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├2001年7月
├2001年6月
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比類なきジーヴス
【国書刊行会】
ウッドハウス
定価 2,100円(税込)
2005/2
ISBN-4336046751
朝山 実
評価:C
知らなかったけど、作者は英国の国民的な作家で、ホームズものと並ぶ人気があるそうだ。連作ものだけど主要なキャストは限られている。あどけなさを残した若旦那バーディ、悪戯心を持ち合わせた聡明な執事ジーヴス。ふたりが名コンビぶりを発揮し、バーディに縁談話をもちかけては世話を焼くアガサ伯母たちなど、若旦那が愉快な人々に奔走されては、作家のフリをしたり、イカれた男になったり、逃げたりと毎度毎度大騒ぎを起す。昔テレビドラマで見たような。会話ごとに観客の笑い声が聴こえる、そんなの。ちょっと三谷幸喜っぽいかな。百年も前に書かれたものとは思えないくらい新味というか、喜劇の基本はたかだか百年では変わらないんだなと思った。翻訳も紋切りにならないよう台詞に工夫がされていて、ウイットに富んだトンチキな言やりとりがいい。翻訳者がこの作家の作品を広めたいと思っていることが伝わってくる。それが本書の一番の魅力かもしれない。
安藤 梢
評価:B
愚かな主人に賢い執事。主人のバーティーが、何かあると執事のジーヴスに泣きつくあたり、何となく「ドラえもん」の構図を連想してしまう。よくよく読めば、ジーヴスはドラえもんほど主人を慕ってはいないと分かるのだが、その冷淡さが一種独特の味となって全体を引き締めている。何をやらせても完璧で、先を見通す力を持っている執事とあれば、バーディーでなくとも頼り切ってしまうこと間違いないのだが、この人物なかなか一筋縄ではいかないのである。時々表に出てくる、二人の趣味嗜好の違い(紫色の靴下やカマーバンド)は、それだけで二人の仲を険悪なものにしているが、ともすれば単調になりそうな話のいいスパイスになっている。
女と見ればすぐ恋に落ちてしまう親友のビンゴのキャラクターがまたいい。何とも憎めない(しかし時に憎みたいほどに身勝手な)やつなのだ。バーティーとビンゴの会話はまるで掛け合い漫才のようである。
磯部 智子
評価:B
舞台を見ているような非常に様式的かつ明朗な喜劇、役割の単純明快さから吉本新喜劇を思い出してしまう。そしてやはりお約束の場面で笑ってしまうパブロフの犬状態。喜劇は社会風刺やどうしようもない現実を揶揄する側面がある為、イギリス紳士(バーティー)と召使い(ジーヴス)の取り合わせは格好の素材。本当によく頭のまわるジーヴスと、彼なくしては降りかかる様々な災難を解決できないバーティ、その友人で幸せな(?)恋愛体質のビンゴ、お節介なアガサ伯母さん(名前が良い)などなど役者は揃っている。バーティとジーヴスの会話は、それぞれ忠実に自分の立場を演じているからこそ一層人を喰ったような面白さが際立つ。バーティだって愚か者ではない、ジーヴスの才覚を認め彼が自分を出し抜いているのも承知の懐の深い男なのだ。そこがこの作品の入れ子になった深みであり愛される喜劇たる所以だと思う。只、残念なのはイギリスの匂いがあまりしないこと、読んで一瞬の間の後、皮肉がしみわたるようなイジワルなひねりが翻訳にも欲しい。
小嶋 新一
評価:A
この本を読んでいる数日間、毎晩ベッドに入ってから2、3章読むのがささやかな楽しみとなった。心の中で笑いをかみ殺しながら、ああ、今日も一応無事に終わったこととしよう、とあったかい気持ちになって眠りにつける本って、やっぱり貴重ですよね。
20世紀初頭の古きよきイギリスの貴族社会。毎日をのほほんを過ごすお気楽もののバーティーと、彼に仕える沈着冷静・頭脳明晰な執事のジーヴス。やっかい事をしょいこむバーティーが、ジーヴスの機智により難局をやっとこさ切り抜けるというパターンが繰り返されるが、こういうワンパターンものって、はまるとついついクセになってしまいますね。
二人の脇を固めるレギュラー陣が、これまたまたいかしてます。会う女性みんなに恋心をいただいてしまうビンゴ。いつもバーティーに迷惑かけっぱなしなのに、その都度臆面もなく頼ってしまう安直なヤツ。顔を合わせば早く身を固めるようにとのおせっかいばかりの、こわもてアガサ伯母さん。バーティーはアガサ伯母さんの前に出ると、猫ににらまれたネズミで、逃げ出すことばかり考えている、といった感じ。面白そうでしょ?
