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薔薇窓
(上・下)
【新潮文庫】
帚木蓬生
(上)定価 700円(税込)
(下)定価 620円(税込)
2003/12
ISBN-4101288143
ISBN-4101288151
(上)
(下)
岩井 麻衣子
評価:B
精神科医ラセーグが、万国博に賑わうパリで行方不明女性が多発する事件を、警察に保護された日本娘の面倒をみたり、貴婦人にストーカーされたりしながら、解決していくというミステリーである。事件の解決よりもパリに旅行したかのような気分になる街の描写がすばらしく、外から見た日本についての語りにも考えさせられるのではあるが……。問題は貴婦人ストーカーに対する仕打ちなのだ。この医者は迷惑そうなそぶりをみせつつ、貴婦人の色香に惑わされたとか言って、ちゃっかり一夜を共にし、その後はとことん無視を決め込んでしまう。ストーカーなんてしたらこんな目にあうぞという訳なのか、貴婦人はどんどん不幸になって、ついには作者にも見捨てられてしまう。医者は日本娘と親密になっていくし、自業自得とはいえ、あまりにも気の毒な貴婦人の行く末が気になる。しかも従順ではかなげな小娘に乗り換えたとあっては、薔薇窓をうっとりと見上げているであろう二人の悪口の一つも言いたくなってしまうのである。
斉藤 明暢
評価:B
仔犬をもらってくる時は、母犬や自分の匂いがしみついた物を持たせてやると、新しい家でも仔犬が安心できる。というのと同じ理屈かはわからないが、異国の話の中に日本のエピソードや人物が出てくると、ちょっと嬉しかったり誇らしかったり恥ずかしかったりするのは、よくあることだと思う。100年前のフランスの警察署付きの精神科医、という立場の主人公の物語にすんなり入り込めるのは、物語に散りばめられた日本の匂いのせいもあるのだろう。
もし現代が舞台なら、さぞかしぶっ飛んだ方々とか科学捜査とかプロファイリングとか脳に直接接続とかが出てくるのだろうが、そこは100年前のフランスが舞台、犯罪にもちょっと緩いテンポみたいなものを感じる。主人公の周りはみんな優しい善人で、残りは哀れな病人と犯罪者だけというのはちょっとずるい気もするが、この場合はそれでいいのかもしれない。
ひとつ残念なのは、物語を通じて流れていた一本の線が、最後の最後で宙ぶらりんのままフェードアウトしてることだ。そのへんが最後の大団円につながる仕掛けかと思って、期待してたんだけど。
期待を裏切られるのは構わないけど、忘れられるのはちょっと哀しいのだった。
竹本 紗梨
評価:A
1900年のフランスで起こった、外国人女性の連続誘拐事件とその事件に関わっていく精神科医の物語でこれぞ小説!といった読みごたえ。「閉鎖病棟」の読後感の重さのため、しばらくこの作者から遠ざかっていましたが、この話もまたずっしりと重厚なストーリーでした。ただその重みは事件のセンセーショナルさよりも、当時のフランスを映しきった描写力によるもの。保護された日本人の音奴や食堂のイヴォンヌおばさん、娼館のマリアンヌや辻馬車のジェラ−ルなど人間くさくて魅力的な登場人物がパリの街で生き生きと暮らしていて、物語に深みを与えています。フランスも日本も美しく描かれすぎとは感じつつも、日本人「林」の潔癖さには説得力がありました。ただどうしても気になるのは貴婦人ポリニャック夫人のストーカー行為の結末。長い時間読んできて、スッキリしないのは勘弁して欲しい…。
平野 敬三
評価:D
酒を飲んでたからという逃げ道があったとはいえ要はやっちゃったくせに、相手をストーカーとか妄想癖とかなじる男はどう考えても笑いの対象ですが、どうもここでは一貫して聖人のように扱われていてそこが最後までしっくりこなかった理由かと。ころころ女も変えてるし、なんだお堅く見えてけっこうだらしないじゃん仲良くやれそうじゃんって気安く肩を叩いたら思いっきりにらまれた、そんな感じ。けっこう好きな作家だっただけに、かなりガックリきた。上下巻にわたる重厚な物語もスケールが大きい、といえば聞こえが良いが、冗長なだけ。一番やってはいけない、同時並行のいくつかのエピソードのひとつを置き去りにしているのも痛い。また、主人公がやけに冷静なのも気になる。「愛情」をテーマに扱うならば破綻を来してもいいからもっと踏み込んで主人公の気持ちを揺さぶるべきではなかったか。全体的には非常に印象的な物語だけに欠点が大きく目立った。
和田 啓
評価:B
パリ。シテ島の裁判所の中、サント・シャペル礼拝堂にその薔薇窓はある。
19世紀末、万国博覧会で湧くフランスの首都が舞台。エッフェル塔はすでに高く聳えているが、地下鉄は開通したばかり。地上では馬車が走っている。主人公はフランス人の精神科医だ。症状多感な患者が連日押し寄せ、どこか世紀末的な雰囲気が漂っている。
身元不明の瞳に光が射している可憐な日本人少女、音奴との邂逅がストーリーの縦糸となっている。街では5人の女が消え、主人公も謎の貴婦人につけまわされる。(芝居になるならポリニャック婦人は黒木瞳が適役)
物語の構成は秀抜。細部の検証も緻密かつ一糸の縺れもない。巧みな人物造形など文句のつけようがないのだが、いかんせん長過ぎる。薔薇窓と小説のテーマとの結びつけが弱く感じられた。1900年のパリの香りは、濃厚に漂ってはくる。