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ぶたぶた日記
【光文社文庫】
矢崎 在美
定価 500円(税込)
2004/8
ISBN-4334737293
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
岩井 麻衣子
評価:A
作者のエッセイではない。山崎ぶたぶたさんという豚のぬいぐるみが周りの人をほんわかさせていく連作短編集であり、ぶたぶたシリーズの最新刊だ。ぶたぶたさんは一見かわいいぬいぐるみ、しかし妻子をもつ中年のおっさんである。今回義母の代理でエッセイ講座に参加したぶたぶたさんを通して、同じくエッセイ講座に通う人々はそれぞれ何かを学び成長していく。普通に豚のぬいぐるみが生活を営む。初対面の人は抵抗もなしに受け入れるのではなく、びっくりして固まってしまったりするのがリアルでおもしろい。ぶたぶたさんにとっては、目が悪いのでめがね使用してますというくらいに普通のことが、他人にとっては、未だかつて経験したことのないような衝撃なのである。心温まるほこほこストーリーではあるが、ぶたぶたさんがぬいぐるみゆえに苦労し、それが彼の心の成長を促していることがよくわかり、素直にぶたぶたさんと友達になりたいなと思わせるのだ。
斉藤 明暢
評価:B
動き回り、心をもって話す生きたぬいぐるみに実際出会ったとしたら、かわいいとか怖いとか思う前に、かなりシュールな気分になると思う。今まで当然と思っていた日常が揺らぐ感じだろう。
大抵の人は自分の日常を基準にしてしか世界を見ることしかできないけど、そこに「異なる存在」というものが入ってくることで、世界が広がったり、逆に自分自身が当然と思っていた日常を見直したりするきっかけができたりするものだが、ぶたぶたはそんな存在なのだろう。
見た目を除けば、それほど特別なところがあるわけではないぶたぶたは、別に何かをしてくれるわけではない。けれど、出会った人がそれぞれ自分で何かに気づいたり考えたり行動したり笑ったり泣いたりしたら、それが「特別」な物語でなくても、価値がないということにはならないはずだ。
竹本 紗梨
評価:A
外見はピンクのぶたのぬいぐるみ、実は中年おじさん山崎ぶたぶた。動く仕草はとびっきりキュート。ある日、カルチャーセンターの「エッセイ講座」に行くと受講者の中に、このぶたのぬいぐるみが…。ぶたぶたは二人の子供もいて、講座内ではなかなかのエッセイ上手。毎回エッセイの課題に沿って、受講者達のエピソードが語られていく。例えば「二番目に印象に残ったこと」なんてタイトルで(このタイトルって色々と考え込んでしまう!)。ぶたぶたは、ちょっとした悩みを抱えている受講者みんなに優しい。なぜか?それは6話まで、全部読んで確かめて欲しい。ヒントは、ぶたぶたがただのキュートな愛されキャラだからでも、特別な才能があるからでもなく…。ささくれ立った気持ちが、ほんわかと膨らんで行くような物語。
藤川 佳子
評価:B
山崎ぶたぶたは、平凡な中年男性。ただひとつ、ピンクのぶたのぬいぐるみだということを除けば…。人間社会の中で、人間と同じ生活を営むぬいぐるみ・ぶたぶた。そんな彼がカルチャースクールの「日記エッセイを書こう」という講座に参加して…。講師で小説家の磯貝と5人のクラスメイトたちは、この奇妙な生き物に戸惑いながらも、その存在を徐々に受け入れてゆきます。だって、このぬいぐるみってば超デキたヤツなんです。登場人物のそれぞれが抱える悩みや問題も、ぶたぶたと触れあうことで解消され、人々は彼に癒されてしまうのです。ぶたぶたが見せる周りへの気遣いや、発する言葉はちょっと優等生過ぎ? いやいや、幼い頃、ぬいぐるみはいつも側で私たちをそっと慰めてくれる存在だったはず。ぬいぐるみにもし命が吹き込まれたら…。私たちの思い描く生きたぬいぐるみこそ、ぶたぶたそのものなのです。
藤本 有紀
評価:B
バレーボールぐらいの大きさのぶたのぬいぐるみ、山崎ぶたぶたが主人公の大人向け“群像”ファンタジー。カルチャースクールの『日記エッセイを書こう』という講座を受講する、ぶたぶたを除いた5人と講師ひとりのドラマが全6回の講座に合わせて語られる。だから群像なのです。
ぶたぶたは人間の妻子ある中年男性である。ぬいぐるみに人格? と最初はだれでも信じられないが、ぶたぶたを認めることのできる者の悩みは確実に軽くなる。非常に寓話的だし毒気はないし、例えていうなら「仲良し家族の家にいるような居心地の悪さ」のようなものを感じるのではないかと心配したが、そうでもないではないか。今まで気付かなかったが、好きなのだろうか私は、寓話(たぶん教訓が好きなんだと思うけど)。
ダイエット体験記ではないのでご注意を。