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勝手に目利き
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文庫本班

私が語りはじめた彼は
風の歌、星の口笛
【角川書店】
村崎友
定価 1,575円(税込)
2004/5
ISBN-4048735403
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  古幡 瑞穂
  評価:B
   オビも書評も見ないままで「さて、この本はどんな賞を受賞したでしょう?」と聞かれたら私は間違いなくファンタジーノベル大賞と答えるでしょうね。もしくは鮎川哲也賞とか。ちなみに正解は横溝正史ミステリ大賞です。まずそれがびっくり。
 スケールの壮大さと時間軸の大きさは魅力だったのだけれど、主要人物のことをもっとじっくり書いてくれても良かったのでは?少なくとも私はもう少しあの人たちの物語を読みたかったです。話題のトリック部分ですが、私は途中である先行作品を思い浮かべてしまって結局それに非常に似ていたのです。こうなると「うわっ、そう来たか!」という感激が薄れてしまうのですよね。しかし中盤までは何が起こるのかのワクワク感に引っ張られてのめり込んでいたのも事実。あ、青春ミステリと割り切って読めば良かったのかな。

 
  松井 ゆかり
  評価:B
   突っ込みどころ満載のストーリーを、勢いで結末までもっていった感のある作品。「ザ・ベストテン」に初登場したときのサザンオールスターズをみるような思いである。あまりほめているように聞こえなかったかもしれないが、愛すべき作品だと思う。一所懸命書いた、という感じがすごくよくわかる小説であった。6月の課題図書だった貴志祐介「硝子のハンマー」に続いてこの密室も…。“「本格」を愛する人々”への私の愛もますます深まる。
 本編は言うまでもないが、選評もぜひに熟読されたい。大森望・豊橋由美「文学賞メッタ斬り!」を読んで以来、文学賞の選評にはひとかたならぬ関心を持っていたのだが、期待以上の素晴らしさ。特に綾辻行人・内田康夫両氏の評は必読!

 
  松田 美樹
  評価:C
   あとがきや解説から読む習慣があります。この本で言えば、最終ページにある「第24回横溝正史ミステリ大賞選評」がそれにあたり、勿論そこから読み始めてしまいました。でも、思いっきりネタバレになるようなことが書いてあって、謎が解き明かされる楽しみが半減。できれば、内容に触れていますっていう注意書きがほしかった。
 それはともかく。ミステリなのか、SFなのか、ファンタジーなのか、ジャンルすら定かではない斬新な設定である作品なのは確か。3つのストーリーが同時進行していて、ラストシーンで全部が氷解する仕掛けもよく考えられています。でも、それがあまり納得いかない。書くと、それこそネタバレになるので書けないんですが、彼女は合意の上で××したはずなのに、ああいう行動に出るのはどうしてなんだ?という不可解さが残りました。

 
  三浦 英崇
  評価:E
   読み始めて3ページで、帯を見返しました。「ええと。横溝正史ミステリ大賞受賞作だよね」
 確かに、読み進めてゆくうちに謎は幾つも提示されていきますが、それが果たして「ミステリ」という言葉を前にして、私が漠然と期待してしまうような「謎」の名に値するものなのか、と聞かれると、正直、「この程度で『謎』かぁ?」と問い質したくなるような程度のものでした。
 また、人類滅亡の危機を脱却すべく、恒星世界への進出を図ろうとしている未来、という設定は、SFではそれこそ鉄板の設定なのに、そこから生じている事象の数々があまりに不自然で、読んでいて頭を抱えました。
 3ページ目で抱いた疑問は、終章まで結局、明確な解答を得られないままでした。いったい、何故この作品が「ミステリ大賞」なのか? ある意味、それが一番ミステリのような気がします。期待して読んだだけに、ダメージが大きすぎて、かなりキツい評価になってしまいました。申し訳ありません。