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復活の儀式

復活の儀式(上下)
【創元推理文庫】
T・E・D・クライン
定価 1050
円(税込)
2004/5
ISBN-4488559018
ISBN-4488559026


  岩井 麻衣子
  評価:C
   数千年前から森で眠る邪悪なもの。それは迷い込んだ少年を7日目に殺し、自分の崇拝者に仕上げた。現代、ニューヨークに住むジェラミィは夏期休暇を田舎で過ごそうと古い信仰が残る狭い共同体へやってくる。一方、図書館に勤めるキャロルは謎の老人の仕事を手伝うことになった。何やら怪しいものを復活させるための準備を着々と進める老人。老人の手駒としてジェラミィとキャロルは巧みに配置され、儀式の道具として仕上げられていく。儀式のキーポイントになるのがマッケンの書だったりと実在の小道具が使用されるため、知ってる人にマニア的なお得感がある。全体のおどろおどろしい雰囲気がすばらしく、まさに邪悪なものが復活しそうなうなやばい雰囲気が立ち上ってくる。しかし、基本となる作品の知識がないと分かりづらく、地味な儀式、待ってるだけの邪悪なもの、妙に弱い老人など肩透かしをくらってしまう。結末もいま一つ盛り上がりに欠けるのだ。

  斉藤 明暢
  評価:B
   日本は高温多湿ってことになってるが、こと宗教関連に関しては、なにか乾いたものを感じる。仏教や神道自体のもつ雰囲気もあるだろうけど、アジア諸国と比べても、やっぱり指を滑らすとサラッといいそうな気がする。それに比べて欧米とか南の国の宗教儀式は、やけに油っぽかったり匂いが強烈だったり、触ると「ぺちょ」とか「ヌルッ」って音がしそうに感じるのだ。それは地域や人の体質だけでなく、そのおおもとの起源からして違うせいなのかもしれない。
 それはそれとして、この世ならぬ邪悪な者が、なんでこの世の者が行う定められた儀式で復活できるのか、今イチよくわからないが、とにかく儀式が無事に完了したらこの世が終わってしまうのだというルールのもと、ルールを知らされないままに登場人物達は巻き込まれていく。その時々で最善と思ってしたことが、後々利用されてしまうのが、なんとも歯がゆい。じゃあどうすればよかったのだ?って聞かれても困るのだが。