ああ最近ちょっと疲れてるな、なんかイイ気晴らしないかな、と思っている方は、ぜひ枕もとのお供にいかが?
三枝 貴代
評価:A
組合運動に参加していると、時々正気とは思えない言説にであう。最近では、成果主義反対の理由だ。成果によって給料に差をつけるのは、評価者が客観的に評価する保証がないからだめなのだそうだ。正気か? 本当に客観的なら、評価されても良いのか? 正当に評価されてしまったら、給料が低いのは全部自分の責任になってしまう。地獄じゃないか。
この小説の舞台は帝国主義華やかなりし頃のイギリス。有り余るお金に支えられて日々遊び暮らすバーディには、何もかもを知っている完璧に有能な執事ジーヴスが仕えている。平和だ。もしこれが現代米国なら、二人の立場は三月で入れ替わっているだろう。ジーヴスも自分と主人との立場の違いは単なる運のせいだと知っているから、無能で無責任な主人に淡々と仕えている。かくて、楽しい主従漫才は続くことができるのだ。
おしむらくはコメディの命である語り口が、訳文の堅さのせいで、やや損なわれていることか。
寺岡 理帆
評価:A
イギリスではホームズより有名なのがこのジーヴスとバーティのコンビなのだとか。古きよきイギリスの上流階級に属するバーティと執事のジーヴスが織り成すバカバカしくもほのぼのとしたドタバタコメディ。なんだか読んでいて「トムとジェリー」を思い出したわ……。
ダメ男(と言っても語り文を読むと十分に知的)のバーティと頭脳明晰なジーヴス、烈女のアガサ伯母さんに惚れっぽい親友のビンゴ。彼らが繰り広げる予定調和な喜劇は、安心して読めると同時にくすりと笑わせる。ユーモアのセンスが日本とは一味違う感じ。そしてドタバタコメディなのに引用されまくりのキース、バイロン、テニソン等の数々の古典。よくわからないけれどさすがイギリス(笑)。バカバカしくって笑えるだけの物語なら数あれど、下品なものが昨今多すぎる。気持ちよく笑えるこのシリーズ、時代には合わないのかしら。
福山 亜希
評価:AA
ウッドハウスという作家をこの本で初めて知ったが、帯に「これであなたもウッドハウス中毒?」とあるように、私も立派にウッドハウス中毒になってしまった。外国文学のユーモアがこんなに切れ味の鋭いものだとは、これまで私は全く知らなかった。外国文学というと、誰もが知っている世界の巨匠か、ミステリー文学かのどちらかしか知らなかった私は、今までずっと損をしていたのだ。これは甚大な損害だった。
まず「比類なきジーヴス」という題名からして笑わせてくれる。ジーヴスというのは召使で、主人公は、彼のおばに言わせることの「人生を浪費している駄目男」バーティーなのだが、この二人の関係が非常に可笑しい。主人と召使という主従関係を見事にひねった喜劇が展開されるのだ。頭の切れる召使ジーヴスは、一体どこまで頭が切れる男なのか不安になることもあるのだが、それも全て作者の計算だ。外国のユーモアとはこのような雰囲気のものだったのかと、全ての笑いが新鮮で勉強になった。ユーモアの世界でも、狭い日本を越えて、これからは世界のユーモアを読み尽くそうと、そんな小さな決心を胸に抱いてしまった。私にこれまでの読書の分野の転向を迫る一冊だった。