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勝手に目利き
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天使と悪魔
天使と悪魔(上・下)
【角川書店】
ダン・ブラウン
定価 (各)1,890円(税込)
2003/10
(上)ISBN-4047914568
(下)ISBN-4047914576
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  古幡 瑞穂
  評価:B
   “反物質”というすごい力を秘めた物質が最新の科学研究所から盗まれて、どうやらそれは次期教皇を決める作業をし始めているバチカン市国に持ち込まれているらしい……しかもそれに先だって起こった殺人事件では被害者の胸に古代に滅びたはずの秘密結社の刻印が……と聞いただけでワクワクしてきて、読んでみたらやっぱり目が離せなくなって一気読み。事件のスケールが大きい上に、それを彩る小道具が豪勢なものばかりなのです。ま、ちょっとオビの文句は大げさですけどね。
 ページ数の多さ(上下巻)と翻訳物だということでひるみそうですが、かなり読みやすい作品です。ただ逆に後半からは映像が目に浮かぶ作りだったのが気になります。良くも悪くもハリウッド向きな本ですね。
 しかしこの中で最も衝撃的だった創作物は秘密結社イルミナティの紋章です。文字に魔力を感じるという初体験をさせてもらいました。

 
  松井 ゆかり
  評価:B
   看板(帯)に偽りなし。「怒濤の徹夜本!」「ページを繰る手が止まらない」などなど…。私ももっと若かったら、そして次の日夫のお弁当を作らないのだったら、思いっきり夜更かししたかも。トム・クランシーやマイケル・クライトンなどが引き合いに出されているようだが、トマス・ハリスにいちばん近い気がした。より大衆的、というか超訳っぽいが。
 「反物質」「イルミナティ」「フリーメイソン」「コンクラーベ」「カメルレンゴ」といった、自分の日常生活とはおよそ何の接点もなさそうな単語がてんこ盛りであるにもかかわらず、どんどん読めてしまう。少々強引な筋運びのような気もするが、読んでいる間はほとんどまったく気にならない。エンターテインメントに徹した、娯楽としての読書の醍醐味を味わわせてくれる一冊。

 
  三浦 英崇
  評価:A
   闇に消えた秘密結社「イルミナティ」が、積年の怨恨を晴らすべく、歴史の表舞台にその不気味な姿を現すオープニングから、ぐいっと引き込まれてしまいました。
 数マイル四方を消し飛ばしかねない反物質と、誘拐された次期ローマ法王候補たちの行方を突き止めるべく、「イルミナティ」の暗号をたどってヴァチカン市国内を走り回らされるのは、宗教学者・ラングドン。彼も、朝起きた時には、自分がこんな1日を過ごすはめになろうとは思ってもみなかったろうに……
 息もつかせぬアクション、二転三転する真相。娯楽作品としても一級の出来ですが、科学と宗教の対立と融和という、人類がこれからもずっと抱えてゆくだろう課題への一つの回答をも示唆する大作。
 こんなゲームで遊んでみたいです。各社の皆様、企画の検討をお願いします。と言うより、いっそ自分が企画書を作りたいくらいの気分になりました。