年別
月別
勝手に目利き
単行本班
文庫本班

とんまつりJAPAN

とんまつりJAPAN
【集英社文庫】
みうらじゅん
定価 580円(税込)
2004/7
ISBN-408747724X


  岩井 麻衣子
  評価:B
    世の中は韓国ブームである。が、オリンピックによって4年に一度の愛国心が燃え上がった今、日本にまた興味が湧いてくる。そこで登場するのが本書である。へんなものばっかり集め、取材している著者・みうらじゅん氏が、日本各地で行われる変な祭りをまとめている。何十年、何百年にも渡って受け継がれる変な祭りの数々。そして妙に多い下半身関係。祭りというのは参加している人だけが楽しく、見学者は夜店か花火に興味があるだけだと思っていたのだが、本書に出てくる祭りならば夜店がなくとも、怖いもの見たさでのぞいてみたくなる。あまりの衝撃的映像に「見たい」という気分が湧き上がるのだ。しかしながら怖い。自分の近所で奇祭が行われているんだと知ったとき「知らなくて良かった〜」という安堵感もある。世の中には知らないことが本当に多いなと何だか関心させられる一冊。韓国やら諸外国に行かずとも面白いことが身近にたくさんあるのだ。

  竹本 紗梨
  評価:A
   今年は記録的な猛暑。35℃を越す暑い日に、ごろごろと汗をかきながら床に転がって読むのにこの本はピッタリだった。面白がりの天才みうらじゅんが“とんまな祭り=とんまつり”をただ見るために、ただ写真を撮るために、どんな辺鄙なところにでも出現する、そして驚く、喜ぶ、脱力する。「うーん、どーかしてる」とつぶやきながら、下ネタ、シュールネタ満載の祭をカメラにおさめていくのだ。十分この人もどーかしてると思うけれど。変わったものを見たら、バカにしたり、上から見ちゃいけない。だからこの「どーかしてる」と言いながら、喜んで楽しんでしまうのが祭りの粋な味わい方だ。雑誌連載時のタイトル「わびさびたび」より断然「とんまつりJAPAN」だ!地元にとんまつりがあればいいのに。秋になったら、みうらじゅんが怪しく前列に陣取って、写真を撮りまくっているところを祭に混じって見てみたい。

  平野 敬三
  評価:A
   どうかしてるよ! と日本各地のとんまつり(奇祭)に突っ込みを入れながら萌えているみうら氏が一番「どうかしている」のは自明だが、ここはやさしく見守りたい。とにかく巻頭の写真でまずは思いっきり笑ってくれ。そして本文を読みながら再び大爆笑。そしてその面白さを人に語りながら思い出し笑い。これが本書の正しい読み方だと思うが、ひとつ気をつけなければいけない。それは、読む場所や語る相手を選ばないと自分が「どうかしてる」と思われてしまうこと。でも、笑い祭りや一人相撲なんて、話さずにはいられないよなあ。ちなみに一人相撲の大三島は現在僕が住んでる西条市から車で日帰りできる島。まずはそこを手始めに、と真剣にとんまつり巡りを始めたくなってきている一方、妻の冷たい視線も……。うーん、行かせてくれ、頼むっ!

  藤川 佳子
  評価:A
   「とんまつり」とは「プリティでなんだかとんまな感じ」のする奇祭を表す、著者の創った言葉です。不思議の国、日本で日々行われる「とんまつり」を求めて、みうらじゅんが全国を駆け巡ります。数々の「とんまつり」体験を読んで頭をよぎるのは…、そう、初めて熱海の『秘宝館』を訪れたときのこと。あれは18の夏だったな。女陰や男根のキョーレツなオブジェたちに「キャー、ヤダー」とか言って圧倒されながらも、「あぁ、俺、爪の先まで日本人だね」って感じるものがあったよな。
 忘れかけていた日本人のソウルを思い出させてくれる、貴重な一冊です。

  藤本 有紀
  評価:B
   どんな旅であれ文章にしてみればわりと華やかな海外紀行ものとは違って、真剣に帰りのタクシーの心配をしなくてはならないローカル・ドメスティックジャパーン!! なひとり取材ものならでは、地味な笑いを期待していい本。「"思えば遠くへ来たもんだ〜♪”オレはやるせなくなると、この歌を口ずさむクセがある。」というみうら。「また好きでもないのに武田鉄矢の歌声が頭の中で流れ出した。ひょっとして好きなのか? この歌。」(「尻振り祭りの巻」)、あるいは、「……長髪サングラス、さっぱり年齢の分からぬオレの方が怪人に映っているかもしれない。」(「笑い祭りの巻」)といったあたりの、オレ出し具合がまことに絶妙。飛行機嫌いのため、極力電車・バス・船を乗り継いで目的地に向かわなければならないという条件がチャーミング度を上昇させるだろうこともちゃんと折り込み済みだ。旅先で変な絵葉書セットを買いたくなる。

  和田 啓
  評価:B
   タモリ倶楽部でよくその姿は拝見していたが、はじめて読みましたご存知「マイ・ブーマー」みうらじゅん氏の本。『とんまつり』とは、とんまな祭りの略で思わず、「どーかしてるよ、コレ!」と関西人ならずともツッコミたくなるような摩訶不思議でバカバカしい祭りを指す。決してテレビには映らない(報道できない?)隠れた奇祭を知るとこの人、居ても立ってもいられない性分から、ビデオカメラ&一眼レフカメラを携えて日本全国津々浦々に出没してしまうのである。
 18の祭りが紹介されているが、和歌山は丹生神社の「笑い祭り」、長崎白浜神社の「へトマト」に興をそそられた。一編一編が祭りを巡る旅であり、日本人を写す好個なルポルタージュになっている。あとがきに曰く「行ってみなきゃわからないことがある」。その情熱、執念、突拍子もないパワーに脱帽。思わずこちらも脱力しました。