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ベジタブルハイツ物語
【光文社】
藤野千夜
定価 1,575円(税込)
2005/4
ISBN-4334924557
朝山 実
評価:B
顔が覚えられない。ワタシの脳みそはひどいことになってきているのだ、ちかごろ。なかには一発で覚えてしまう顔もある。何なのか、この差はと思う。これは二階建てのアパートの住人と、同じ敷地に住む大家さん一家の物語で、一人一人が主人公。つまり「見るもの」の目によって「主人公たち」が異質というか、見え方のズレをいかした連作長編小説だ。出てくるのが、人目をひくほど「オンリーワン」な人たちじゃないので、間をあけて本を手にする都度「あれ、誰だっけ?」状態に陥ってしまう。「ええっ、そんな!?」とびっくりするクライマックスも起きはしない。空き缶を蹴飛ばしたくらいのハランはあるにはあるけど。たとえば彼氏だと思っていた、部屋に居着きはじめた男に女房子供がいた。よくあることだ。が、彼女の取った行動で「みづき」をおぼえた。そんなふうに、ささいな起伏が「個」をモノ語る。だからといって、何があるわけでもない。涙、涙、涙な物語が多い中で、このたるんだゆるみ具合が、いい。再読すると更に好い感じ度はます。
安藤 梢
評価:A
何も起こらない日常がただつらつらと続いていく。これといって派手な事件は何も起こらないのだが、小さく地味でだからこそリアルな事柄で毎日が描かれていく。くだらない・・、そう言ってしまえばそれまでなのだが、そのくだらなさに思わず強く頷いてしまっていたりするのだから面白い。
ベジタブルハイツという名前のアパート(部屋に野菜の名前が付いている)に暮らす住民と、そのアパートの大家である山本一家の話。季節の移り変わりとともに変わっていく住民たちのそれぞれの生活と、山本一家の些細な変化(兄に彼女が出来た、妹が受験に失敗した)が、ほどよい間隔で綴られる。互いに親密な付き合いになることはないものの、それでもほんの少しずつ接点を持ちながらの関係。人一人分の交友範囲の狭さが、妙に現実的で巧い。他人から見れば実にくだらないことで人生のほとんどが占められている、人間のちっぽけさが無性にいとおしく思える一冊である。
磯部 智子
評価:B+
苦手な脱力系の話かと思ったが…その2階建てのアパートには其々の部屋に野菜の名前がつけられている、Aがアボカド、Bがブロッコリーという具合。大家の娘さやかが親にウケたい一心で小学生の頃命名し、高校生になった今では懐かしげにその頃の話を持ち出す父親を「現状認識が甘い」と思っている。そんな大家一家とアパートの住人たちの連作短編集。夏休みに短い家出をし親のカードでキャッシングした15万円を返すためホカ弁屋でアルバイトをするさやかは、自分を「動機もやり口も金額」もマトモな範囲のいい子ちゃんで、予備校生の兄の事も「キショいだけで普通」だと思っている。アボカドの住人かずみは、そんなさやかを地主の娘なのにバイトなんかして、きっと優しくて偽善者のパパの方針だと考え「憎い、この娘が憎い」と思う。こういう人生の側面をユーモラスにさらっと描くのが本当に上手い。本格的に様々なものを背負い込む人生が始動する前、世界の片隅で猶予期間を生きる人々の、それでも悩みの尽きない毎日が切り取られている秀作。
小嶋 新一
評価:D
たいていの小説の中では、派手なドラマやびっくりするような事件が、日常茶飯事のように起こったりしているが、ホントは僕らの周りの日常生活は、何の大きな出来事に出くわすこともなく、淡々とゆっくり過ぎていっている。
この作品で描かれるのは、とにかくフツーで目立たない、とりたてて取り柄のない人々。アボカド、ブロッコリー、キャロット……と部屋に野菜の名前がつけられているアパートに暮らす人々と、その大家さん一家の日常生活。どきっとする様なドラマは、そこにはない。毎日がゆるゆると通り過ぎていく。大家の娘のさやかが「ぬるいなあ」と言う。「なんだかとてもぬるい家」と。そう、たいていの家は「ぬるい」んだなあ、実は。
僕らにとって、等身大の生活が描かれているという意味では、読みやすいし、親しみがわく。起伏の少ない日常をちゃんと読ませるように描くのって、想像以上にテクがいるんだろし。だが、それだけで終わってるかなあ。それ以上でも、それ以下でもありません。
三枝 貴代
評価:A
従来より、女性は男性よりよく舌が回って騒々しいものとされてきました。しかしなぜだか女性作家の書く小説では、饒舌体は少数派です。わずかに存在するその傾向の作家さんは、新井素子、久美沙織といった、ライトノベルに片脚突っ込んだ大御所ばかり。女性で小説を書くような人は、内省的でおとなしいのでしょうか、能天気なお喋り派は少ないみたいです。でもやっぱり、若い女性(若い女の子じゃない、ちゃんと大人だよ)のきゃぴきゃぴした会話をきいて元気になりたいことってありますよね。もっと出てこい饒舌体女性作家!
で、藤野さんの小説は、なかなか素敵なガールズトークなのです。シニカルで厳しい部分も持っていて、少女小説のような甘い物語ではありませんが、読んでいて元気になる、可愛く間抜けで純粋な女性の言葉が並んでいます。しかも男の子も、彼女たちと同じく、平凡で間抜けで純真です。素敵ですよ。
寺岡 理帆
評価:B
大家の娘によって部屋に野菜の名前をつけられたとあるアパートに住む住人たちの生活を、大家一家(の特に長男長女)の生活と織り交ぜながら綴るほのぼのとした作品。
それぞれに生活があり、それぞれに悩みがある。その悩みはあまりにも等身大で、彼らの生活はまるで隣に建つアパートの住人の暮らしを覗いているかのようだ。特別に不幸な訳じゃない。特別に幸せな訳でもない。ドラマティックな展開もないのに、なぜか最後までスルスルと読み続けてしまった。こういうのがまさに、上手いということなのかも。
ついつい、彼らがみんな幸せになりますように…なんてことを考えてしまいつつ、なんとなく和んだ気持で本を閉じた。
福山 亜希
評価:B+
アパート大家の一人娘さやかが、物心ついて間もない幼い頃、アパートの部屋に野菜の名前を付けて呼ぶことを思いついた。1-Aはアボガド、1-Bはブロッコリー、1-Cはキャロット…というように。父親はその可愛らしい思いつきに夢中になり、名づけ親のさやかは両親の注目を一身に受け、親子は幸せな一時期を過ごす。
だが、さやかが高校生ともなると、様子は変わってくる。冷めた目で周囲を見る娘に、ご機嫌を伺う父親。かつての団欒の気配は微塵もない。この微妙なずれは他の登場人物にも同様だ。整った顔立ちの利点をいまいち享受できていない予備校生の兄に、何か決定的に幸せの要素が欠落しているアパート住人達。ドラマの主人公になるには人生のどこかで歯車が決定的に違ってしまった彼らの日常生活は寂しいくらいに現実的で、どこか物悲しい。洒脱で軽快な文章が、その物悲しさを打ち消しているけれど、彼らの不幸せさには現代的な病が巣くっているようで、症状としては全く重症ではないものの、治せるか分からない複雑な状況だ。だけど、あくまで物語はあっけらかんと軽快に進む。この乖離がとてもリアリティを感じさせてくれるところで、また面白いところだった。私たちのすぐ隣りにある悲劇的・喜劇的な日常生活を、楽しく描いた力作だ。人生を笑い飛ばす勇気がもらえる一冊だろう。