス”の文句に、まずひっかかってしまった。期待しつつ読んでみれば、結果は??? 他の作品を読んでいないので最高傑作かどうかはわからないが、もしそうなら他のものは読む気がしなくなってしまう。(でもこれは帯に対する批評か…)
3作品の登場人物たちの、日常から逸脱したちょっとクレイジーな行動。それらを描くことで、今どきのひとの揺れ動く心の在りようを表現しているのだろう。ごまかしながら急に正直になってみたり、向き合うのかと思わせて逃げてみたり。ねっとり甘えてたり冷たく乾いていたり、とらえどころのない、気まぐれな、現実感のなさ。読んでる自分も出口の見えない停滞感に襲われてしまいそう。そういう意味では作者はうまいのかも知れない。でも個人的にはあまり好きになれない作品だった。
高橋 美里
評価:A-
「今年の夏は、おまえらを旅行につれてってやる。」
大工の大輔は同棲中の真実と、小麦、義理の弟・光男(ひきこもり気味)の前でそう言った。行き先はプーケット。大輔たちの住むマンションを格安の家賃で貸してくれる「先生」も誘った。家族ではない、けれども、真実とは結婚をめざしている。不思議な共同生活は、いつまでも上手くいくことはなく、徐々に溝を作っていった。
別にこれといって特別なことを描いたものではなく、ただ、ごくごくフツウの日常を描いた作品ばかり。誰にとって、何が「フツウ」なのか、簡単な解釈は存在しないとおもうのですけど、読んでいて、「日常」を上手く書いてるな、としみじみ。フツウなことを書くのはきっと難しいと思うので……。
なんだか空気を掴むような表現しかでてこないのですが……。やはり、フツウなことについて書くのは難しい。
中原 紀生
評価:AA
いつも思うことだが、青春小説はキレが身上で、結末の鮮やかさと潔さにすべてがかかっている。というのも、青年はたいがい決断力のない観念論者で、生命と社会、性欲と家族の意味や価値や目的をめぐる退屈な思想の持ち主で、うじうじと着地点もなく続く日常をきっぱりと断ち切る構想力も行動力もないからだ。──表題作の主人公・大輔は高校を出るとすぐ上京し、棟梁の伯父に弟子入りする。「真っ青な空の下。白木の骨組み。赤い作業ズボンに藤色のシャツを着て」、熱帯魚みたいに「梁に立つ大工の姿がそこにあった」。スナックの雇われママだった肉感的な真美とその娘の小麦と一日中熱帯魚を見ている義理の弟の光男と一緒に暮らしていて、早く真美を籍に入れたいと思っている。鈍感なくせに他人との関係を仕切り、未熟なくせに人生の結構をつけたがる。おのれの「淋しさ」に気づかず、他人を追い込んでしまう(「言っときますけどね、人って大ちゃんが考えているほど単純じゃないのよ」)。人影のない夜のプールに色とりどりのライターをまきちらすと、水に沈んだライターがまるで熱帯魚みたいに泳ぎ回る(大輔の母親は、大輔や義理の息子の光男に「いいこと」があると一コずつ百円ライターを集めた)。この結末が、行き場のない大輔の無定型のエネルギーを一気に昇華させる。青春の嘘と裏切りをテーマにした「グリーンピース」と青年の罪なき冷酷を描く「突風」の二編も秀逸。
渡邊 智志
評価:A
鬱々とした気分で読むと、いっそう「鬱」な気分になることうけあいです。それがいいことなのか悪いことなのかは判らないけど、小説を読んでから自分を反省したり、下には下があるからまだ大丈夫、などと都合よく自分を励ましてみたりするのも、たまにはいいかもしれません。小気味良いテンポで話が進み、心理描写の薄っぺらさ(たぶん意図的に省かれているのだと思う)のお陰で、ぞっとするような突発的な感情の爆発が伝わってきます。ヤな奴、ダメな奴、とレッテルを貼って目を背けることはたやすいのだけれど、せっかく小説の世界に擬似空間を演出してくれたのだから、とことん堕ちて嫌な気分になるのもいいのかもしれません。ばっさりと切り捨てられるように終わるので、救われない気分も倍加してしまいます。評価は「B」なんだけれど、もう一度ぱらぱらとめくって読み返してみるとかなり面白かったんだな、と思えてきました。乗り物の中で読むと酔います。