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死者と踊るリプリー
死者と踊るリプリー
【河出文庫】
パトリシア・ハイスミス
定価 1,029円(税込)
2003/12
 
ISBN-4309462375


  岩井 麻衣子
  評価:B
   1作目が「太陽がいっぱい」近年では「リプリー」として映画化されたシリーズ第5作、完結編である。1作目の殺人にはじまって様々な悪事を働き、追求を逃れてきたトム・リプリー。私は上記の映画2作品を見ただけで、原作を含め4作品は読んでいないのだが、どうやら彼はずっと悪いことをし、そのたびに追求を逃れてきたようである。本書ではパリ近郊で妻と静かに暮らしているリプリー。突然、彼の生活に姿をあらわしたアメリカ人夫婦に幸せな暮らしを脅かされる。過去が彼を追ってきたのである。彼の悪事がいつ発覚し、世間に暴露されるのか。ページをめくるのが怖くなるほどの危い生活しかリプリーにはない。物語は淡々と進むが、悪事を働いても自分の生活を守りたいというリプリーの思いがすごい。前作全て読んだほうがリプリーの危さを理解できるだろうが、映画でも一端はつかめる。「リプリー」のほうがより原作には忠実らしい。リプリーのなんだか寂しそうな顔が目に浮かぶ。

  藤本 有紀
  評価:B
   “リプリー”シリーズの5作目。フランスに邸を構えるトム・リプリーの近所にアメリカ人の敵役プリッチャードが引っ越してくる。うまく隠したはずの昔犯した殺人をどういうわけか嗅ぎ回るプリッチャード。相手はかなり核心に迫ってきている。尻尾をつかませるわけにはいかない! ロンドン・フランス・モロッコを駆けるリプリー、というあらすじ。シリーズ2作目の「贋作」に内容的には続くものであるらしいので、これから読む人はシリーズ1、3、4作は割愛しても「贋作」を先に読むことをお勧めします。死者が多数出てくるので前段を整理してからのほうがより本作品のスリルを味わえるでしょう。
 それにしても、昔気質のメイドまで抱え「グレート・ギャツビー」風に優雅に暮らしているけど、リプリーはかなりの悪党です。
 モロッコといえば、女同士やファミリーステイには絶対向かないアマン系のホテルができたとかで、我が国からは遠いけれども日本人(特にハネムーナーに)にアピールしてきている土地。モロッコのシーンがもうちょっと多めだといいのに。