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神狩り2 リッパー

神狩り2 リッパー
【徳間書店】
山田正紀
定価 1,995円(税込)
2005/3
ISBN-4198619905

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  安藤 梢
  評価:B
   タイトルに「2」と付いているのに、1を読んでいなくても大丈夫だろうと侮ったのが間違いだった。分からない……。何だか分からないまま終わってしまった。分かったのはとてつもなく恐ろしい発想でこの世界の原理を引っくり返しているということだ。目に見えないものを相手に(それが神なのか?)戦っている緊迫感は、思わず震えてしまうくらいリアルである。宗教や哲学の説明を挟むことでありえない設定に真実味を持たせているのだが、その説明がなかなかに難しい。神を信じるという宗教心を根底からぐらつかせてしまうような設定(イエスは神ではなく、真の神の存在に気付いたから殺された?)は衝撃的だった。別々の場所からスタートした登場人物たちが、それぞれ天使(かわいらしいイメージなどかけらもない)を追いながら神のもとへと導かれていく。人間の脳が神に操作されているのだとしたら、何と無謀な戦いなのだろう。

 
  磯部 智子
  評価:A
   30年ぶりの『神狩り』の続編。今回『神狩り』から読み始め、先ずその神の絶対的悪意と対する人間の誠実さが雑じりあったパワーに驚いた。さて本作だが冒頭から凄すぎる。体重が90キロから100キロ、翼幅が40メートルと推測され、怪物ともガーゴイルとも例えられる巨漢の天使が人間を襲うのだ。信じられないという思いと滑稽だと笑おうとする努力を押し退けて、恐怖が頭の中でグルグル旋回し始める。それほど猛々しく強烈な力にひっぱられどんどん話にのめり込んでいく。前作の登場人物にも30年の歳月が刻まれ思わぬ変容をみせている。新しく加わった人々も正体の知れぬ不気味さがある。時代や視点がどんどん転換し複雑さが増していくにつれ、頭は混乱し始めるが高まった高揚感が衰える事は無い。そのまま複数の伏線と人々が凄い勢いで加速しながら、これまた一体何処に行こうとしているのか?というラストへと文字通り突っ込んでいく。迫力に圧倒されます。

 
  三枝 貴代
  評価:B
   『神狩り』は傑作か? と問われれば、「わからない」と答えるのが正しい。なぜなら、『神狩り』は未完だからだ。これから話が面白くなるというところで、唐突に終わっている。
 しかし、『神狩り』は、ものすごく傑作になりそうな予感のする小説だった。凄そうな話だった。神を狩るのだ。神を探す(佐藤史生のコミック『ワン・ゼロ』ですな)どころではない。宗教なんでもありの日本でなくては不可能なSFだ。しかも、そこで造形された神は、書き記した文章が人間ではありえない文法だという姿で提示された。文法が違うということは、思考法が根本的に異なるということだ。安っぽいSFに描かれる異星人や未確認動物の奇妙な人間くささにうんざりしていたSF者の心を、いっきにしびれさせたのだ。そう。我々はうっとりした。責めないで欲しい。だって私らは、その頃中学生になるかならないかだったのだ。
 あれから30年たって、やっと書かれた続編だ。作者も読者も舞い上がっている。文章が大袈裟で詠嘆調で形容詞がくどくても、怒らないで欲しい。またナチスかよと、怒らないで欲しい。我々は冷静ではない。どうか色々と許して欲しい。