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└2001年5月
夏の名残の薔薇
【 文藝春秋 】
恩田陸
定価 1,950円(税込)
2004/9
ISBN-4163233202
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
朝山 実
評価:B
彼女は殺されたはずじゃなかったの? 章が改まり、語り手の視点が変われば、シナリオを書き換えたかのように「事件」はなかったことになっている。当初は辻褄を考えると頭が混乱します。
毎年、富豪を父にもった三人のオババ姉妹が親しい人を招いてパーティを催していた。最初の山場は、近親相姦の関係にある姉弟と夫との対面だ。弟の部屋に行き、関係を解消するなら何もなかったことにしてもいいと、夫は話を切り出す。しかし━━。夫が名指ししたのは弟の名ではなかった。びっくりしたのは弟だ。姉の心を一人占めしているつもりでいた。その自信が傾いでしまう。
彼ばかりではない。交わされる「秘密」の暴露に納得しかけた途端、予想外の「真相」が別人から打ち明けられる。三人のオババ姉妹は嘘話をすること自体を楽しんでいて、これには深い理由が絡んでいるらしい。半生を改ざんしまくって話す叔母の福々しい顔に注目です。読者として、もつれた糸を一本にしたいところだが、そんな常道をぶちこわすラストには「降参」というしかありません。
安藤 梢
評価:B
一つのストーリーが少しずつ形を変えながら、より深い謎へと導かれていく。次々と殺人事件が起こっているようで、実は何も起こっていなかったかのように次の変奏へと移っていく。最初「あれっ?」と思うが、その仕組みに慣れてくるとだんだんと心地よくなってくる。そうやって最後まで謎を謎として受け入れながら、終章へと到達するのである。
語り手が次々と変わるため、登場人物それぞれの内側と外側が実にリアルに描かれている。人から見られる自分と、自分で思っている自分は大体において温度差があるものである。そのへんの人物造形は素晴らしい。登場人物の頭の中の世界と物語中の現実世界の境目が極めて曖昧で、読めば読むほど混乱する。最後には謎にすっぽりと包まれ、一つ一つの答えなど見えなくなってしまう。一体謎は何だったのか?本当に起きたことだったのか?分からない。読み終えると、一つの劇を見終わったような印象が残る。
磯部 智子
評価:A
恩田陸の創造する人物は、ギャラリーを強く意識し、相手の期待に答えるような仮面を被って演技をしているように思える。それは別に媚びている訳ではなく、本心を覆い隠す為であったり、時に相手の偏見を逆手にとって面白がって居るようにさえ感じる。それが存分に生かされたのが本作である。章(この作品では変奏)ごとに語り手が交代し、ストーリーを引き継ぎながら語られる殺人事件は、視点のみならず被害者までもが変わってしまう。舞台は晩秋、国立公園内にあるグランドホテルを借り切る大富豪の老三姉妹のもと選ばれた人々が例年のように集う。その「贅沢な監獄」で繰り広げられる複雑な人間模様、近親姦、同性愛、血の秘密は耐え切れないほどに人々の心の中で膨張していた。その緊張感の中、時おり挿入される「去年マリエンバードで」が、意外とも予想していたとも言えるラストへと導いていく。巻末に収録された作家のインタビューも興味深い、親が転勤族だった為「友だち付き合いもたいへん」で目立たないようにしながら「最初からいたような顔をしてそこにいる」そんな子供時代の居場所の無い感覚が、揺らぐ記憶、再構築する過去といった印象を持つ作品の所以かと想像してしまう。
小嶋 新一
評価:D
沢渡グループを切り盛りする老三姉妹が、関係者を集めて山奥のホテルで主催するパーティー。もつれる人間関係と、渦巻く憎悪。あばかれる過去の秘密。吹雪に閉ざされたホテルを舞台に、お決まりのように殺人事件が起こっていく。 吹雪の山荘といえば、昔からミステリの定番中の定番ともいえる設定だが、あえて作者がそこに挑むからには、どんな仕掛けが用意されているんだろう、と思ってページを繰ったところ……章が変わるたびに語り手である「私」が交代する一人称スタイルで、物語りは綴られていくが、語り手が入れ替わるたびに、事実と妄想が入り混じり、読み手である僕にとっては、何が真実で何が虚構か、その境界があいまいになっていく……。
