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殺人豪速球
殺人豪速球
【二見文庫】
デイヴィッド・フェレル
定価 870円(税込)
2003/10
ISBN-4576031740

  中原 紀生
  評価:C
   1918年の優勝以来、ワールドシリーズでの勝利から見放されてきたボストン・レッドソックス。世に言うバンビーノ(ベーブ・ルース)の呪いだ。しかし、今年のレッドソックスは違った。時速110マイルを超える剛速球投手ロン・ケインを得て、ついにその呪縛から解放される時を迎えた。対するは、かの石井一久を擁するロサンジェルス・ドジャース。3勝3敗で迎えた最終戦。延長15回裏、2点差、2アウト、ランナー1、2塁の最終局面。殺人容疑から解放された監督は、ケインを代打に指名する。その時、ボストン警察は連続殺人事件の犯人逮捕に向かっていた。──この最高に盛り上がるラストシーンで手に汗握れるかどうか。それがすべてで、私はだめだった。痛快野球小説と猟奇殺人ミステリーが、まるで異物のように最後まで噛み合わなかった。

  渡邊 智志
  評価:A
   原題が「スクリューボール」なのになんとも「直球」な邦題で、地下鉄の中でカバーをつけずに読むのがちょっと恥ずかしかったです。今年は優勝した阪神の星野監督が風貌からはうかがい知れないほどの心労を語って勇退したり、ダイエーのフロント陣がどたばたして無償トレード騒動を起こしたり、表の世界とはまた違った内幕がいろいろと取沙汰されたシーズンでした。大リーグは日本のプロ野球以上に裏側にドロドロとした確執が渦巻いていそうですが、このエンターテインメント小説はそんなファンの期待を裏切らない(?)サービス満点のドロドロ具合です。しかもほど良く夢を裏切らないドタバタ喜劇っぷりで、殺人そのものが凄惨なことはちっとも気になりません。もし映画化するなら、主人公を女性オーナーに変更してシガニー・ウィーバーで、豪速球ピッチャーはケビン・ベーコンで、監督はマイケル・ダグラスでお願いします。…って誰にお願いすればいいんでしょ?