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サンセット・ヒート
【早川書房】
ジョー・R・ランズデール
定価 1,995円(税込)
2004/5
ISBN-4152085703
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
桑島 まさき
評価:A
アメリカは広い。どこもがニューヨークやロスのような都会ではない。竜巻の多い地方ではカエルが雨のように降ってきたりする。ことに保守的な南部では、依然として黒人や女性蔑視の風潮が残り差別が根強い。
本作のヒロイン、サンセットはこんな土地で長く夫(治安官)の暴力や浮気癖に耐え忍んできた。ある日、正当防衛で夫をガンで撃ち殺してしまった。姑のマリオンもサンセット同様にDVの被害者で、嫁が自分の息子を殺害し動揺するものの、考え直して嫁を許し、遂には暴君の夫(サンセットの舅)を追い出してしまうのだから爽快だ。物語はこれから。
治安官が自分の妻に殺された。マッチョな男たちは危機感を募らせる。町の権力者だった夫を追い出し発言力をもったマリオンに推薦され、娘を抱え生きていくために治安官になったサンセットは、この地で男達が犯した数々の悪行を発見していく。ここからサスペンスの様相を呈し俄然面白くなっていく。
森の中での「悪」対「善」の壮絶な攻防戦の後、衝撃の真実が明かされるのだが…。勝気だがとりわけ強くもないサンセットが怒りをヒートアップさせ男達に戦いを挑んでいく姿は、も〜最高!
古幡 瑞穂
評価:B−
冒頭、息が止まるようなレイプシーンで開幕。耐えきれなくなった主人公が引き金を引いて夫を殺し、よろよろと外に出るところから物語が動き始めます。この部分だけで、この世界に充満する女性蔑視、黒人差別、貧富の差などなどこの地域、時代に特徴的な背景をどかっと描き出してくれるので一挙にその世界まで連れて行かれます。
で、このサンセットがあるいきさつで女保安官になって大活躍…するんだけど、スーパーウーマンというわけでもなく、見かけのいい男にはころっと騙されたりする人間味も兼ね備えていて、お定まりの単なる勧善懲悪ものではありません。彼女を取り巻く脇役も濃い人ばかりで彼らが一挙に大暴れするのです。この喧噪感が何ともいいんだけれど、最終的には事件の内容よりそればかりが印象に残ってしまいました。
いずれにしても暑い日に読むと余計暑くなる小説な気がします。なんとなくだけど。
松井 ゆかり
評価:C
ゴシック・ハーレクインロマンス。ミステリー的要素、サスペンス色、家族の絆…いろいろなテイストの混在した話だが、とりあえず“ゴシック”と“ロマンス”が2本柱だろうか。
夫による性的虐待、龜に入れられた胎児の殺害事件、黒人への集団暴行などの、本書で起きる事件はとても禍々しいが、登場人物たちの内面の気味の悪さの比ではない。女にだらしのない男に娘ともども籠落される主人公サンセット、サンセットの男に服従しない強固な意志に(実の息子を殺されたにもかかわらず)奇妙な共感を寄せる義母、突然の逆ギレが恐ろしい治安官助手ヒルビリー…なんなんだ、この人たちは。
女性の自立や性的抑圧からの解放を描きたかったのだとしたら、1930年代が舞台では、ちょっと時代を先取りし過ぎのように思われるのだが。現代の話と言われてもほとんど違和感ないけどなあ。
三浦 英崇
評価:C
私がよく遊ぶカードゲームに、「BANG!」という西部劇に題材を採った作品があります。シェリフと副官、ならず者、裏切り者がいて、シェリフ以外は自分の正体を隠し、自分の利益にかなうよう、敵とみなした相手を罠にかけたり、正面から鉛の玉を浴びせたりします。
この作品を読んでいて、かのゲームを想起したのは、自分以外はいつ敵に回ってもおかしくない、そんな苛酷な西部の掟を、私自身もゲームの中とは言え、幾度と無くリアルに感じていたからだと思います。
荒くれ者の夫を嵐の中で射殺し、自ら保安官となった主人公・サンセットの、血で血を洗う凄惨な日々。信じられるのは、自分の腕と才知だけ。騙し騙され、殺し殺されが繰り広げられる中、自分がこの厳しい世界に生き延びる価値があるのかどうかを、絶えず問い続け、答えの出ないままに、次々現れる敵と戦い続ける彼女。
読み終えても、血の臭いが漂い続けているかのような作品でした。