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風味絶佳
【文藝春秋】
山田詠美
定価 1,290円(税込)
2005/5
ISBN-4163239308
朝山 実
評価:B
郵便保険の勧誘や溶接工などブルーカラーの人たちのある一時を切り取った舞台を最初に見たときは、イッセー尾形という役者が一人で演じ分ける、一人一人の「職業」をまとった人物がユニークに見えたものだ。その会話や符丁、所作を面白がっていた。知らない世界の面白さである。しかし、目がなれてくると「制服」の中に沈静している、退屈やら不安、ささいな楽しみ、一言でいってしまえば時代や社会によって誰しもに共通するものがあるのだと気づかされた。というのも、この短編集の一つの特色は、貯水タンクの清掃や火葬場に勤めている中年男、それらの男を好きになった女の人の身辺雑事のお話で、最初は変わった職場のその雰囲気に興味津々となるのだけれど、読むうちに彼らはさほど特異な存在でもなんでもなく、むしろそこらにいている人の一人であり、鳶だからゴミ清掃車に乗っているという外側よりも、自然と彼ら自身と人との関わりのほうに興味はわいていく。小説の面白さは、人に尽きるもんだと改めて納得させられた次第です。
安藤 梢
評価:A
なんて贅沢な短編集だろう。もったいなくて読めないではないか。装丁のキャラメルの絵そのまま、内容もまさに一粒一粒大事に味わいたいようなそんな話である。恋愛の中のとりわけ香りのいいところだけを抽出したような、凝縮された短編集。酸いも甘いも噛み分けた大人の恋愛の極上の味である。
「間食」では、何から何まで至れり尽せり(すいかの種まで取ってくれる)の年上の女、加代との暮らしが三度の飯なら、年下の女、花との恋愛が間食にあたる。この構図はありきたりの三角関係のようだが、全く違う。そこには注がれた愛情を、また別の女に注いでしまう主人公雄太の哀しさがある。天真爛漫に見えて、愛情に関してはとても繊細で脆い。見返りや責任を求められた途端に投げ出してしまう弱さが、雄太の本質的な幼さを表している。同僚の寺内のどこか人生諦めたような淡々とした姿勢が、熱すぎる雄太を丁度よく冷ましてくれ、絶妙である。
磯部 智子
評価:C
「男は体」という女たちが登場し肉体労働者である男の風味を味わう短編集。それは体ばかりではなく人生そのものを味わいつくそうとする徹底的な貪欲さで最高の味わいを求め、大きな代償を支払うことになる。『夕餉』では裕福な夫を捨てごみ集積作業員である男のもとに走った女がひたすら料理をする。ジェノヴァ風ソースであえたじゃがいもをバゲットにのせたクロスティーニ、ミラノ風カツレツに山ほどのルコラ……「譲れない」彼女は間違っても彼のためにロースとんかつに山盛りの千切りキャベツなんかは作らない。その姿に愛とはどこまでも自身に帰依する思いなのだと戦慄すら覚える。作家は肉体労働者の醸し出す雰囲気に心魅かれ敬意を持ち、描写欲を刺激されこの作品集を書き上げたという。上手さが際立ち言葉の宝石のような作品だが主役はあくまで女王様である「私」であり、決して相手に染まらない自分の為の自家中毒的恋愛だと感じてしまう。果たして男は小腹のすいた時つまむキャラメルなのか?どこまでも一番の敬意の対象は自分だと感じる。
小嶋 新一
評価:C
なぜかみんな「とろ〜ん」としている。一風かわった人間ばかり出てくる。不思議な「風味」が立ち込めている、作品の中に。登場人物たちに。これは何だろう。
あとがきで作者が「日頃から、肉体の技術をなりわいとする人々に敬意を払って来た。いつか(略)その人たちを描いてみたいと思っていた」と記しているとおり、いろんな職種の労働者が主人公で登場する連作短編集。トビ職もあれば、ごみ収集車の乗務員もいるし、引越し業者であったり、火葬場の職人だったり。
上手いと思う。独特の「風味」。えっ、こんな話になるの?とか、あれそんな終わり方ありなんだ、とか。見事に読者の常識の外側を回り込むような、巧みな短編が並ぶ。
だけど、だけど、どうだろう。この独特の世界は、作者が書きたいと思う作品のイメージがまずあって、それに基づいて頭の中で構築されたもののような気がする。「作られた感」が強すぎるのだ。読んでいて、ずっとそれが引っかかっていた。
三枝 貴代
評価:B+
短篇6作で構成された作品集。幸せな恋、幸せを予感させる恋、失恋、惰性のように続く恋、結婚生活の闇。さまざまな状態の恋愛が提示されますが、おすすめは冒頭の『間食』です。
主人公の雄太は鳶職ですが、高いところにのぼるとたまらなく地面にもどりたくなり、地下にいるときは地上に出たくなります。そんなふうに、今の状態を常に否定するかのように、彼はいつも2人の女性とつきあっているのです。この話は、恋愛の不思議を描くと同時に、死の気配をむせかえるように強く匂わせています。死にとりつかれているかのような雄太の同僚・寺内が魅力的です。
山田さんの文章は一文一文が非常に短く、そのせいか、絶妙な表現が現れても語り手が利口そうに見えないという独特の効果があります。この文体のうまさで、ストーリーのつめが甘い部分があっても、ついつい、うまいなあと許してしまうのです。いやあ、うまい!
寺岡 理帆
評価:A
肉体労働系の男たちと、彼らに恋し、あるいは恋される女たちを描いた恋愛短編集。かなりいろいろな恋愛を扱っているのだけれど、さすが山田詠美、なんというか、瞬間瞬間で流れていってしまう気持をサクッと上手に切り取って、うまく包装しているなあ、という感じ。甘い甘いものから涙の塩分がピリッと効いているもの、後味のスッキリしたものにいつまでも後をひくもの…。
恋愛ってキレイゴトばかりじゃやってられないし、時には相手や自分の醜さを突きつけられたりするものだけれど、でも、やっぱり悪いものじゃない。
ただ、この「風味」を上手に味わえるようになるにはそれなりの経験と努力とが必要で。わたしはまだまだ、半分も味わっていないかなあ(笑)。
福山 亜希
評価:B
肉体労働に従事する男達との恋愛を描いた短編集。“肉体労働”という言葉から受ける、ひと括りのいかついイメージは良い意味で裏切られて、それぞれの男女の固有の恋愛模様が、短い物語の中に鮮やかに掬い取られている。この短編集は、決して幸せいっぱいのストーリーというわけではないけれど、登場人物たちの人生がリアルに、切実に描かれているから、読んでいるほうも決して他人事な気分では読んでいられない。現実の凄みがある。
読者にとって恋愛小説の楽しみとは、本の中で擬似恋愛をすることにあるのだろうが、「風味絶佳」の中では、自分もいつかきっと感じたことがあるような、ほろ苦い想いを疑似体験できる。それは楽しいものでも心地良いものではないのだけれど、私たちの等身大の日常生活であり、まぎれもなく恋愛そのものなのだと思った。