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県庁の星
県庁の星
【小学館】
桂望実
定価1365円(税込)
2005/9
ISBN-4093861501
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  清水 裕美子
  評価:B
 県庁というのが絶妙。県に奉職する主人公は県民のために働き、サービスを提供する。国民でもなく市民でもない、我々も帰属していることを普段考えない都道府県という自治体はサービス対象との距離が一番遠い場所なのかもしれない。
 なーんて。難しく考えずとも楽しいストーリー。トホホに見える人々に囲まれたイタタな主人公の成長物語なのだ。
 人事交流研修の名目で1年間民間企業に派遣されるエリート県庁職員・野村聡。彼が配属されたのが田舎の3階建スーパー。そこで彼は皆から「県庁さん」と呼ばれ、適当にあしらわれてしまう。実績を上げたい熱い気持ちも空回る。
 そして彼の教育担当は二宮泰子。店を仕切るベテランのパート社員。彼女自身は息子との距離をつかめないでいる。リストラ候補を挙げる役目も押し付けられる。そんな2人の成長がとても楽しい。最後のお惣菜販売合戦では手に汗を握る。
 だけどやっぱり付け加えるなら本物の県庁さん達は主人公のようではないと思う。むしろ厳しいんだろうなーと「民間」というものに過剰に怯えているんじゃなかろうか。
 読後感:ビジネス本読んだようにモチベーションアップ

 
  島田 美里
  評価:B
 いきなり打ち明けてしまうが、かつて某官庁でアルバイトをしていたことがあった。だからとてもよくわかる!主人公の聡みたいな男は結構いるかもしれない。常に自分に責任が及ばないように振る舞い、マニュアル通りにしか動かず、エリートであることに誇りをもっていて、仮にルックスが良くてもどこかもっさりしている……。あー、なんか興奮してきた。断っておくが別にうらみはない。
 31歳でエリート県職員の聡は、リストラ問題を抱えた田舎のスーパーに人事交流の研修生として派遣される。やっぱりこういう男は弱小企業の社員を見下す。研修先にいても役人根性が抜けない。ところが、習うより慣れろの精神でテキパキ働くパートのおばちゃんに触発され、フットワークも軽くなり、垢抜ける。公務員のイメージを変えるような、彼の変身ぶりに拍手喝采! その一方で、まだまだ語り尽くされていないエピソードがあるのでは?とも考えた。電車男のように、おびただしい数の助言を周りから与えられないと、こういう男は簡単には変われない。

 
  松本 かおり
  評価:B
 いや〜、痛快! 面白いぞ〜。公務員上級試験にパス、Y県県庁産業振興課勤務の31歳、野村聡。「俺は最高学府を出ているんだぞ。難しい上級試験をパスした、県を動かしてる人間なんだよ」。イヤミ〜なエリート意識モロ出し。こんな男が、1年間の「特別研修民間企業派遣」のために田舎の冴えないスーパーに放り込まれるんだから、さあ大変。いったい何をやらかすか、もう目が離せないのだ。
 平凡なスーパーのなかにも日々、ドラマ。ベテラン・パート「裏店長」二宮泰子を筆頭に、癖あり毒あり訳ありの面々が固める販売現場が異様にリアル。著者はもしや、勤務経験があるのかも? 歯切れのいい文体で、軽く一気読みさせる勢いを維持しつつ、従業員それぞれの本音や背景と野村の心境を丁寧に浮き彫りにし、交錯させる巧みな展開は、著者の持つ抜群のバランス感覚の現れだろう。爽快な読後感が、実に嬉しい。

 
  佐久間 素子
  評価:D
 出先機関の人なのでお役所勤めの意識は低いのだけれど、私も一応公務員のはしくれで、いやいやなんだかなと思いつつ読み始める。最近風当たり強いしなー。でも、結果的には拍子抜け。お役所批判というよりはエリート批判。普通の成長小説でないの。人事交流で一年間スーパーに派遣された県庁エリート聡と、裏店長と称されるパートの泰子の一人称がかわるがわるにつづられる。聡は、鼻もちならないながらも、お坊ちゃん的な素直さも持っていて、徐々に変化していくと、これはまあ型どおり。一人で(というわけではないのだが)肩肘はって生きている泰子部分の方が断然おもしろい。みっともないほど強い「おばさん」の魅力が素直に伝わってくる。こっちメインにした方がよかったと思うな。あと、一人称の交代が拙くて、ちょっと読みづらかった。県庁マーク使ってるんだから、スーパーマークも作って配置するとかして、装丁でフォローがきいたのでは。

 
  延命 ゆり子
  評価:C
 仕事の必須アイテムはマニュアルと組織図。仕事の内容よりも上司に印をもらう順番のほうが重要。絵に描いたようなステレオタイプの公務員。そんなY県県庁職員の野村聡(県庁くん)が、人事交流研修で民間企業である地元の弱小スーパーに派遣されるところからこの話は始まる。
 役人根性丸出しでパートをバカにし、融通は利かず気も利かず、人の気持ちは考えず、責任は取らず、はじめはまったく使えない男だった県庁くん。
 しかし、女に騙され、お惣菜コーナーに飛ばされ、ただのパート(実は凄腕)のおばさんに揉まれ、少しずつ変わってゆく。笑って泣ける一人の役人の成長物語。
 しかしいくらなんでも展開が速すぎないか。県庁くんが成長するきっかけというのが弱い気がする。が、後味の良いさわやかなエンターテイメントになっている。これは織田裕二主演で映画化されるそうだが、映像化にはピッタリな作品だと思う。
 しかし最近映画化されるのって、早いなー。

 
  新冨 麻衣子
  評価:C
 県庁勤めのエリート役人・野村聡は、民間企業に一年間派遣されるメンバーの一人として、なんと田舎のスーパーに派遣されることに。そしてもう一人の主人公は、パートながら聡の勤めるスーパーで<裏の店長>と呼ばれる二宮泰子。根は優しいのだけどきつい物言いでちょっと疎まれてる存在。仕事でも、私生活でも人間関係に悩んでいて…。
 テンポよく読ませるし、個々のエピソードもいい。でも前作同様、ストーリーが雰囲気に流されてる感が否めない。最初はいかにもお役人的な凝り固まった考え方するキャラだった聡が、ラストはやたら素直ないい人になっちゃってるし。いろいろ彼の内面を揺るがす事件があったことはわかるけど、成長というより豹変?に近いんだよね。彼の<核>になるものがみえない。一方で泰子側から描かれるストーリーはわりと良かったんだけどね、だからこそこの違和感がちょっと残念だった。

 
  細野 淳
  評価:C
 主人公はY県の県庁に勤めている公務員。プライドが高く、少し世間ずれしたドンくさいところのある人物。そんな主人公が、民間会社への出向を突如命じられた。…とこんな風にあらすじを書いていくと、まるでテレビドラマにぴったりな設定だなぁ、と思ってしまう。どうやら本当にドラマ化されるとのこと。
 出向先のスーパーでの渾名は「県庁さん」。任された売り場では売上が全く伸びない、プライベートでは女性に大金を騙し取られる。役人時代の仕事とのギャップに驚愕しつつ、世間の荒波にもまれながら、それでも「県庁さん」はめげず、人間として成長していく…。民間企業に勤める人も、公務員の人も、それぞれの現状と照らし合わせながら、面白く読むことができるのでは?


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