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庭の桜、隣の犬
【 講談社 】
角田光代
定価 1,680円(税込)
2004/9
ISBN-4062125897
朝山 実
評価:A
宗二は夜帰るのが大変だからと都内に安アパートを借りた。妻の房子は何かあるのではと疑う。宗二に不満はない。隠れ家を欲しいと思っただけ。しかし「ない」ことが夫婦の最大の問題だった。会社のOLとのなんでもないあることを妻には言わなかったことが危機を「ある」ものにしていく。
ヒマをもてあました夫婦が何かを待っている。レミの存在は恰好の火薬ではあるのだが、作者は不倫どろどろ物語に流そうとはしていない。そこが新鮮だ。
枝葉の逸話だが、宗二と彼の母が、昔一日だけ飼った犬について話す場面がいい。ペットショップで駄々をこねる子とケチな亭主の間で板ばさみとなった母は、何十年経ってもその日のことを記憶している。息子はまったく覚えていない。どんなに親密だろうと人はすべてを共有できるものではない。
そして日は変わり、夫婦の場面。「なぁ、ジョーが最終回で闘った相手ってだれだっけ」と宗二が訊くと、妻はすかさず「ホセ・メンドーサ」と答える。なんだかホッとする。
安藤 梢
評価:B
他人がどんな生活を送っているのか、気になるものである。自分の家族は普通なのか? 他の家ではどんな会話がなされているのか?そんな疑問を弟夫婦にぶつけるあたり、主人公が妙にリアルで生々しい。ふわふわと生きているようで、その根にはべったりと悩みが張り付いている。夫婦二人で家庭を作りあげていくという発展的な関係が築けないことで、行き場のない不安が漂う。よくある今どきの夫婦像として片付けてしまうにはもったいないくらい、登場人物の個性がいきいきと(けっして発展的ではないが)魅力的に、そして丁寧に描かれている。その中でレミの存在が際立って異質である。変な子、と言ってしまえばそれまでだが、主体性のない何となくぼんやりとした夫婦の間に入って、唯一現実的なエネルギーを振りまいている。彼女だけが、熱を発散させて生きているように見えるのは気のせいだろうか。鬱陶しいくらいの存在感である。
磯部 智子
評価:B
ヘンチクリンかつリアルな家族の肖像。主人公の房子と宗二は30代の夫婦、房子の両親は、新興住宅地に買った一戸建てに「桜の木」を植え、ひたすら家庭や幸福を信じようとしてきた世代である。房子達はそれを信じられないまま、頭金の大半を親に頼りマンションを購入し家族・家庭を擬態する。犬を自分で飼うことは煩わしさの数々を伴い、眺めるだけの「隣の犬」は借景感覚。そんな毎日の中、宗二が自分だけの四畳半アパートを借りる。あくまで仕事の便宜上という建前だが35年ローンのマンションより妙に居心地が良い。「いくとこがないんだよ」何もかもあって当たり前からのスタートの中流遊民は何一つ自分達の強い思いで築き上げてきたものが無く家庭すら居場所ではない事に気づく。フリをする擬態をする、案外そういうところから始まるのだと思うが、それを実態のあるものにするには何が必要なのか? 多くの人間が 何かに依存したり役割を演じたりして生きている、でもいつかそのツッカエ棒が無くなった時、自分自身や他者としっかり対峙してこなかった事のツケが回ってくる、そんな恐れを抱きながらも答えが見つからない毎日である。
小嶋 新一
評価:B
どこにでもいる普通の人間なりの、普通の人生を歩む房子と宗二。その生活に、宗二の母親や会社の一風変わった同僚レミが絡み込んできて、二人は迷走状態に……。ちょっとしたハプニング、けれども結構でかいハプニングが、平凡な生活に割って入る。
そもそも主人公の宗二が「人生投げやり、何かあってもどこ吹く風」人間なのが嬉しい。やる気のかたまりで次々と苦境を切り抜けていくヤツの話は幾らでもあるけど、こんなに人生投げてるのが主人公というのも珍しい。それだけで楽しくなってくる。オレと一緒だ、と。登場人物設定と同じくストーリー展開も自然で、無理やり作られた感がなかったのにも、好感が持てた。読み終わってみて、気持ちよかったです、ハイ。
ついでに、最後におまけを。冒頭で房子が口ずさみながら、なんの歌だっけとつぶやくのは、ローザ・ルクセンブルグ「不思議だが本当だ」ですよね、歌詞がちょっと違うけど。角田さん、違いましたあ?
三枝 貴代
評価:B-
これは、よくできた世代小説なのかも。60代の男女は、若者たちよりも豊かにくらし、子供にも気前よく援助できる。にもかかわらず、若い頃の貧しい生活の余韻なのか、妙に貧乏くさい。女は老いてなお少女的な夢を見続け、男は妻の言いなりだ。30代の男女は、仕事観も生活観も地に足がついていない。しっかり働いているように見える者も、生活に必要のない物を売り、生活に必要のない技術を教えているにすぎない。20代の男女は、いずれ自分には大きなことができると信じている。そのために努力しない者までが。
実に正確な描写だ。特に会話文は、ここまで見事に現実を再現している小説は、ちょっと他にお目にかかれないほど。そのあまりに見事な複写技術にくらべ、この小説、だからどうなのかという部分は、ちょっと弱い。この腕前をもう少し有益な方角にいかせないものなのかなと思ってしまった。
寺岡 理帆
評価:B+
「ゼロのものにゼロを足してもゼロじゃん? 何か、私たちが何をやってもゼロになる気がするんだよね」
特に強い気持もなく結婚したふたりには、結婚の意味がわからない。そんなものだからと結婚して、そんなものだからとマンションを持って、そんなものだからと生活を共にする。二人の「未熟」を強く感じた。それは今の時代、誰にでも、どこにでもある未熟なのだろうか。たくさんの選択肢があるように見えて、どれが正しい道かもう誰にも決められないこの時代、確固として人生を歩んでいくのは難しい。でも、それにしてもふたりは未熟すぎないか…。誰かが自分の役割を決めてくれた時だけ、房子が心とは裏腹にスラスラとドラマのような台詞を話すことが出来るというのも、なんだかやりきれない。
ただ、読後感は悪くない。ふたりはこれから成長するのかもしれないし、しないのかもしれないけれど。
福山 亜希
評価:A
夫婦の絆が乏しい二人。房子と宗二の関係には、どこか学生気分が抜けきらないようなところがあって、夫婦らしさが漂ってこない。仕事が遅いという理由で外に家を借りる宗二は、家庭から避難できる場所が欲しかっただけのようであるし、そんな宗二をずるいとは思えども嫉妬心などは湧いてこない房子も、まだ自分の居場所を妻という立場に見出すことが出来ていないようだ。
房子は子供の頃から抜群の記憶力をもっていた。彼女は膨大な量を記憶することが出来たが、記憶した物に意味を持たせることはしなかったようである。意味の無い物に囲まれて大きくなった彼女は、自分の本当の気持ちが何であるか、掴むことが出来ない。夫の浮気相手に対しても怒りを覚えず、ただ世間一般の「浮気相手を罵る妻の言葉」を倣って使っているだけだ。そういう世間一般の人間を演じることで、自分が人並みの尺度を持った人間であることを証明しようとしているように思えた。これから二人がどんな風になるのか、良い方にも悪い方にも受け取れるラストが気になる。