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笑うニュ−ヨ−クDANGER
【講談社文庫】
竹内玲子
定価 700
円(税込)
2004/5
ISBN-4062747766
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
岩井 麻衣子
評価:D
ニューヨークに15年住む筆者の笑える日常生活エッセイ。雑誌なんかで紹介されるニューヨークとは違った変なNYで楽しく過ごしてますといった海外生活日記といったところか。しかーし、これがまるで笑えないのだ。「タクの運ちゃんがあんまりひどいから、わしゃあ言ったったで」って言われても。そんな「ヤカラ」自慢はこちらには不愉快なだけだ。「ヤカラ」自慢は、横山やっさんくらいやってもらわんと何の魅力もない。それにやっさんは自分では自慢してなかったぞ。目覚めたリンコ、強要されたリンコと、自分のことをリンコ、リンコと繰り返すのもよろしくない。ラストの締めはNYだけに9.11の悲惨なテロ事件だが、現場にいたにしては臨場感がまるでない。筆者がたくましく海外で生きていくパワーは伝わってくるし、マスコミには登場しない生のNYも確かに感じられるだけに、個人日記のような自慢で終わっているのが残念だ。
斉藤 明暢
評価:B
冒頭の面白さに思い切りハマったのに、後半でトーンが変わってしまい、不満ではないけど不満足な読後感となってしまうことがある。本書の場合も、読み始めた時点では「コレは面白そうだ、間違いない!」と思っていた。
知人だったらさぞかし面白いネタ発生源だろうけど、身内や身近にいたら無茶苦茶迷惑だろうと思われる作者のニューヨーク生活を描いたエッセイは、彼女がとんでもない災難にあったり、はた迷惑な暴挙に及ぶほど、読んでる方は面白いのだ。まあ、その調子で最後まで押し切ってくれと求める方が無理なのかもしれないが。
自分にまつわるドタバタを面白可笑しく描いてる人が、なぜか最後のほうだけ急に綺麗にまとめようとすることがある。それはバランス感覚なのか、ある種の見栄なのかはわからない。そうしたい気持ちもわかる気がするけど、やっぱり刺激の強いカレーを食べ始めたら最後の一口までカレー味のままがいいなあ、などと思うのだった。
竹本 紗梨
評価:B
人気シリーズ大3作。相変わらずリンコさんは、大都市ニューヨークで怒って怒って、食べて、飲んで、友達と遊んで、また変なことに巻き込まれて生活している。なんというか、その呼吸のラクさが、とっても魅力的。気性の激しいお姉さんが、大好きな街のことをたくさん教えてくれている。とろけるドーナツかあ…。その、ハチャメチャ(死語)ニューヨークエッセイの中で、9月11日のレポートが胸に突き刺さった。「世界一の街、ニューヨーク。そう信じて疑わぬがゆえの傲慢さで輝きつづけてきた」から始まるその日の回想は、その場所にいた人間だけの傷を伝えてくれた。
平野 敬三
評価:B
ああ、この著者は会って話したらすぐに仲良くなれそうだな。そう読み手に思わせるエッセイは、いわば「勝ち」なわけで、そこには大いに相性というものが関係してくる。特に旅行エッセイや海外ものは著者の価値観がもろに浮かび上がってくるから、読み手と著者の相性というのは他のジャンルに比べて大事になってくるのだと思う。(あまりに価値観がかけ離れてしまうとそれはそれで楽しく読めるのだけど)。本書はその意味で、僕にとっては非常に相性の良い海外ものエッセイだった。別段、感じ入った箇所があるわけではないが、最後まで楽しく読めた(最終章は楽しく読んではいけないが)。出会った人たちに対する「心のつっこみ」に何度か大声で笑ってしまったほど。自分の悲惨な状況を、冷静に笑いのネタにできる人は実はタフでも何でもなく人間的には弱い部分が多かったりするものだが、彼女の文章からは表面上、その「弱さ」がまったく垣間見えないところがいい。
藤川 佳子
評価:B
『鎮魂歌』を読んで、こんがらがった頭をどうにかスッキリさせたいと思い、思わず手に取った一冊。なーんも考えずに、あははと読み進めるのも、これ読書の楽しみ方のひとつ。ニューヨークをこよなく愛す著者・玲子ことリンコとそのヘンテコな仲間たちのおかしな日常がテンポ良く描かれています。ドラマや映画で見たようなあんなこと、こんなことをリンコが体験すると…。身近でそれでいて新鮮なニューヨークの風景が目の前に広がります。
和田 啓
評価:B
ここ数年また行きたい、すぐに行けるだろう……誰か連れてってよ!!という都市がわたしにとってのビッグアップル、ニューヨーク・シティです。そんな欲望を作者は臆面なくガンガン叶えてくれ、見事にストレス解消してくれました。イエローキャブを想起させる黄色の表紙は期待していた旅行欲に応えてくれます。
この世で一番おいしいパストラミ・サンドやドーナツは、やはり当地で食べなければ意味がない。ヤンキースタジアムで食すからこそ、ホットドッグは輝くのだ。焼きたての香ばしいクロワッサンがパリの朝を飾るようにベーグルやビアーリも「ニューヨークの朝」の象徴である。
個性的であることに無常の価値を見出し、いい加減さ、雑駁さを土壌にしながら「人生何とでもなる!」といつでもカードを切れる街は世界広しとはいえ、そうそうない。