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ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月

ブリジット・ジョーンズの日記
きれそうなわたしの12か月
(上下)
【ヴィレッジブックス】
ヘレン・フィ−ルディング
定価\735
2004/12
ISBN-478972431X
ISBN-4789724328


  浅井 博美
  評価:B
   最近ネット上や女性誌などで盛んに繰り広げられている「日記風読み物」は大抵、「アタシ」と「ダーリン」や、「アタシ」と「愛猫」や、「アタシ」と「お気に入りレシピ」だったりと半径5m程で事足りてしまっている。「アタシ」と「X」の関係は常に「いけてるアタシ」と「ステキなX」という、ある意味様式美で固められていて、しばしば食傷気味になる。それに比べて、ブリジットは支離滅裂だ。「今朝はジムに行く予定」と記してはいるが、実行された日はゼロだったし、ステキはずのダーリンがトーリー党支持者だと知り、ショックのあまりはちゃめちゃな言動をとったり、ブリジット自身に大変な災難が降りかかっているにも関わらず「ダイアナ妃の死」というニュースに直面し自分のことは放り投げ、ダイアナ妃への思いに数ページを費やし止まらなくなってしまったりする。支離滅裂かもしれないが、実は彼女の世界はもの凄く広い。思ったこと、起こったことを次々に書き殴っていく様は、誰の目も意識していない日記ならではのおもしろさにあふれている。世界中の女性の代弁者とされるブリジットだが、日本にはあまりいないようだ。

  北嶋 美由紀
  評価:C
   読みごたえはない。感動もない。 ロンドンに住むブリジットは30歳すぎの独身、いわゆる負け犬である。関心事はダイエット(努力の様子はないが)とやっとゲットしたのに友人にとられそうになっている彼氏を何とか自分のものにすること。自称プロのジャーナリストだが、大して仕事ができるわけでもなく、計画性もゼロ。困った時は恋愛ハウツーものや自己啓発本、友人達の無責任な発言に頼る。落ち込みも早いが、立ち直りも早い。しかも苦労が身に付かないタイプ。そんな彼女のおマヌケでトホホの一年間の日記(しかも分きざみ)であり、時には腹立たしく、読んでいるのがバカバカしくさえなってくる。しかし、彼女の底抜けの明るさと可愛らしさでイヤな読後感はない。彼女の両親も?!なのだが、お互いを思う家族愛は十分である。何より、子持ち、既婚未婚の友人達の間に漂う微妙な女性感情は万国共通なのだと実感。ダイアナ妃の急死もおりこまれ、一般英国人の王室に対する感情や政治への関心もうかがえる。

  久保田 泉
  評価:C
   映画にもなったブリジット・ジョーンズの日記の続編だ。念願の堅実な彼氏も出来、落ち着いたかと思いきや、ブリジットまたまた炸裂。にしても、ブリジット・ジョーンズの日記ってホントに日記調なんですね!それも時間単位だ、忙しい。日記だからか、ぎゃああ〜、がーんが連発。一応30代、一人暮らし、マスコミ勤務なんだが、日記のノリはほとんど10代。まあ10代はこんなに自己啓発本は読まないだろうが。恋人のマークとラブラブのはずが、お約束のライバル登場。マークの言動に一喜一憂し、甘いヴァレンタインを夢見る。あらかじめ映画化を想定したとしか思えない、ひとまず笑うしかないエピソードいっぱいの12か月だ。ラストのハッピーエンドも、まるで学園ドラマ。いいのかこれで、ブリジット?一番面白いのは、必ず日記の前に入る、体重やアルコール、煙草の量、消費カロリーなどの記述。0.5kgに反応する女心を数字に換算したリアリティは笑える。

