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終わりなき孤独

終わりなき孤独
【ハヤカワ文庫HM】
G.P.ペレケーノス
定価 1,155円(税込)
2004/8
ISBN-4151706593


  岩井 麻衣子
  評価:A
   ワシントンに住む探偵デレクはフットボールチームのコーチであり、犯罪の多発する地域で子供達に人生の道筋を示す役割も担っている。ある日チームの少年が大人の巻き添えで射殺されてしまう。強く憤り犯人を追い詰めるデレク。しかし、実は麻薬界のボスの息子であった少年。犯人の始末は普通にはつけられなくなっていった。デレクは青少年に慕われ、地域に貢献するすばらしい大人である。依頼で、家出し売春で生活している少女を連れ戻すこともある。チンピラにしり込みすることもなくマフィアに丸めこまれることもない理想の探偵さんなのだ。しかし何故か彼はマッサージパーラーに通うことをやめることができない。心から愛する彼女がいるにも関わらず。風俗店に通うことが悪事だとは言わないが、女子的にはちょっと許しがたいものがある。100%潔白というわけでもないのが人間的でいいかもしれない。しかし、頼りがいがある人だと思ってたのに、風俗の匂いがしたら、マイナス1億ポイントくらいになってしまうのだ。

  斉藤 明暢
  評価:C
   どちらかというと淡々と描かれる日常と暴力、その中でどこか危うさを持って行動する登場人物たち。この感覚、何かに似てるなと思ったが、何となく北野武監督の映画に通じるモノがあるような気がする。ハードボイルドと呼ばれる作品は、やるせなさと暴力がついてまわるものだから、そういうものかもしれない。
 だから、終盤に至っていくつかの結末が描かれても、実は本質的な所はなにも解決していない、それでも生きていかなくてはいけない登場人物たちの姿は、結末に至っても、もうひとつすっきりしない、そんな雰囲気なのだった。

  藤本 有紀
  評価:B
   ワシントンDCで探偵事務所を営むデレク。人種差別と貧困から、黒人の子供たちは麻薬や売春と隣り合わせ。子供にとっては相当タフな環境だ。そんな町の状況を憂うデレクは、少年フットボールチームのコーチをする。チームのメンバー・ジョーに風体の悪い叔父がいるのに気付いていながら、ジョーを守れなかったという痛恨の思いがデレクを動かす。子供に対しては「まっすぐに生きなきゃいかんよ」といっておきながら、デレク自身はマッサージパーラー通いを奇妙な理屈で正当化してきた。が、男としてやっと覚悟を決めたところにアル・グリーンの甘ーい歌声が流れ……、おしゃれでしょう。音楽あり、車あり、フットボールあり、セックスありのハードボイルド探偵小説(結構オーソドックス)。
 2002年の作品の文庫オリジナルという新鮮さもあって、描かれる黒人風俗がフレッシュ。一例、ジョージという名前は時代遅れ。じゃあかっこいいのは、ジョシュアとか? ジェローム?