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├2001年6月
└2001年5月
白の鳥と黒の鳥
【角川書店】
いしいしんじ
定価 1,365円(税込)
2005/1
ISBN-4048735748
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
朝山 実
評価:C
アメリカの国民作曲家フォスターから電話で呼び出され、上野の立ち飲みで、みょうちきりんな話を聞かされる。ラリった中島らもさんふうの「オールド・ブラック・フォスター」など、妄想な話がいっぱい。鏡を見続け、顔を盗られてしまったと女たちが騒ぎだす「すげ替えられた顔色」が印象深いものの、作品の傾向そのものにばらつきがある。話はちがうけど「バーバー吉野」という映画で、サイケな恰好でパラソルをふりまわすオジサンが出てくる。脇役ながら目立っていて、昔は町内にレレレなおっちゃんが散歩していたものだが、そうした存在に作者も目がいく性質なのだろう。「このよのはんぶんはくらげでできている、といってもかごんではない」て、びしょぬれの女に思いつかない台詞を言わせるセンスは並じゃない。総じて物語は変。文学嗜好の人はともかく、ごく「ふつう」のお話を期待する人にはつらいかも。
安藤 梢
評価:B
読み終えるのが勿体ない短編集。ありそうだったりなさそうだったり、設定も文体も違う、それぞれ色の全く違う短編だが、最後にすとんときれいに収まるところが同じである。きちんと物語が完結していく安心感がある。全ての話に、あともう少し続いてほしいと思ってしまった。独特の不思議世界を演出しながらも、ひとかけらの真実を紛れ込ませているあたり素晴らしい。物語に入り込んだと思った途端に容赦なく終わっていく、儚い余韻のようなものが作品全体を何ともいえず優しい雰囲気で包んでいる。とりあえず一話立ち読みを、という人には「緑春」がお薦め。緑色が青色への愚痴をこぼすところがかわいらしい。色に意志を持たせるというその設定の妙もさることながら、最後のオチには思わず「ぎゃふん!」と言ってしまうこと請け合いである。
磯部 智子
評価:A
モノクロのセンスの良いカバー、でも一皮めくれば眼に痛いレモンイエローの姿を現す装丁。どこか世界の片隅で何事かに過剰な人々の日常を切り取って描いた19の情景。帯に「物語の魔法つかい」とある。表面を上手くコーティングし飲み下しやすくしているが、相当危ない魔法使いだと思う。度が過ぎた動物愛護か『しろねずみ』、「わしも南の生まれやさかい」と大阪弁のフォスターが登場する『オールド・ブラック・フォスター』、小学生が怖い「じじいのオカマ」マコの『紫の化粧』、健康志向なんのその、飲んで食べて生きる楽しみを満喫する平均寿命32歳『太ったひとばかりが住んでいる村』、『薄い金髪のジェーン』は段ボール村民たち(ホームレス)のカラオケ大会。左岸と右岸の対抗でどちらが勝つかで必死だが「この場所にいる奴は、はは、みんな負けだ」と自嘲する。白猫でも黒猫でもネズミを捕る猫が…と言った中国の指導者もいたが、白の鳥と黒の鳥はどうなのだろう。全てを白黒反転して見せた魔法使いにとっては、まぁどちらでも同じなのかもしれない。
小嶋 新一
評価:B
大人のための童話集。ただし「毒入り注意」です。食べたら大変なことになるかも知れないけど(大げさ!)、毒が入ってるからこそのおいしさもあるでしょ。子供のお菓子じゃないんだから。
「おまえさんらはむだ死にじゃないぞ」と声をかけながら牛豚をばらし続けてきた肉屋が命を終える時、聾唖の息子が父親の耳元に同じ言葉をささやきかける『肉屋おうむ』。臥せった女房を元気付けようとおっとせいを飼いはじめたが、それ故に妻を寝取られる男の悲哀ただよう『おっとせいを飼う』。食べる快楽を追い求めるあまり、誰もががぶくぶくと肥えあがった村。短命をかえりみず快楽をむさぼる人々。そんな村が、旅行者の目に楽園に映る瞬間を描く『太ったひとばかりが住んでいる村』。
昔どっかで見たような光景。懐かしい匂いが漂う、ゆがんだ世界。妙な夢を見て、汗をじっとりかいて目を覚ました感じ。ああ、めまいがしてきそうだ。ただし、寝覚めは決して悪くはない。今はいいけど、しばらくしたらまた読み返したくなりそうだ。
三枝 貴代
評価:A
19のかなり短い小説ばかりで構成された短編集です。どの話もそれぞれ独立で絵本として出版されて不思議はない感じ、といえばわかっていただけるでしょうか。絵本的な、シュールで、感情の底に直接うったえかけてくる、鮮やかな物語ばかりです。
子供向けとしてだすこともできそうな話。艶やかで官能的な大人のための童話といえる話。真面目に読んでいたら最後に冗談でぽんと足をすくわれる話。などなど。とりどりの物語は、どれもくっきりと印象にのこります。それは必ずしも幸せな感想とは限らないけれど。
わたしのおすすめは『しろねずみ』です。滑らかな毛皮のしろねずみと抱き合って眠るのは心地よいだろうなあと、想像してうっとりしました。そういった、肌に直接染み込むような感覚を与えてくれる物語群です。
寺岡 理帆
評価:A
ふわふわあっと舌の上でとろける上品な砂糖菓子みたいな19の短篇集。けれど菓子が溶けてなくなったとき、口の中に残る後味は甘かったり、ほろ苦かったり。読んだ後、なんだかふんわりと優しい気持ちになったのは、最後の短篇がよかったからかなあ。
さすがに19篇もが1冊にまとめられていると、個人的に好みに合わないものも出てくるわけだけれど、シュールな設定をさらっと読み手に受け容れさせて短い文章の中でそれぞれにきっちり世界観を作り上げ、長く残る余韻まで読者に与えるその手腕はさすが。『白の鳥と黒の鳥』というタイトルにぴったり合った装丁も素敵。
なんというか、この本を読んでいるといしい氏の世界を見つめる眼の暖かさ、みたいなものを感じる。なんだかイヤ〜な作品にすら。
特にラストの「太ったひとばかりが住んでいる村」は、読んだ後思わず人生についてしみじみと思いを巡らせてしまった。
1篇1篇、味わいながらゆっくりと読むのが似合う1冊。
福山 亜希
評価:C
妖しい物語が沢山詰まった短編集。時代も場所もしっかりと特定できない不思議なストーリーで、突拍子もない展開に、頭の中を振り回されながら読んでいった。どの短編も現実と空想のハザマにあるような、可笑しな現実感をもって迫ってきて、そしてどれもちょっとずつ残酷だった。この残酷さは何なのだろう、どこからくるものなのだろうと思う。そこで私が思い浮かべたのは、民謡や民話だ。その土地その土地で、昔から伝えられてきた話には、どこかしら死の影があり、明るさと暗さが同居している。そしてそこには、生身の人間の生活が現れているのだ。
「肉屋おうむ」では、牛を大切に育てる親子が登場する。彼らが牛を肉にするシーンは残酷だが、本来ならばそれは残酷でも何でもない、私たちが生きていく為に日々繰り返されている普通の光景である筈だ。残酷と言ってはいけないこと、それを残酷と捉えることにこそ問題があること、そんなシーンを作者は嫌と言うほど投げつけてくるから、私は自分が試されているような気がして、読むのが疲れてしまった。作者と戦う気概で読まないといけない本。負けないようにしっかりとした気持ちで頑張らねば、読者は負けちゃう。