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疾走
【角川書店】
重松清
定価 1,890円(税込)
2003/8
ISBN-4048734857
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
大場 利子
評価:C
目を離さず、読み続けたけれど、人に薦めるかと問われれば、薦めたくない。
ここまで暗く、酷く、著して、たとえこれが現実だとしても、いったい、何を読み手に伝えたかったのだろう。救いや癒しを求めてはいないが、この酷さは何を指し示すのだろう。「言葉とはなんだろう」と、主人公おまえは考える。読み終わっても、頭から離れない、この一文。
●この本のつまずき→ある人物がつむいでいくおまえの物語。「おまえはまだ小学校に入ったばかりだった」という風に。おまえという代名詞に、抵抗も何もないが、やわらかい声・言葉をひとつずつ噛みしめるような口調で話すと表現される、ある人物の語りには、合わない。
小田嶋 永
評価:B
なんとも読みづらかったのは、主人公・シュウジを、「おまえ」という2人称で語っていくスタイルだ。主人公の行動・思考に客観性をもたせたかったのか。それとも、主人公への感情移入を、みずから拒むことであったのか。あるいは、シュウジの人生を破滅へと導くレールを敷く者の語りであるのか。暗い物語である。途中で読むのをやめようかと何回も思った。最近の犯罪のニュースに感じるやるせない思いさえ超える。ということは、この物語こそが圧倒的なリアリティをもっているということではないか。「そのようにしか生きられなかった」少年の、「どこかへ向かうという目的も忘れ、ただひたすら速く、速く、速く、走った」9歳から15歳短い人生が、「おまえ」の物語として綴られていく。「おまえ」と呼ぶものは、「おまえ」にとっての神なのか。最後に救いはあるのだろうか。どんなに辛くても、これは最後の1行まで読み届けなければならない。
新冨 麻衣子
評価:AA
うーん、重松清、レベルアップ。なんて言ったらおこがましいだろうか。でも確かに、これまでの作品より大きなスケールの物語であることは間違いない。
これは貧しい村に生まれたシュウジという男の半世紀だ。精神のバランスを失った兄に、ギャンブルにはまった母に、走ることを奪われた少女に、未来のない土地開発に浮かされた故郷に、自分を裏切った仲間に、人を裏切る自分に、おのれの優しさ故、そのすべてに傷付き、ただひたすら進むシュウジの生はあまりに切ない。最初から最後まで〈おまえは〉と語りかける文章が、さらにこの物語を神々しくしている。読みごたえ抜群の一冊です。
鈴木 恵美子
評価:C
何かメッセージ臭があるというか、プロパガンダっぽいと言うか、「ろくでもない大人ばかりのこんな世の中、子供が生きるのがこんな困難な社会」を精一杯告発する誠意みたいなモノを押し付けられてるようで、ちょっと引いてしまう。神から与えられた全てを神に奪い去られたヨブの嘆きを何度も引用して、少年の運命と重ねる視点は、まるで神様?今日的な矛盾ぎっしり満載で、一見平凡な家庭が決定的に崩壊していく様が怖い。弱い父、愚かな母が、兄を増長させ、心病んだまま放置し、罪を犯させ、捨てた。前近代的な村八分にいたたまれず家を捨てた父、ギャンブルにのめり込む母、「沖」と「浜」の住民差別と対立のある地域社会、「ゆめみらい」の地域開発が利権まみれの絶望的荒廃を生む。行き場のない少年は駆りたてられる。でも実は少年に最後の一線を踏み外させるのは、悪い弱いバカな大人や子供ばかりじゃなくて、優しく理解を見せてるような人たちなんですね。たとえば、兄の犯罪によって家庭を失い、学校でいじめられ死ぬ気の少年をわざわざ死刑囚との面会に連れて行き、結果として死より深い虚無を味わわせる、サイテーの神父。そいつがまことしやかに語る文体がけったくそ悪い。
松本 かおり
評価:D
カバー画の印象そのままに重苦しい話。全身から不幸の臭いを漂わせる主人公の中学生・シュウジを筆頭に、タチの悪い級友、ちんぴらヤクザと情婦、家出少女など、いかにもワケありの登場人物たちが、いかにも彼ら相応の、地べたを這いずり回るようなドロドロ人生を、ただひたすら繰り広げる。
兄は心を病んで医療少年院送り、父親は蒸発、母親は行方不明。ひとり残ったシュウジはとにかく誰でもいいからつながりたがる。お手軽に「つながり」を求める無防備で弱っちい人間が、ショボイ関係にすがりつくさまには溜息が出た。ロクでもない人間と安っぽいつながりを持つくらいなら「ひとり」のほうがよほどマシ、だろうに。
また、悲惨な過去が濃厚に溶けた血を引く存在を、希望の象徴扱いするのも妙な感じ。このシュウジの生き様を、将来いったいどんな顔をして拝聴せよというのか。それは酷な気がするが。私だったらこの誕生秘話には絶望確実、自殺したくなりそう。
山崎 雅人
評価:C
少年の生活は一瞬にして崩壊した。兄は精神を病み、放火犯として逮捕されてしまう。家族は戸惑い、追いつめられていく。そして離散。転落と絶望の人生が始まった。切れ間なく押し寄せる苦難。抵抗、敗北、逃走。闇雲に突っ走り、果てしなく墜ち続ける。少年は孤独の淵に沈み、次第に生気を失っていく。
とことん暗い物語だ。かすかに見える救いの眼差しも、細く切れ切れで弱々しい。ひと筋の道すら見落としそうになる。これが重松清の作品かと目を疑ってしまう。狂気と恐怖の連続、壊れた性の描写、本書に他作の面影は見いだせない。野心作であり問題作である。
表紙も怖いが、著者がどん底の物語を書いたことのほうが怖い。少年犯罪の多発、意味無き殺人の横行といった時代の激しさに、飲み込まれてしまったのだろうか。そんな時代だからこそ、あたたかくやさしい手を持った物語が読みたい。地獄は他に任せればいい。重松清にしか書けない物語があるのだから。