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├2001年7月
├2001年6月
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回転する世界の静止点
【河出書房新社】
パトリシア・ハイスミス
定価 2,520円(税込)
2005/1
ISBN-4309204252
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
朝山 実
評価:A
都会暮らしにうんざりした男が田舎町に流れ着き、住もうとする。だが、よそ者ゆえの齟齬から被害妄想に陥りかける。村八分扱いの少女と仲良くしていたのが悪かったのでは。監視されているような息苦しさに苛立ち、このまま滞在しつづければ、何かが起こる。静かだけれどイライラ。……結局彼はある日、誰にも何も告げず町をあとにする。つまりは劇的な事は起きはしなかったのだが、起きていてもおかしくはない。そんな町の風情と男の様子を刻々と描いている「素晴らしい朝」がハラハラして好きだ。もう一篇あげるなら、夫が職を得た異国の地で暮らす女の悲劇を描いた「自動車」。潔癖で教養人でもある彼女は、南国特有のいいかげんな住人たちに不満がいっぱい。夫が彼らと意気投合するほど、妻は疎外感を強め、ノイローゼ状態に。そして……。起きるかどうかの最後が粗末なこと。むしろ、どの世界でも起こりそうな、狂気にいたる1コマずつがスリリングに描いてある。
磯部 智子
評価:AA+
ハイスミスは、こんな凄い作家だったのか。『太陽がいっぱい』の原作者という認識しかなく読み逃していたため心底驚いた。駄作がひとつも無いという絶品の作品集。作家の冴え渡る視線は何一つ見逃さず、全ての感情を汲み取り、そして何者にも感情移入しない。人の数だけ無数にある価値観、それらは対立を慎重に避ける事によって、其々不確かで頼りない自分の世界を守っている。それが思いがけず交差し否定され追い詰められた時、人間の心理はどうなるのか。登場人物の緊張がそのまま読み手を侵食し不安が大きな鎌首を持ち上げる。山の麓の小さな町がNYから来た男を拒否する訳は、偏狭な閉鎖性か彼自身の「ある種の性行」の為か。贋作名画を蒐集する男が、唯一の拠り所であった真贋を見極める目を否定された時、真っ直ぐ立つことも出来ないありのままの不完全な自分と対峙する。表題作『回転する世界の静止点』は公園で出会った階層の違う二人の女がお互いを憐れみあう。果たして公園を幸福な静止点にするのはどちらか。どこまでも果てしなく白黒がつかない余韻が続くが、華やいだ雰囲気を添えるビカレスク小説的要素もまた見逃せない。
小嶋 新一
評価:A
アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」の原作で有名なハイスミスの初期短編集。ハイスミスとは、恥ずかしながら大昔に読んだ「太陽が…」以来の再会。それにしても、彼女ってこんな意地悪な作家だったんですね。
「興奮がはじける瞬間」。この作品集で、これでもかこれでもかと、執拗に繰り返されるテーマがそれ。張り詰めに張り詰めたものが、一気に崩れ去る。昂ぶりきった緊張が、ある時ぷつんと切れてしまう。そんな瞬間の、喪失感、やるせなさ、失望感、倦怠感、安堵、空虚な感じ、あきらめ。ハイスミスは徹底的にそれにこだわる。それって、ある意味意地悪ですよね。昂ぶる興奮をしっかり描くことで、充分一つの作品足りえるはずなのに。
田舎町に安心感を覚えた男が、奈落のそこに突き落とされる瞬間。他人を追い詰めて奪い取ったバッグなのに、中をあけた時に失望がおし寄せる瞬間。待ちに待った姉が訪ねてきたのに、姉の都会への期待が、都会の喧騒の中に沈んでしまう瞬間…。
決してとっつきやすい通俗的な作品ではないので、ご注意ください。それでも、短編小説ならでの、凝縮された世界を味わいたい方には◎(にじゅうまる)でおすすめします。
三枝 貴代
評価:C
いがらしみきおの漫画『ぼのぼの』に、こわい考えになってしまった、というギャグがある。○○なのかもと思いついたら最後、そこからどんどん連想が広がってとんでもなくこわい結論に至ってしまい、冷や汗をかくというものだ。
パトリシア・ハイスミスの未発表作を含む全14作の初期短編集は、こわい考えになってしまう人々の話だ。ちょっとした仕草、些細な出来事が微かな疑惑を生み、そこから思考の将棋倒しが起こってカタストロフィー崩壊に至る。なぜそういったことが起こるのかというと、仮定が、思考の途中で仮定であることを忘れられて事実であると錯覚されることによる。通常そういった思考は、『ぼのぼの』で扱われているように、最初の事象と最終的な結論とのあまりの乖離と非現実感を笑うことになるのだが、ハイスミスの作品では、その思考過程が細かくきっちりと描かれているために、読者は作中人物といっしょになって仮定を事実だと思い込んでしまう。結果、ごく日常的なことがものすごくこわくなるのだ。
なるほどスリラーの女王はこういった手法で恐怖を築きあげたのだなと納得する。
寺岡 理帆
評価:A
非常にレベルの高い短篇集。
没後10周年を記念して出版された未発表作品を中心とした短篇集なのだけれど、これがどうして死後10年も日の目を見なかったんだろう…というくらい高レベル。それぞれの短篇がばらばらの個性を持っていて、けれどどの作品にも硬質な文章で緻密な描写が溢れている。登場人物の個性がホントにばらばらなのにどの人物もその内面描写がリアル。これって凄いことじゃないかな…。
読んでいて、登場人物の不安がじわじわとこちらの浸食してくるような作品が多い。ある意味ホラー。
表題作の「回転する世界の静止点」もいいけれど、個人的には贋作ばかりを集める自分の目の確かさを確信する男が、挫折と小さな希望をみつける「カードの館」と、ラストを飾るにふさわしい「ルイーザを呼ぶベル」が好きかなあ。