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アンジェラの灰
(上・下)
【新潮文庫】
フランク・マコート
(各)定価 660円(税込)
2003/12
ISBN-4102025111
ISBN-410202512X
(上)
(下)
岩井 麻衣子
評価:B
著者マコート氏の回想録である。幼少期から渡米するまでを、アイルランドをとりまく政治的な問題やカトリックの厳格な教えをベースに子供の視線で語っている。しかし、メインは、とにかくお腹がすいちゃってしかたのない話しなのだ。生まれたときから貧困しか知らないからだろうか、悲壮な感じはしないのだが、人間の基本的な欲求である食欲は本能的にもっと食べろというらしく、全編にわたってお腹がすいている。こちらまでお腹がすいてくる迫力である。マコート少年はとんでもないものまで食べて飢えをしのぐ。極貧、超空腹の中でしっかり人生をみつめ渡米費用まで稼ぎだしていくあたりがたくましい。「腹が減ってたんだよ」というだけの話しではないんだけれど、お腹が減ったら気分も機嫌も悪くなる私としては、その空腹感に耐えきれず、日本の常識ある働き者の両親のもとに生まれて本当によかったと思ったのである。
斉藤 明暢
評価:C
ものすごい貧乏というものは、話では聞くけどうまくイメージできない。家は金持ちでも何でもなかったが、小学校のクラスに靴がない子なんていなかったし、近所にも明日の食事にも困るような人はいなかったはずだ。もちろん生まれた時代や場所なんかで、その辺の事情が違ってくるのは当然だけど。名作アニメの「とりあえず貧乏な主人公」路線が続かなくなったのも無理はない。
この主人公の一家はものすごい貧乏だが、ちょっと不思議なのは、物心両面で時々ちゃんとした援助というか手助けが得られることだ。例えばの話、ある夜に突然、親戚の一家が着の身着のままで押しかけてきたら、自分がどの程度寛大にふるまえるか、けっこう疑問だと思う。
そして無宗教的ニッポン人として気になるのは、人々の生活や考え方に染みこんだ宗教や教会の存在だ。宗教は人を幸せにするのか、それとも余計な面倒をセットで呼び込むものなのか。
やはり自分がよく知らないものには、どうもコメントしづらいのだった。
竹本 紗梨
評価:A
父親の少ない給料の全てが飲み代に消えても、家が水浸しでも、食べるものもなくりんごの皮の切れっ端を奪い合っていても、幼い妹や弟が病気で次々となくなっていても、生活して生きている以上、ずっと絶望しているわけではないのだ。子どもだからこそ、悲惨すぎる生活を淡々と、もはやユーモアとしかいえない視点で描いている。悲惨な状況だからこそ、ほんの少しの希望や愛情が際立って見える。たとえ貧乏の極みでもその人が持って生まれた性質や品といったものは損なわれない。どうしようもないぬかるみのような話の中で、そのことだけが光って見えた。報道写真と同じでこういう話の前では言葉少なになってしまう…。
藤川 佳子
評価:AA
著者マコート氏のアイルランドで過ごした極貧少年時代を綴った小説。裏の解説には「ユーモアたっぷりに綴る…」なんて書いてあるけど、このユーモアっつーのが曲者でね、ユーモラスだからこそ泣けてくるのです。変にお涙頂戴してないからこそ、グッと押し迫ってくる真実がある。よくもまぁ、あんな粗悪な環境からこんな立派な人物が育ったもんだ。まだ赤ん坊の自分の弟がろくに体も洗えないために、いつでもうんこまみれっていう描写だけで、その極貧っぷりがうかがえる。それでも一家は逞しく生きていくのです。貧しさが育む知恵や心もある。良い環境を与えたからって、よい子が育つわけじゃないのです。なにごとも自分次第ってことですね。
藤本 有紀
評価:A-
アイルランドといえば近頃注目のアイリッシュ・ダンス、IRA、Mc系の人、O'系の人、読んではいないけど「ダブリン市民」。あんまり日本人におなじみの国とはいえないのじゃないかと思う国アイルランド。でも、アメリカにはアイルランド系移民が相当いるらしい。本書はアイルランド系移民フランク・Mcコートの回想です。
困難に満ちただれかの過去の物語に期待する役目、それは「心弱きときの糧」なのです。ノンフィクション専門文庫のキャッチコピーそのままですが。寒さ、飢え、不衛生、父失業のち蒸発、病気、死、意地悪な大人……。フランクの少年期は困難だらけですが、この小説はそういうものじゃないという気がします。山崎豊子の「二つの祖国」とか米原万里「オリガ・モリソヴナの反語法」なんかのほうが(小説ですけど)、私が期待する役割にはぴったりきます。アゴタ・クリストフも先に読んどけばよかった……、と本稿を書くにあたって思っています。
訳文が読みやすく、さすがは新潮クレスト・ブックという感じです。アメリカ人がいう"God damn"が「ガッデム」なところが名訳。「売女め!」みたいな訳を連発されるとけっこう疲れますから。
和田 啓
評価:A
愛蘭人は、誇り高い負けの民族であると司馬遼太郎は、書いた。戦いはいつも敗北に終わったが、戦い続けたのだ。この小説には人生がすべて入っている。ひとりの少年の、生への率直なまなざし、森羅万象への観察眼、溢れんばかりの感受性に満ち満ちている。
お父さんは呑んだくれでどうしょうもなく、お母さんは苦労のしっぱなし。極貧の暮らし。食べ、排泄し、恋をし、金を稼ぎ、寝る原初的な営み。生きるということはキレイごとだけでは済まされない。少年の周りには今日も多彩な世界がある。どんな悲惨な出来事にぶちあたっても悩む暇なんぞないのである。少年は夢を見る。いつか豊かな国アメリカに渡り金持ちになって成功する夢を。生きていく上で夢は必要だ。
筆者は些細なディテールを積み重ねることで、優れた真実を獲得している。いわば、真の幸せやヒューマニズムを。太陽で乾かした服を着る気持ちよさ。晴れた秋のシャノン川のきらめき、緑色の野原に朝露が光る描写。泥炭が燃える甘い匂い、牛と羊が草を食むシーン。そう、少年はアメリカに行きたくはないのである。