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背く子
【講談社文庫】
大道珠貴
定価 650円(税込)
2004/11
ISBN-4062749270
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
岩井 麻衣子
評価:B
どうしようもない親を持った春日の3歳から6歳の日々が、春日自身の目を通して描かれる。強いものには頭を下げ、弱いものには当たり散らす父親と、頼りになるんだかどうだかよくわからん母親の作り出す狭い生活の中でジュクジュクと考え淡々と生きていく春日の視線がとても嫌な物語である。周りの大人もお手本になるようなイケてる人は誰もでてこない。全員がつまらない人間で自分のことしか考えおらず、妬みや争いだけの人生を送っているのである。こんな人々の間で暮らしている春日がだんだん気の毒になり、早く読み終えたくてどんどん読むテンポが上がっていった。春日の感情というより日常が淡々と描かれるので,文章に妙にスピード感もあるのだ。結局何ということもなく春日の日々は続いていくのだが、絶望感があるわけでもないラストに首をかしげてしまう。嫌な話なのに未来に光が見えるのは何故だ?私自身の願望なのだろうか。
斉藤 明暢
評価:A
小学生にもならない頃、自分は周りの世界をどう見ていただろう?本書を読んで共感してしまうのは、「世界」が生きて蠢いているように感じ取っている感覚だ。天井の模様、家の中の特別な場所、脈打ちながら迫ってくる夜の裏山…。多分その年代の頃は、今よりももっと濃密な世界と時間を感じていたのだろう。
幼児の頃の周囲に対する怒りや苛立ちは、ぼんやりとした印象しか残っていないが、純粋無垢な存在でなかったことだけは間違いない。ただ感情の湧き上がり方がストレートで、簡単に納得しないだけだ。そんな子の目で見据えられた大人は、主人公の父親のように虚勢を張っていても、みなバカで軟弱で見栄っ張りなだけの存在だ。そしていつかそんな哀れな大人を、哀れとさえも感じなくなった頃、いつのまにか似たような自分も大人になってしまっているのかもしれない。それは仕方ないことなのかもしれないが。
竹本 紗梨
評価:B
福岡で育つ少女、春日の目から見た世界を描いているが、こういう話を書くパワーの源は何だろう?嫌味でもなんでもなく、ただただ単純に聞きたい。それだけ熱心に書き付けられているし、とても執拗なパワーを感じる。作品がすべてその作者の実体験から出ているものだとは思わないけれど、この細密な、美しくはない、大人に追い詰められる世界は読んでいて胸が詰まるようだった。賢い子供は、「無邪気」ではない子供は、ずいぶん傷つくし、苦労が多い子供時代を過ごす。「大人はどうして何も分かろうとしないんだろう」そして「大人になったら私もそうなるんだろうか」という思いだけは子供時代、はっきりと記憶に残っている。そしてその予想通り、私もそんな大人になった。子供は子供としてしか見れないのだ。だが、そんな子供が、少しずつ息をしやすい場所を見つけていく。春日が大きくなって、そんな場所を見つけられればいい、と思った。
平野 敬三
評価:B+
往々にして父親との思い出はあまり楽しいものではない。まあ父親などそういうものだし、いくら僕が深刻な顔で「うちの親父さあ」と愚痴ってみても、友人には笑い話としか聞こえないのである。本書もそういう類のエピソードにあふれているが、こ、これは笑っていいのか、と、(まあすでに笑ってはいるのだが)ためらってしまうほど悲惨な家庭だ。家庭というのだけでなく、幼稚園や親戚や友人関係やとにかくあらゆる環境が悲惨なのである。とにかくダディ(父親のことです)のキャラが最高だが、あまりに度が過ぎていて、読んでいて少し辛くさみしい。子どもの春日がかわいそう、というより、ダディという人間がかわいそう。辛い痛い。だから、最後に一家が幸せそうに見えた時、なんだかわからないがほっとした。変な言い方だが、これまで小説を読んでできた中で、一番「いい家族」だなと思った。楽しくないはずの思い出がいつまでもいつまでも胸に残ってしまう理由が分かって、ちょっと胸が苦しくなった。
藤川 佳子
評価:AA
この物語は、大人たちが子供たちへ勝手に貼り付けた「純真・無垢」などというイメージをビリビリと引きはがし、暗く、ジメジメして、残酷で、恐怖に満ちた幼き者の世界を見せつけてきます。
物語の始め、主人公・春日は三歳の幼女として登場します。夫婦の夜の営みにあえて子供を参加させちゃうような変な家庭で育ったからか、この少女はクールで、ある意味とても聡明です。大人が言っていることや、やっていることはだいたい分かっている…。大人たちは春日を“子供らしくない”と、変な子扱いする。けれども、春日の持つ観察力、直感力、理解力、感受性は子供なら誰もが持っているごくごく普通の能力だと思うのです。本書を読むと、あの頃の感覚がまざまざと蘇り、子供でいることの辛さが昨日のことのように思い出され、苦しくなります。また、子供を侮っちゃイカンと改めて思いました。
藤本 有紀
評価:B+
口当たりがいいか悪いかは問題ではない。どうしようもなく口当たりの悪い物語が魅力的だということはもちろん、ある。そう改めて思った。春日は自他共に認める、大人の顔色をうかがう子供らしくない子供。周囲の人間のよこしまさを鋭く感じとってしまい、心安まらない日々を過ごす。物心つくかつかぬかという年齢である。十八で年老いたマルグリット・デュラスどころではない。苦悩は人を老いさせるだろうが、それにしても犬のチロにしか警戒心をほどけないというのは……。苦悩の最大の種は父。自尊心は人一倍強く親としての道徳心に問題がある。根本的に自分に自信がないため攻撃的になりがちな父の言動は滑稽ですらある、と春日は見ている。産後の見舞いに自作のぬり絵を持参したくだりや、手紙を出そうと無邪気にも自分で封筒と切手(!)を作った春日に対する母の無関心にことさら胸が痛むのは、あるいは私の長女性と反応したためか。大人ばかりか子供の邪悪さを照らし出した幼稚園男児と〈いけにえ〉のシーンには最高度の戦慄を覚えた。この胸の痛み、この戦慄。これらを掻き立てるパワーこそ大道の真骨頂だと思う。柳美里をも凌ぐのではないか。
和田 啓
評価:C
九州は、男の子を大切にする風潮が色濃く残っている土地だ。寝る間際、電気を消すまでが女の仕事だと云われ育てられた福岡人をぼくは知っている。本作はやたら男を立てるイメージの強い博多を舞台に、怜悧さと多感さを備えた少女(幼児です)が「世の中を見てみたら」という着眼点が面白いと思った。
子どもは、大人の遥か想像以上に感受性が豊かで嬉しさが大きい分また落ち込みも激しい。大人並に表現能力が高く、気持ちを伝えることができれば世界はそれこそ変革されるであろうに。どうもこの手の作品を読むと「こんなこと子どもが言うか〜」とか、「ありえないじゃん」と決めつけがちだ。ハリウッド映画で子役が主人公の映画にあたるとファンタジーだから許してしまう心に似ているような。だけど瑣末な事象から長編を描き切る筆者の力量に思いを馳せればあながち笑うこともできなくなった。