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勝手に目利き
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文庫本班
ノー・セカンドチャンス(上下)
ノー・セカンドチャンス(上下)
【ランダムハウス講談社】
ハーラン・コーベン
定価788円(税込)
定価819円(税込)
2005/9
ISBN-4270100052
ISBN-4270100060
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  北嶋 美由紀
  評価:★★★★☆
  No second chance. ー誘拐犯が身代金要求の電話で使う脅迫の言葉だ。妻を殺され、生後6ヶ月の娘を誘拐され、自らも瀕死の重傷を負ったマークは、警察の疑いが自分にも向けられる中、娘を取りもどすため必死の行動に出る。しかし、失敗。そして一年半後、再び身代金要求の電話が来る。今度は元FBI捜査官で恋人だったレイチェルという強力な助っ人を得て、警察の目をごまかしながら犯人を追い、手がかりをつかんでゆく。そして……
 ほとんどは娘が生きているという一縷の望みを託しての追跡劇だ。この手の小説を多く読み、勘のよい読者なら真犯人の姿がまさかと思いつつも予測できる。しかし、娘の生死、つじつまの合わない疑問の真相は?と最後までひっぱる。読みやすさと程ほどのおもしろさの中で夫婦や家族関係の問題が一つ重いテーマとして流れている。難をつければ、マークの個性が乏しく、強い魅力がないのが物足りない。


  久保田 泉
  評価:★★★★☆
 翻訳本の、日本語をこねくりまわしたような文体が苦手な私には、この小説の訳は大分読みやすかった。話の展開も、二転三転と気が抜けないサスペンス。冒頭いきなり主人公形成外科医のマークが、弾丸を胸に受ける。瀕死の重傷の中、生後半年の娘タラを想う父マークの痛いくらいの心情描写がいい。このタラへの愛情があってこそ、その後のどんでん返しが続く事件の話が、よくある陳腐なサスペンスにならず、感情移入して読める。意識が戻ったマークが知った事実は、妻モニカも撃たれ死んだことと、娘のタラが行方不明だということ。マークとモニカが別々の銃で撃たれたことで、警察はマークを疑う。そんな中、タラの誘拐を決定づける、犯人からの身代金要求の電話がかかる。娘の奪回は失敗。
 次々現れる登場人物や、めまぐるしい展開の中でも、常にマークの恐怖や無力感の臨場感が小説をぴっとしめる。ジェットコースターストーリーながら、読後感も悪くなく、最後まで楽しませてくれる。

  林 あゆ美
  評価:★★★☆☆
 形成外科医であるマークは妻モニカ、生後半年のタラの3人暮らし。しかし、何者かに銃弾され家族は崩壊した。モニカは亡くなり、タラは行方不明になった。自分の子どもが連れ去られたことを知ったのは、瀕死状態のマークが奇跡的な快復を見せてからだ。自分の体をいとわず、タラを捜そうと見つけようとするマークの前に残酷な仕打ちが……。
 ページターナー度抜群のストーリーだ。読めば読むほど止まれず、先を先をと読ませる。登場する人物が次々に怪しく見え始め、信頼できる人がいったいいるのだろうかとハラハラする。そして何より子どもを失う恐怖にかられる父親の気持ちが臨場感もって描かれ、一気読みしてしまう。
 めくるめく展開のあとの最後はいかに……。ここがストンと納得できるとマークの最後の決断がより引き立ったと思うのだが、「誰に判定できるだろう」と問われればあなたならどうする?

  手島 洋
  評価:★★☆☆☆
 まずタイトルが気になった。昔の洋画みたいに格好よくて短い邦題をサスペンスらしく、つけてほしい。カタカナで書くと長くて間延びしてしまう。すごくもったいない。
 医者のマークは自分が入院していることにきづく。妻が殺害され、自分は重症を負い、娘が行方不明になっていたのだ。そして、退院後のある日、彼の元に犯人からの身代金要求の手紙が届く。果たして、彼は娘を取り戻すことができるのか。
 という展開のストーリー。撃たれたショックで、事件時の記憶の曖昧なマークには何が本当で誰を信用すればいいのか分からない。混乱のまま、話はどんどん意外な方向に進んでいく。いわゆるジェットコースター式に次々と読者を驚かせてくれる小説だが、それにしては前半がかなりもたついている。読んでいて面白くなったのは下巻に入ってから。前半の主人公の葛藤はもっと短くしてくれないと。もっと前半から、読者をいろんな方向にひっぱりまわしてくれないとね。ジェットコースターにのってる人間にアクビや居眠りでもされたら終わりでしょう。

  山田 絵理
  評価:★★★★★
 最初から最後まで、あーでもないこーでもないと話は進んでいき、ページをめくる手がとまらなくなる。主人公の医師マークは突然、自宅で銃撃される。一命は取り留めたものの、妻は死亡。幼い娘は犯人によってさらわれた。娘はいったいどこへ?マーク自身、警察に容疑者としての疑いをかけられながらも、彼は元恋人であり元FBIのレイチェルの力を借りて懸命に娘を探す。次第に明かされてゆく、マークを取り巻く人々たちが抱く弱さと悲しみ。妻の、妹の、義父の、父の、親友の、元恋人の。そしてマーク自身の。
 忘れがたい恋が引き起こした惨劇。最後にマークが取った行動の是非については、賛否両論があると思う。
 それにしても、レイチェルがもくもくと情報機器を操り、FBI捜査官だった頃の手腕を発揮していく姿は、マークの思い出の中のはかなげな姿とはだいぶ違っていた。本当はすごくしたたかで強い女性に違いない。そのギャップが私には面白かったけど、マーク自身は気づいているのか、心配ではある。

  吉田 崇
  評価:★★★☆☆
 うーん、僅差で今月のナンバー1。最後まで、ページをめくる手が止まりません。何だか、どっかで読んだ様な設定の寄せ集め、などというのは野暮な事、読み終えて素直に面白かったと思える一冊。ストーリー運びのセンスのある著者だと感じました。早速、読みたい本リストに書き加える。
 登場人物のほとんどに悲惨な過去が影の様にあったり、今現在でも何かしら深刻なトラブルを抱えていたりと、本当はこう言うのには飽き飽きしている今日この頃ではあるのですが、ま、これもお約束ごとだと割り切ると、ぐぐっと物語が近づきます。主人公の娘を取り戻したいという気持ちが熱いので、読み手の僕も熱く、ストーリーを辿っていけるのでしょう。ドンデンはあっても、さほど意外ではなく、ある程度読めちゃいますが、それでも十分面白いです。結構深遠な事も考える主人公、僕は共感できました(と言って、ほくが深遠だという訳ではない)。

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