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ホンキートンク・ガール
ホンキートンク・ガール
【小学館文庫】
リック・リオーダン
定価 730円(税込)
2004/3
ISBN-4094038825

  岩井 麻衣子
  評価:C
   アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作品。探偵見習ナヴァーが見張る目の前で、尾行していた女が殺される。彼女はメジャーデビュー直前という女性シンガーのバンドメンバーで、シンガーを取り巻く陰謀に巻きこまれ殺されたらしい。ナヴァーは様々な妨害をうけながら真相を追究する。「おまえは頭のてっぺんから爪先まで中世なんだ……たった三秒の馬上槍試合のために十二時間かけて甲冑を着込む……過程が楽だったら、ぜんぜんつまらないというわけだ。」太極拳が好きなナヴァーに向けられたこの言葉が本書を的確に表現している。これといって起伏のある展開ではなく、事件に関わる人々の背景や思い、そんなナヴァーが調べる人々の描写が事件そのものよりも大部分を占める。カントリーソングそのままののんびりとした雰囲気だ。派手な対決のある探偵小説を好む人には向かない、過程を楽しむ一冊である。

  斉藤 明暢
  評価:C
   弁護士事務所に所属していながら、法の表側では扱えない部分を引き受けていた主人公は、今は4歳の子持ち女探偵の下で探偵のライセンスを取るために耐え続けるか、文学の学位を活かして大学の講師に納まるかで揺れている。銃を持たず、太極拳の名人である彼は、やや優柔不断ながら、結局はいつも自分のしたいように行動する男だ。そして唯一、そんな彼の帰りを家で待っていてくれるのは、老いてだらしなく汚れたバセット犬だけなのだ。
 という感じで、これだけ主人公の背景が揃っていながら、なぜかどれも消化不良のまま、人の手助けとか偶然によって事態は進展していく。おまけにクライマックスの対決場面では、下手くそな拳銃をデタラメにぶっ放したあげく、最後まで他人の助けによって事件は解決してしまうのだ。
 ミステリとしてのストーリーとか人物描写とかはとりあえず置いといて、あえて私は言いたい。
「使えよ太極拳!」と。
 チンピラとの小競り合いなんかどうでもいいから、奥の手は見せ場でこそ使えと言いたい。