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柔らかな頬
(上下)
【文春文庫】
桐野夏生
定価\620
2004/12
\590
ISBN-4167602067
ISBN-4167602075
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
浅井 博美
評価:AA
こんなに読後感が最悪な小説に出会ったことがあっただろうか。真夜中に上下巻すべてを読み終えたのだが、ベッドの上でまんじりとも出来なくなってしまった。非常に恐ろしい。私はあまりミステリーと言われるジャンルのものは読まない。トリックのために人間関係などが構築されているようで、薄っぺらだと感じてしまうものが多いからだ。しかし、一体本書はミステリーなのだろうか?純文学と称されるものでも、こんなに感情をかきむしられるような気持ちになったことはない。ストーリーとしては、元来仕事上の知り合いだったが不倫関係に陥った男女が、お互いの家族を連れて共に北海道にある男の所有する別荘に出かけるが、突如として女の長女が失踪してしまうという非常にシンプルなものだ。登場人物も少ない。密室のトリックのようなあっと驚く仕掛けも出てこないし、灰色の脳味噌を持った名探偵も登場はしない。だが、後々捜査に協力する末期ガンに冒された元刑事の生き様は壮絶だった。こんなに苦しい死に際を描いた小説があっただろうか。しかし私が本書を再読することはないと思う。ものすごい小説だと頭ではわかっていても、感情が拒否するという感覚に始めて襲われてしまったのだ。
北嶋 美由紀
評価:B
何となくスッキリしないけど、こんなミステリもアリか…… 愛人のためなら子供を捨てても構わないと思った翌日、五歳の娘が失踪する。そして四年後。 本来失踪事件解決が本流であるべきなのに、流れは娘を捜し続けて”漂流”する母カスミの姿と、目前に死期のせまった元刑事内海の生き様、そして事件をきっかけに変化を余儀なくされた関係者へと移ってゆく。犯人候補(?)はたくさんいるのに真実は妄想や夢の中へと流れてゆく。 同じ母親として、娘が突然いなくなったとまどいと悲しみはわかるし、何年たってもピリオドを打つ気になれない気持ちはわかるのだが、いまひとつ感情移入ができない。全体が正に霞の中にいるようにボンヤリしてしまう感があるのは、カスミという女性の生き様のせいなのだろうか。
久保田 泉
評価:AA
99年に初めて単行本で読んだ時は、深い穴に落ち込んでいくような、印象的なラストに呆然とし、これは女性にしか書けない小説だと思った。今回再読して、これは性差などは関係ない、桐野夏生にしか書けない小説だと気付いた。小説としての濃度、レベルの高さは言うまでもない。読了後、誰もが自分の心の中に棲む魔を、探さずにはいられなくなる。夫の友人・石山と逢引を重ねる森脇カスミ。その石山の北海道の別荘で、幼い娘が謎の失踪をする。石山の為なら子供を捨ててもいい、とさえ思ったカスミは罪悪感に苦しみ、一人で娘を探し続ける。推理小説としても、十分想像力をかきたてられる面白さ。そこに石山、夫、カスミが捨てた北海道の両親、途中から娘を一緒に探す事になる元刑事の内海らの人生が絡み、ラストまで一気に読者をひきこむ。ダークというよりは、ディープ。救いがないというよりは、容赦がない。安易な結末を提供しない、性根の据わった本物のピュアな小説だと思う。
林 あゆ美
評価:C
幼児失踪事件を軸に周りの大人たちの傷口に塩をぬるように物語は進行する。罪悪感に苦しむ母親の心情がそれはそれは細かく執拗にページを埋め、重い息苦しさは物語から消えない。歳月が流れても、母親だけは娘をあきらめず一人で探し続ける。娘はどこ、娘はどこ、と。当然、今までの生活はその日を境に一変する。変わらないのは、娘がいなくなったこと。その空白は年月を経ても埋まらない。絶望、空虚を情け容赦なく描いている。物語の現実は、終始一貫きびしく、事件は解決につながっていかない。読んでいる間中、長い長い、カスミ(母親)の悔いを聞かされているようだった。カスミは生まれ育った場所から18歳で家出し、職場恋愛で結婚。少しずつ自分の望んだ人生を構築しつつあったのが、娘の失踪でいっきに崩れる。そして崩れた人生をたてなおすために、今いる立ち位置から離れ、娘を捜しながら自分をほじくり返す。しんどい作業もまた、生きる業なのか。
手島 洋
評価:A
幼い娘の失踪。娘を探し続ける母。捜査を申し出る元刑事の内海。いかにもミステリーらしい設定だが、この作品も(『煙か土か食い物』同様)ミステリーではない。
娘の失踪をきっかけに夫や愛人との心のずれを覚え、忘れていたはずの孤独感を取り戻してしまう母、カスミ。娘の突然の失踪という不条理な現実をたたきつけられた彼女は、自分の中に失踪の理由を求め、残されたもう一人の娘、夫、愛人とは自分にとって何なのかという疑問にとらわれる。不治の病にかかり、仕事をやめざるをえなくなった元刑事の内海も、死とは何なのかという疑問にとらわれる。話は事件の謎を探る二人を中心に進んでいくが、あまりにも大きな絶望を抱えたふたりをひたすら丹念に描いていく作者の力強さにはただただ圧倒されるばかり。参りました。
山田 絵理
評価:A
自分の力ではどうしようもできない困難にぶつかった時、人はどうするのだろうか。そういう状態の人々を、作者は冷静に見つめている。読者にも感情移入を許さないような、淡々とした客観的な描写が続く。 カスミと夫の仕事相手である石山は不倫の関係にあり、互いの家族を連れて、北海道の石山の別荘に行く。そこで隠れて逢引をする二人。直後にカスミの娘が失踪し、見つかることなく4年もの月日が流れる。カスミ以外の者達は不幸な事件を過去のものとして現実を生きていくが、彼女はそれを拒否し一人で愛娘を探し続ける。そこに再捜査を申し出た、がんで余命幾ばくも無い刑事の内海。出世のために事件を解決してきたような彼も、自分が死に近いという事実を受け入れることができずにいた。 自分の求める答えを探し続けながらも、現実と必死に折り合っていこうとする二人の姿が、とても痛々しい。奇妙な関係の二人の間に流れる感情はいったい何なのだろうか。私は二人にどう言葉をかけていいか、わからないでいる。
吉田 崇
評価:C
最初に白状しちゃうと、この著者の作品は初めて読むのです。ドラマで『OUT』を見た時に、随分えげつない話だなと思い、きっと原作読んだら気持ち悪くなっちゃうだろうなと考え、今までご縁がなかった。ですから、少々的外れなことも言うかもしれませんが、ご勘弁のほどを。
この作品はミステリーである事を止めようとし続けているミステリーです。内容的には、失踪した娘を母親(カスミ)が捜し続けるという話なのです。巻頭に事件を要約した新聞記事めいた文章があるのですが、ストーリーの骨格は本当にこれだけです。これに肉付けしていく作者の手腕には、鬼気迫る感があります。どうしてか、カフカっぽい気がしてなりません。
リアルに書き込まれた各登場人物の情動を三面記事レベルにまで削ぎ落としていくと、最後に残るのは不条理なまでに滑稽なカスミの「自分は生き抜いていく。」という諦念だけで、読者が期待する事件の真相も曖昧なまま、ただどんよりと重たい幕引きだけがあります。
心が元気な時に読まないとちょっと辛いな、それが素直な読後感です。