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長崎乱楽坂
【新潮社】
吉田修一
定価 1,365円(税込)
2004/5
ISBN-4104628026
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
川合 泉
評価:B
この作品は、「東京湾景」「日曜日たち」のような現代的でウィットの効いた作品とは一線を画した、人間臭さを前面に出した作品に仕上げられています。こんな泥臭い作品も書かれる方だったのか、と驚かされました。(逆に、本当に書きたかったのはこういう作品だったのかなあとも感じました。)
長崎の落ちぶれたヤクザ一家。そこに住む兄弟の視点を通して、男等、女等の悲哀を浮かび上がらせています。行間の随所に湿度と薄暗さが潜んでおり、ページをめくりながらも、八十年代の日本映画が目の前で展開されている感覚に襲われました。人間の本性を包み隠すことなく描ききっている一作です。
これまでのものとは作風ががらりと変わっているので、今までの吉田作品の読者層より上の方にも是非チャレンジして頂きたい一冊です。
桑島 まさき
評価:B
宮尾登美子は「櫂」や「寒椿」という作品を通して故郷・土佐を舞台にした遊郭に生きる女達の愛や哀しみを描いた。同様に吉田修一は、故郷・長崎を舞台にヤクザ者の生き様を描く。戦後、雨後の筍のように派生した組の一つ、荒くれ男たちが暮す大家族の中で、主人公・駿は育った。物語は少年、駿の目を通して語られる。
ヤクザ者の出入りする家。ここでは女は添え物だ。出入りの男と駆け落ちした駿の母。母に捨てられた駿と弟の悠太。血の気の多い男たちの怒声と暴力と直情的な性をまじかに見て育った駿は、いつかここを飛び出して外の世界へ行こうと思っていたが…。幼かったために組の男達をあまりよく覚えていない悠太が故郷を捨て東京へ出たのに対し、ヤクザの世界を嫌っていたはずの駿は、なぜか家を離れることができない。まるで亡き男達を弔うかのように。強い引力に引きつけられるかのように。働かず何をしない生活を続ける。
結末、燃え盛る炎の中に駿が見てきた男たちの悲鳴にも似た声を聞くシーンは、一つの時代の終焉を予感させ、兄弟に訪れるであろう新たな時代の伊吹を感じさせる。
藤井 貴志
評価:A
長崎を舞台に、一時は栄華を極めたやくざの一家が没落していく様を幼い兄弟の視点で見つめた物語。
幼い頃からやくざという生き方に違和感を持っていたこの兄弟。一家の繁栄を間近で見ながらも、そんな周囲を忌み嫌うかのように自らはまったく別の行き方を志していく。やがて近代化に乗り遅れたやくざの一家は傾きはじめ、一家の賑わいも過去のものとなる。
物語は主に兄弟の兄の視点で語られ、近親憎悪にも似た感覚でやくざを見つめていた少年は、物心がついた時分からは町を出ることを企てはじめる。意思では故郷を捨てたいと願うが、すんでのところでそんな憎むべき家を捨てることができない。こうして老人と女子供だけになった家に、少年は澱のように沈んで引きこもる。
そんな兄を見た弟にとって、落ちぶれた実家の象徴である兄こそが憎むべき存在になる……。
著者のこれまでの作品にくらべると格段に泥くさく人間くさい。読んでいると、男たちの汗のべたつきや吐く息のにおいまで伝わってくるようだった。
古幡 瑞穂
評価:A
性、暴力、時には血の匂い。そういうものがじんじんと伝わってきます。子どもたちの目が見ているのは極道の世界。本人たちの視点だったら理屈づけたり、正当化したり、格好つけたりするところなのでしょうが、子どもはある意味冷静にその世界を見ているというところが面白いです。そして多少の憧憬を感じながら、別の生き方を見つけていくんですね。
実態と比べてみてリアルなのかどうかは知りようもありませんが、伝わってくる熱はリアルで生々しいものです。書く人によっては顔をしかめるようなものになりそうなのに、吉田さんが書くと品があるんですよ。だから基本的にはヤクザもの嫌いの私にもすーっと読めました。時が経ち、子どもたちが大人になったとき、あれほどまでに煌びやかに見えた世界が宴の後のようになっている…そのなんともいえない寂寥感が心に残ります。
松井 ゆかり
評価:B
やるじゃん、“よっしゅう”(伊坂幸太郎さんが吉田さんを勝手にこう呼ぶことにしている、と「作家の読書道」のコーナーでおっしゃってたので、倣ってみました)!こんなハードな感じもいけるのね。
亡き父の実家が福岡で、里帰りをすると宴会になったものだが、九州の酒席ってまさにこう(いや、うちの実家は堅気でしたけどね)。吉田さんといえば都会に暮らす男女の人生模様を描く第一人者!という認識があったので(だって月9の原作者だもの)、こういう土着系小説が読めるとは思っていなかった。
でも、舞台装置にちょっと目くらましされるけど、根底に流れるものは同じものだという気もする。あえて自分の故郷を舞台に小説を書くということは、作者の思い入れも半端ではないと思われる。吉田さんの意気込みによって、登場人物たちの熱をひりひりと感じさせる一冊になったと思う。
松田 美樹
評価:B
今月の課題本『蒼のなかに』が女の人生を語ったものなら、こちらは反対に男の人生を描いた1冊。女とは何かも知らない少年だった駿が、浮き沈みの激しい周りの大人たちに翻弄されながら成長していく物語。
書かれているのは、(性描写という意味ではなく)あまりに露骨な男と女の関係。駿の母親という立場よりも先に女であることを駿に見せる千鶴、またその千鶴を誘う男。甘やかな母と子どもの関係を結ぶことよりも、自分の女としての人生を選んだ母親は、ある日1人の男と一緒に家を出ていってしまいます。大人になり、女を知った駿が、母親と同じように町を捨てようとする後半部分や、彼の心に残り続けた母親の姿に、男にとっての母親とは、そして女とは何だろう?と思わせられ、少しせつなくなりました。
三浦 英崇
評価:B
高校時代、手当たり次第に読んでいた本の中で、ことに気に入っていた作品の一つが、北杜夫の「楡家の人びと」でした。精神病院を経営する大家族が、日増しに激しくなる戦争の中で、次第に崩壊してゆくさまを描く大河小説。連作短編集であるこの作品とは、量的には比較にならないかもしれないけれど、質的には、同じ系列の作品として語られていいんじゃないか、と読みながら思いました。
かたや精神病院、かたや時代遅れのヤクザ一家。どちらも畏怖され、一種の尊敬を集めながら、同時に敬遠され、避けられてもいる人々。そんな環境で育った少年が、血の繋がりのない多くの大人たちに囲まれ、いいことも悪いこともたくさん仕込まれつつ、成長してゆく。あれ? どっちの作品について書いてるのか分からなくなってきたぞ。
「吉田版・楡家の人びと」と言いたくなるような、雰囲気のとてもいい作品です。