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素数の音楽
素数の音楽
【新潮社】
マーカス・デュ・ソートイ
定価2520円(税込)
2005/8
ISBN-4105900498
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  島田 美里
  評価:B
 最初に目に止まったのは、裏表紙に書かれたコメント。小川洋子さんの文学的な美しい表現に誘われて、小説を読むような気持ちで臨んでみました。しかし、いくら一般向けとはいえ肩書きは数学書。やはり数学が得意なのに越したことはないかもしれません。だけど数学嫌いの私にも、素数の謎を解明しようとした数学者たちの情熱は伝わってきました。
「素数の不協和音の背後に潜む和音の力」などという音楽になぞらえた表現が、数学の世界と音楽の世界のイメージを変わらないものにしています。登場人物の中で印象に残ったのは、ラマヌジャンという数学者。インドからはるばるケンブリッジにやってきたその背景に「女神の啓示」があったというエピソードは、数学のイメージを覆すほど神秘的です。
 音楽と数学を比べると、一見、音楽の方がロマンチックかもしれません。しかし、数学者たちの果てしない創造力を目の当たりにすると、彼らが音楽家と同じ芸術家に思えてくるのです。

 
  松本 かおり
  評価:B
 凄いね。溜息まじりに「これは、凄い……」。まぁとにかく、500ページ近い量で展開される多彩な天才達の世界は、あまりに眩しすぎた。自慢じゃないが、私はまずタイトルの「素数」からして「ナニソレ?」と思ったほどの数学音痴。中・高時代は赤点常連、補習とお情けで逃げぬけた数学アホである。そこに、虚数、対数ときて関数、確率、各種定理のご登場。脳みそが何度パンクしそうになったことか。読破できたのは奇跡に近い。
 著者は、「イギリスでも有数の数学者」という。本書は初めての「一般読者向け」らしいが、この「一般」とは、はたしてどの程度の人々を想定しているのか、ついつい勘繰りたくなる私。やはり、天才様の考える「一般」は、ある程度は基礎知識のある、それ相応の知的レベルの方々なのではないだろうか? 格調高い雰囲気、エリートの芳香、数学界の奥深さ、学者達の情熱、その圧倒的迫力に敬意を表し、謹んで<★4つ>を捧げたい。

 
  細野 淳
  評価:B
 数学者の脳の中には数学の世界が実物として存在する、などということは、よく言われていたりする。とはいえ、普段数学から程遠い生活を送っている人には、その世界がどのようなものか、理解するのはなかなか難しいだろう。大学に進んで以降、数学とはほとんど無縁な生活を送ってきた私も、もちろんそのような人間の一人。
 本書はそのような人たちにとっても、決して無理を言わせずに、数学の世界の扉を開いてくれる。ただし、扱っている内容は素数の規則性を表したリーマン予想と言う、およそ一般人には詳細まで理解できない高度なもの。本の中に出てくる数式なども、分からないものが沢山ある。しかし、それら十分理解できなくても、数学の世界の美しさを垣間見るくらいのことはできるのだ。
 素数の規則性を突き詰めていく数学者たちの、人間性が垣間見えてくるエピソードも魅力的。もし、本書を高校生の時に読んでいたら、ひょっとしたら今は数学に人生を捧げる人間になっていたかも知れない…などとも思ったりしてしまった。


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