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告白
【中央公論新社】
町田康
定価 1,995円(税込)
2005/3
ISBN-4120036219
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
朝山 実
評価:B
奈良で、鹿に煎餅をやろうとして、あつかましいボス鹿が、ひ弱な鹿のぶんまで横取りするのに腹を立て「おまえにはやらんちゃ」と小鹿にばかりくれてやっていたら、ボス鹿はあわれな目で主人公を見つめ、いつのまにか小鹿は姿を消し、あとからやってきた旅行者たちから陰険な男というキツイ視線を浴び、居てもたってもいられない。そのときの胸中を事細かに語ってみせている一場面に、主人公の人生は圧縮されるだろう。河内音頭にもなった、子供もあわせ村人を十人も惨殺した男の話だ。世を騒がせた男とはどんな男なのか。生い立ちから遡って男に語らせている。タイトルどおり。しでかした重大事からは狂人以外の何者でもない。でも外見に似合わず、気はちいさい。乱暴者のようで、人の頼みが断われない。人のよさが徒となり、ずる賢い連中に騙され、何度も何度も利用されまくる。とうとうある日、男の憤懣は空手チョップのように炸裂するわけだ。これは、言葉をもたない「大衆」の原像を描いた快作だと思う。だけど、なんとも長い。本を持つ腕が疲れる。
安藤 梢
評価:A
人を殺す理由が分かるだろうか。周りでいくら推測しても、結局のところそれは本人にしか分からない。この本はその大前提をもとに、主人公の城戸熊太郎が大量殺人を犯すに至った過程を描いている。殺人の動機を一つに決め付けないところに、本書のよさがある。事件の前後だけではなく、熊太郎の一生を追うことで、その人生を通して蓄積されていく殺意が見事に描かれている。
熊太郎の間の悪さというか、いつも損な役回りをしているところが哀しい。こうなったら嫌だな、と思った通りに罠にはまり、何かしらの失態を重ねていく。賭博で転落していくところなど、結果が分かるだけに読んでいて苦しくなる。だらしのなさには呆れるばかりだが、どこか憎めない。いつも大きな不安に心を奪われビクビクしている、その細かい心の動きの描写が念入りで巧い。
磯部 智子
評価:AA
初めての町田康作品は700頁近い超長編。これもまた居場所の無い男の物語。ただ特異なのは決着のつけ方が大量殺人「河内十人斬り」であること。読み始めて直ぐアレッ?耳にした人間を一瞬のうちに凍りつかせるあの河内弁が、作家の言葉の中ではなんともほのぼの感を漂わすことに驚く。物騒な題材にのらりくらりしたぬるい感じが入り混じり、熊太郎の人生を幼少時よりそれは丹念に書き起こしていく。彼は言葉、言葉、言葉に呪縛されており奇妙に作家との重なりをみせる。自分の言葉が人に届かない、いやそれ以前に本当の思いが言葉に出来ないもどかしさ。それでいて同時に彼は言葉を信じすぎ、人の言葉に騙されていくという皮肉が滑稽に鮮烈に描き出されていく。「思弁的」で人と共通の言語を持たないかのような熊太郎に言葉による意思の疎通という手段はなく、心ならずも嘘をつき突飛な行動をとり、閉塞感のある明治の農村文化の集団のなか疎外感を深めていく。そして追い詰められ絶望し最後に行き着く先は…。どうしようもなくド阿呆で可哀そうな彼に、近親憎悪にも似た歯がゆさを感じてしまう面白うてやがて哀しき物語。
三枝 貴代
評価:AA
初期の町田康の小説を、どうしても読むことができませんでした。冗談めかした文体で、半分冗談みたいな日常生活を描かれれば、いったいそういった話を読む意義はどこにあるのかと、自問してしまうのです。ところが、町田康の人生相談回答は大変に面白かった。つまり町田康は、いいかげんな話をいい加減な文体で書くだけでなく、ものすごく悲惨なこともいい加減な文体で書く人だったのです。その冗談めかした文章は深刻なことを書くときにこそ魅力的であり、日常会話に近い音楽的なリズムは非日常的なことをこそ美しく浮かび上がらせます。
書き下ろしフィクションとしては前作にあたる『パンク侍、斬られて候』から、町田康の小説テーマは日常生活を離れ、その文体を本当に生かすことができるジャンルへと進出することに成功しました。明治時代の大量殺人犯を描いた本作は、生活に密着した地に足がついた言葉で、想像もつかないような暗闇を、異様な迫力で描きだします。読めば誰もが圧倒されるみごとな大作です。
寺岡 理帆
評価:A+
新聞連載当時とても楽しみに読んでいた作品。途中で連載が終わってしまったときはショックだった!
読んでいてとにかく痛い。リズムがあってさくさく読めて、しかも笑いどころもあるのに、でもやっぱり痛い。「極度に思弁的」な熊太郎の葛藤は、思い当たる人は多いんじゃないだろうか。こういう悲劇はきっとたくさんあるのかもしれない。けれど思索が言葉と結びつかないから、誰にも理解されずに悲劇が存在したことすら周囲に認知されることがないのだ。
「人はなぜ人を殺すのか」。この小説を読んでもその答えは見つからない。けれど熊太郎が殺人に至るまでの心情はここまで書き込むかというくらい書き込まれている。桐野夏生『グロテスク』を読んだときに感じた、「小説が現実を超えうるパワー」をここでもビシビシと感じた。