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残虐記
【新潮社】
桐野夏生
定価 1,470円(税込)
2004/2
ISBN-4104667013
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
川合 泉
評価:B+
失踪した作家の残した原稿。そこには、作家自身が被害者であった25年前の少女監禁事件の「真実」が赤裸々に描かれていた。
一年を同じ屋根の下で暮らした若い男と少女の異様な関係、解放後の被害者の内面がノンフィクションばりのリアルさで迫ってくる。この小説のすごさは、監禁時の描写以上に、救出された後の少女の精神面に、より重点を置いていることだ。周りの人間の好奇の視線、想像を膨らませることで精神状態を保つ少女の内面を、真正面から抉り出している。ただ、これだけ重いテーマの割にはページ数が少なく、やや唐突に終ったという印象を受けた。精神的残虐さがあまりにリアル故、吐き気すら感じた一品。どうぞ、桐野ワールドの深みにはまってみて下さい。
桑島 まさき
評価:A
人気ミステリー作家・桐野夏生は社会派作家だ。実際に起こった事件に着眼し大作「OUT」を完成させた。本作も、まだ人々の記憶に新しい新潟での少女監禁事件に着想し、突如、他人の自分勝手な思惑によって人生を中断された少女の心の傷をみつめ、その後の人生に与えた影響を力強く描く。不謹慎だと知りつつ言えば、被害者の心の問題を知りたいという欲望は、確かに我々にはある。
それは全く痛々しい現実だ。監禁から解放され晴れて元の生活へ戻った主人公の少女が久し振りの生活や両親に覚える違和感や、人々の同情や好奇心が、いかに重圧となっていったか…被害が二次、三次と及ぶ不幸が胸を締め付けられるように伝わってくる。しかし、監禁の被害者である主人公だけでなく加害者のケンジも又、ヤタベという男によって残酷に虐げられた被害者であることが徐々に明らかになるにつれ、罪を犯す者の心の闇や、作中の言葉通り人間の〈所為〉に対する憤りや怒りまでをも描ききる作家の力量に改めて感服した。天晴! 子ども時代の心の傷の大きさについて改めて思う。
藤井 貴志
評価:A
失踪した女性作家が残した一編の原稿をめぐり、彼女の夫が編集者に宛てた手紙から本書は始まる。少女時代、若い男に誘拐され1年もの間監禁された過去をもつ女流作家。少女の拉致監禁という本書の設定は、誰もが現実に起こった事件を思い描くことだろう。しかし、いざストーリーが動き始めると、一気に物語が「桐野ワールド」で彩られる。
突然に何者かによって世界を閉ざされた女の子が、心の安定を希求したいという深層欲求からか、「逃げたい」と強く思いながらも監禁状態の中に落ち着きどころを探しはじめる。主人公の女の子でさえ恐らく無意識だったであろうそうした不安定な震央も見事に描かれている。
少女はやがて無事に解放されたものの、無遠慮に押し寄せる他者との関わり方に馴染めずに苦悩する。無防備な世間にさらされた彼女は、誘拐犯の傘の下で過ごした1年をふり返ったとき、いったい何を感じるのか……。一気に読み干させる腕力のある物語だ。
古幡 瑞穂
評価:B
薄いからサクサク読めるのですが、本を閉じたとたん本がずっしりと重く感じられるようになります。読後感の悪さはいつものとおりです。『グロテスク』同様実在の事件を素材に書き上げた小説なので、期待大!だったんだけど、インパクトだけとってみると『グロテスク』に勝てていません。枚数の問題もあるかもしれませんが。
女性作家がある原稿を残して姿を消します。その原稿に描かれていたのは10歳の時に誘拐・監禁事件の被害者になっていたということ。そして失踪の引き金になったのはその犯人からの手紙が届いたことでした。ここから長い回想が始まります。
周囲の大人が想像した性的な被害はどうだったのか、それらが明かされつつ全体像が明らかになっていくのですが、その真実は驚くべきものでした。でも、主人公は作家。真実を嘘に変えることも出来るし、嘘を真実のように見せかけることも出来るのです。どうも一筋縄ではいかなそうですね。もう少しじっくりこの小説に潜んでいる意味を考えてみる必要があるのかもしれません。
松井 ゆかり
評価:B
吉野朔実さんの「恋愛的瞬間」という作品に、自分を誘拐した犯人と恋に落ちる少女の話がある。それを読んだとき真っ先に思ったのが、「実際に誘拐(監禁)された経験を持つ人がこの話を読んだらどう感じるだろうか」ということだった。そしてこの「残虐記」に、私は再び同じことを思った。
もちろん、どちらの作品もあくまでフィクションであって、現実の被害者の心情を厳密に模写する必要性はないわけだが(桐野さんご本人が「小説を書くにあたって、あまり取材はしない」とおっしゃっていた覚えもある)、そういうことが気になり出すとなかなか物語に集中できない。実際に監禁される恐怖は小説とはずいぶん違ったものであるに違いない、とか。
そうは言っても、桐野夏生さんの筆力にはいつも圧倒される。「グロテスク」も東電OL事件に着想を得た作品であったが、あまり両者の関連性は気にならなかった。作品との相性みたいなものもあるのかと思うが、自分の中に監禁事件の被害者の方に対して何か特別な意識があるのかもしれないと後ろめたい気もして、それも胸が痛む。
松田 美樹
評価:B+
ぞっとしました。ぞわぞわとした読後感と主人公に襲い掛かった運命に対する割り切れない気持ち。今、私の中でこれをどう消化しようかと戸惑っています。
設定がとてもうまい。誘拐され、幽閉された少女の1年間と、彼女の気持ちの推移と事件の真実が明かされる25年後が描かれています。知りたい、もっと知りたいと思う気持ちを最初から駆り立てられてしまいました。恐いもの見たさ、というか、野次馬根性のような知りたい気持ちを上手く作者に掴まれてしまった感じです。そのまま乗せられて、気が付けばどっぷりと桐野ワールドへ。そして、ぽんっと放り出されてしまうようなラストシーン。物事を一面だけでとらえない、こんな可能性もある、あんな可能性もあるという出来事への光の当て方に辛い気持ちになりました。終始緊迫した感のある作品なので、精神的な体力が必要です。それにしても、人間って恐いよぅ。
三浦 英崇
評価:B
話の組み立てが極めて巧みで、一気に読み進めてしまうけれど、読み終わった後にたまらなく嫌な思いを引きずってしまうタイプの作品、って結構あるじゃないですか。今回、もう最初から身構えてました。何しろタイトルが「残虐記」で、作者が桐野さんでしょ。帯には「少女誘拐・監禁事件」。気も滅入りますよ、そりゃ。また、この本を読み始めようとする時の体調も最悪で……
そんな数々の悪条件を抱えつつ読んだこの作品。おや? 不思議だなあ。誘拐・監禁事件の被害者だった女性作家が、25年後に語った心情という、どうやっても辛くなりそうな話が、まるで、歪んだ魂同士が引き合って作り出した一種の恋愛状況を描いているかのような印象になっています。
「ストックホルム症候群」(監禁者と被害者との間に生じる擬似的な連帯感)で単純には片付けられない、当人同士の「真実」。読後はもちろんまた、気が滅入りましたが……始末に悪くて、いいですね。