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火花 北条民雄の生涯
【角川文庫】
高山文彦
定価 900円(税込)
2003/6
ISBN-4043708017
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
池田 智恵
評価:A
らい病患者という特殊な条件下で、作家として生き、死んでいった青年、北条民雄に関するノンフィクション。しかし、この本の主題は、国家や権力に人生を破壊された人間たちの悲惨ではなく、肉体的にも精神的にもぎりぎりの状態で、それでも作家として戦い続けた一人の青年の生涯です。人間的に未熟で、子供っぽいところもある北条が、友人や川端康成に支えられながら小説を書き上げていく。淡々と綴られるその様子が、逆に「いのちの初夜」という彼の作品の熱さを際だたせています。川端康成らに認められ、小説が批評家の賞讃の対象となったあるときに、北条が友人に言った言葉が印象的でした。「小説を書くよりほかに生き方がない。それでいて小説を書くということを軽蔑しなければならない」作家にとっては、書くことが生きることである、という話はよく聞きますがそれがこんなに切実に響くことはなかなか無いのではないでしょうか。北条の小説が読みたくなりました。
児玉 憲宗
評価:AA
ハンセン病と闘いながら文学の道をこころざした北条民雄の生涯を綴ったこの作品には、二つの大きな驚きがあった。
ひとつは、らい病とも呼ばれたハンセン病を病んだ者にしかわからない壮絶な絶望感との闘いである。痛みやからだの変形のみならず、誤った憶測により、差別と偏見の眼差しにさらされ、発病が発覚した場合、家族とも絶縁し、社会からも抹殺される。驚くことに北条民雄は生きるということにこれほどまでにエネルギーを要する境遇にありながら文学の創造に突き進んだのだ。
もうひとつの驚きは、川端康成の献身的な援助の数々である。すべての作品に眼を通し、作品に対する賞賛やアドバイスを丁寧に繰り返し、発表に値する作品は、川端の手によって世に出された。入院費に困る北条に自らの財布から原稿料を払い、原稿用紙も川端負担で自由に使用させた。いくら川端康成が新人発掘の名人と呼ばれていたとはいえ、当時、三十代で『雪国』などを精力的に手がけていた時期である。北条がどうして自分の作品を川端に委ねたかは、この評伝においても明らかにされていないが、川端康成の情熱なくして、作家、北条民雄は誕生しなかったことだけは間違いない。
北条民雄はこうして惜しくも二十三歳でこの世を去ったにもかかわらず、人の心を震わせる傑作を残した。代表作『いのちの初夜』はさっそく読んでみたい。
鈴木 崇子
評価:A
ノンフィクションの面白さは、著者の目を通して作品の世界を知ること、それに対する著者の姿勢や思い入れを感じることの2重構造にあると思う。両者のバランス次第で作品の印象が随分違ってくるような気がする。そういう意味で重いテーマに耐えうるだけの著者の思いの深さを感じた。
絶望的な状況に置かれた時、あきらめて受け入れるのか、抵抗するのか。描かれている北条民雄には人を寄せつけない冷たさや心の中に葛藤やいらだちがあって、正直なところ親しみを覚えない。だが癩病の苦しみから生まれた自らの文学が、癩文学の枠に閉じ込められることを頑なに拒否し、普遍的な文学を目指す執念には迫力を感じた。文庫本あとがきにあるよう同じ痛みを知る人にしかこの痛みはわからない、という患者の言葉が現実なのだろう。それに対してハンセン病になりたいと口走ったという著者にも作家としての執念を感じた。読みごたえは十分。
中原 紀生
評価:A
関川夏央は『座談会 明治・大正文学史』(岩波現代文庫)の解説で、座談会がはじまった1950年代後半にあっては、「文学というものが日本の知識青年と知識壮年にとって生きる上での手がかりとなっていた、つまり文学がまだある種の『実用品』であった」と書いている。その関川が谷口ジローと組んで世に問うた「『坊っちゃん』の時代」五部作が、国家と個人の深刻な乖離が兆す時代の文学のあり様を描いた作品であったのに対して、高山文彦の『火花』は、文学が「人生の指針」であった時代の後半、大正期教養主義以降の「商品」(娯楽や癒しのタネではなく、社会意識や感動をもたらす実用品)としての文学が兆す様を描き切っている(北条民雄の「いのちの初夜」が掲載された『文學界』昭和11年2月号は、創刊以来の売れ行きを示し、雑誌廃刊の危機を一時免れた)。それはまた、柳田邦男が解説「いのちと響き合う言葉」で書いているように、文学の言葉が密度の濃い「生」の実存を映し出す力を失っていなかった時代の物語である。著者は本書で「文学というもの」の近代日本における輝きの実質を余すところなく叙述すると同時に、その静かな挽歌を奏でている。
渡邊 智志
評価:A
丁寧であること。この1点をもって、この作品の説得力は大きく増します。北条民雄や『いのちの初夜』や癩病についてはほとんど何も知りませんが、この一冊でざっくりと網羅できるということが、初心者にとってはありがたいのです。言うまでもなく、読書や知識欲はここでストップしてしまうのではなくて、類書や参考書、そしてもちろん北条民雄の著作を、これをきっかけにどんどん読みたくなるでしょう。ここに書いてあることを丸呑みにせず、その他いろいろな文献を漁って、自分なりに理解を深めたくなるという点も、これが優れたノンフィクションである証拠だと思います。筆者の主観や感情や思い入れの強さに共感し同調する一方で、冷ややかに覚めた目で内容を反芻して、洗脳されないように身構えることで、内容は深く心に残り、理解をより深めていこうという意識付けがなされるのです。逆説的なのですが、100%でない完璧なノンフィクションだと思います。