「演劇的で実験的な物語」を、という作者の意図は実現されているし、そうした手法を否定しはしないが、ミステリとして見た時に、小説中の設定や登場人物の行動にけっこう無理が見られ、僕としては納得感が得られなかった。「誰も出入りできない閉ざされた場所」の象徴であるはずの「吹雪の山荘」も、あくまで雰囲気を出すための舞台として使われただけで、その必然性もなかったし。ちょっと、期待とすれ違ってしまいました。
三枝 貴代
評価:B
華やかで謎めいた年上女性を中心に年に一度集まる人々という趣向は『木曜組曲』と同じ。『木曜組曲』では亡くなった女性作家一人が中心だったのに対して、本作は嘘つき三人姉妹で、人数分パワーアップしたという感じでしょうか。音楽に関連するタイトルは、今回は章頭につけられています。それは、変奏曲(主題を少しずつ変化させてゆく演奏形式)。各章ごとに語り手がかわれば事実も変化し、章末で死んだ女は次の章では健在。それが記憶の改変をテーマとする映画『去年マリエンバードで』と並行して語られます。(ただし、マリエンバードに関する引用文は、とばして読んでも大丈夫。)はたして死んだ女は誰なのか。読者はこの興味で最後までぐいぐいひっぱられていきます。複雑に組み立てられた小説ですが、キャラクター造形がしっかりしているので混乱せずに読めました。恩田さんの小説にしばしば見られる食事や本のタイトルに関するどうでも良い無駄話も、今回はすっきりと刈り取られていて、うざくありません。演劇的な独特の洗練を感じさせる美しい作品にしあがっています。
にしても、女性ミステリ作家はみんな、ホモネタ、好きっすね……。
寺岡 理帆
評価:A-
各章が「主題」と6つの「変奏」と名付けられ、一つの「主題」が少しずつ異なった曲相で繰り返し、少しずつ時間を進めながら描かれる。その趣向に最初は惹き込まれた。間に引用されるとある映画の原作(?)も不思議な雰囲気を盛り上げる。けれど、最後の章ですっかりがっかりしてしまった…。いや、ラスト自体が悪いわけではない。むしろこれしかない!というラスト。でも、そのラストを演じるキャラクターが役者不足なのでは…。
桜子のキャラもなんとなく変容している。「変奏だから」と言われると返す言葉もないけれど、でも、最初の頃の桜子はもう少し魅力があったと思うわ! さらに天知先生も全然別人。あの印象的な言葉遣いが最初だけってのはナゼ…?3姉妹の過去の物語も、謎に包まれている時はホラーっぽくてゾクゾクするのに、蓋を開けてみるとなんだか…。まあ、恩田陸は蓋を開けるまでのゾクゾク感が素晴らしいんだけれど。
福山 亜希
評価:B
先月の課題図書にも指定されていた恩田陸のミステリー小説。前回の夜のピクニックが思春期の高校生をあざやかに表現した爽やかな物語だったので、同じ作者によるミステリー小説とはどんな趣向のものなのか、興味深く読み進めた。
夜のピクニックの主人公・貴子と融のイメージが私には強く残りすぎていたので、世間と隔離された豪奢なホテルに集う、陰のある登場人物たちに、私は少し違和感があった。桜子と時光の美しくて秘密の多い兄弟も、ホスト役である三人姉妹の不気味さも、夜のピクニックとは随分世界観が異なる登場人物達である。
章ごとに物語の視点は別の登場人物へと移り、それぞれが主観的な視線で語るので、一体どれが真実なのか、読者は翻弄されてしまう。主観的な視線で語られると物語は不気味さを更に増し、私は登場人物たちと一緒に、舞台のホテルに閉じ込められたような気分になってしまった。元々怖い本が苦手なこともあるが、前作があまりに清く美しい青少年の物語だったので、そのギャップに最後まで戸惑ってしまい、前作の雰囲気が恋しく思った。