  林 あゆ美
  評価:C
   ロンドンで働く独り身のブリジッドのどたばた日常を書いた日記の続編は、恋人ができて、満たされた気分ではじまる。なんてったって、4週間と5日も大人の男性との「機能的な関係」が続いているのだ。
 日記は自分に向けて書いているものだから、とうぜんのごとく、非常に率直。自分の目標であるダイエットに向けてのカロリー計算も事細かい。メモ風に小さい文字で書かれているので読み逃さないように。例えば「激しい愛の交歓→3回、摂取カロリー→2100、激しい愛の交歓で消費したカロリー600――したがって、摂取カロリーは差し引き→1500(模範的)」とか。そこまでカロリー計算するのかと突っ込みをいれたい気分を抑えつつ、次のカロリー計算にも期待(?)してしまう。大きなハプニングである監獄生活は、ちょっぴりロビンソン・クルーソーを思い起こさせた。ブリジッドの気持ちの揺れが大きければ大きいほど、この本は共感をもたらすのかもしれない。私だけじゃないんだ、という共感に。

  手島 洋
  評価:C
   ヒット映画『ブリジット・ジョーンズの日記』の第二弾。第一弾の映画も本も見ていない人間なので、そうか日記なんだ本当に、と間抜けながら今更、思った。そして、読みやすい本という意味では実によくできていると感心してしまった。基本的に読みやすいブログのようひとつの話が短くなっている。そして、日付のすぐ後に書かれている体重、吸ったタバコの本数、といったメモを四打だけで、その日のエピソードが分かるようになっている。さらには、同じ日付でも時間ごとにエピソードを区切ることで、話が新たな展開を迎えると教えてくれている、親切な作り。
 しかし、読んでいて、個人的には不満が残った。原因は次々と登場する意味不明な固有名詞。アメリカのTVドラマを見たりしてもそうだが、タレントやブランド名、店の名前などが話に登場して、それが皮肉やジョークのネタになっていると、どうやらおもしろいことを言っているらしい、という置いてきぼりをくったような寂しい気分になるのだ。読みやすい本だけにそんなことが余計気になってしまった。自己開発、ハウツー系の本のタイトルや出版社をこれだけ細かく説明してくれるのだから、そっちの説明もあればなあ、と思うのでした。

  山田 絵理
  評価:A
   ブリジット様。ロンドンの女性達も同じような悩みを抱えているのね!あなたと同じような年代の私も、友人に会うと「仕事、結婚、そして女の生き方」に話題が終始してしまうのよ。
 だからあなたが「自由に生きている自分はかっこいい!」と思っていながらも、本当は自信が無くて、生きていくための指針が欲しくて「自己啓発本」に頼るのも、「シングルトン」として雄々しく生きる決意をするけど、やはり自分を理解してくれる恋人は欲しいと思う気持ちも、よくわかる。
 でも、すごくうらやましいのは、常にあなたの見方である2人の親友。何か起きればすぐにかけつけてくれるし、電話で話を聞いてくれるのだもの。「自己啓発本」なんかよりもずっと優れた、あなたを支える大事な存在。
 もっと私がロンドンのいろいろなこと、例えば雑誌とか服とか食べ物のこととかに詳しかったら、もっとあなたのことが手に取るように実感としてわかったと思う。それが残念ね。

  吉田 崇
  評価:D
   日記体の小説といったら、『アルジャーノンに花束を』だと思っていて、書き手の知能レベルの増減による文体の変化っていうアイディアに、なるほどと感心した記憶があるのだが、この作品にも新しい発見があった。まず、日付の直後に羅列される、体重、摂取カロリーや消費カロリー、アルコールの量、ボーイフレンドの数、タバコの本数等々の数字。これだけで、書き手の精神状態が推し量れるのだから不思議だ。また、日付の他に時刻も書かれていて、例えば1月27日の場合、午前7時30分から35分まで、一分おきに書き付けられている。ほとんど、ストーカー紛いの執念深さだと思えない事もないが、夏休みの絵日記は最終日に一気書きの僕としては、頭が下がるやらあきれるやら。
 日記の書き手は30代の独身女性。やたらと騒がしくて、ちっとも共感できなかったりする。未婚でも既婚でも好きにせぇと言ったら角が立つから言わないが、前向きとかプラス思考とか、そう言う言葉も嫌いだったりするので、ごめんなさい、評価は低いです。
 自分がもうちっと見てくれのいい男だったら、喋りすぎるヒロインに口づけて言葉を止める位の事を言ってまとめてみたかった、残念。