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勝手に目利き
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図書館戦争
図書館戦争
有川 浩
【メディアワークス】
定価1680円(税込)
2006年2月
ISBN-4840233616
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清水 裕美子
  評価:★★★

 わはは。全ての活字中毒者と本好きの方へ。徽章デザインやミリタリー好きの方にも。
 抑えたトーンの話し声の波。古い本の匂い。「ここに居ますから」静まったそぶりで鎮座するズラリ並んだ背表紙達。そういう図書館?で繰り広げられるのは闘争する行政戦隊図書レンジャー物語。軍事訓練に励んでます。
 超法規的検閲『メディア良化法』が施行され、狩られる本を守ろうとする図書館(と6人の仲間達の話だが、細かい描写や設定、会話にくすぐり続けられる。様々な形の闘争の中、中学生有志によるアンケート結果発表など可笑しくてたまらない。この言葉の感じ。リクエスト出来るなら「今日の出来事」櫻井よし子さんもひとつ欲しかった。
読後感:『1984年』サブカル版と言ったら誉めてる? けなしてる??

  島田 美里
  評価:★★★★

 図書館と武力という組み合わせが、どうもピンと来なかった。でもきっと、そんなことを深く考えちゃいけない本なのだ。公序良俗に反する表現を規制する法律によって、検閲が実施されるという不気味な社会で、図書館は本を守るために対抗措置をとる。互いに武力行使も辞さないというのはちょっと違和感を覚えるけれど、そんな設定だからこそ、自分の意思で読書できない状況がリアルに伝わってきた。実際に想像してみると、読書を制限されるのは人としての成長を制限されるのと同じことのような気がして、怖いし、悔しかった。
 表現の自由について真面目に考えさせられる一方で、主人公の郁の恋愛も気になった。彼女が図書館防衛員に志願したのは、自分と本を守ってくれた青年隊員に対する憧れから。
女の子にとって、命がけで守ってくれる人こそ「王子様」なのである。
 郁を始め、隊員たちには、なんとなく部活動の匂いがする。ラケットを握りしめて、テニスの上手い先輩を見つめているような甘酸っぱいシチュエーションとダブるのだ。ただ、この物語の場合、ラケットは小銃になるんだけど。

  松本 かおり
  評価:★★★★

 著者が「近所の図書館に掲げてあった『図書館の自由に関する宣言』のプレート」から思いついたという設定が、とにかく強烈に面白い。主人公・笠原郁は、図書館に採用されて、連日、防衛員として「軍事訓練」に励むのだ! その内容は自衛隊も悶絶だぞ。図書館採用なのにそれってナニ?! このとんでもない意外さが、なによりの魅力。
 図書館に軍隊があるワケは本書を読んでのお楽しみとして、「メディア良化委員会」なる組織と「公共図書館」のドンパチ合戦は、本好きなら手に汗握って図書館を応援せずにいられまい。本好きにとって、本は決して、ただのモノではないのだから。
 郁の暴走系派手キャラのおかげで、同僚やら上司とのエピソードには事欠かない。特に、郁と上官・堂上とのポンポンずけずけ、ときにキッツーイ会話の応酬は、一見反目しているようで実は相性良さが感じられ、なにやら甘酸っぱい。今後が気になるなあ。ムフフ。  

  佐久間 素子
  評価:★★★★★

 ライトノベル色が強くて、少々むずがゆいものの楽しかった!
 公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律「メディア良化法」が成立した日本。拡大解釈された検閲権への対抗手段として「図書館の自由法」が掲げられ、メディア良化委員会と図書館の抗争は公然と激化、互いに武装するにいたる。そんな恐怖の時代を舞台に、はねっかえりの新人図書防衛員のお仕事とラブ(?)がコミカルにえがかれる。
 ばかばかしいなあとおもしろがりつつ、本にまつわる自由の剥奪に、身を震わせるほど腹を立てている自分がいる。平和主義者の私だけれど、この自由のためになら戦えるかも、なんて、うっかり妄想モードだ。フィクションなんだから〜と笑うなかれ。犯罪捜査のためだから利用者情報を提供せよと図書館に圧力がかかったり、子供の健全な成長を考えるというお題目で「問題図書」が規制されようとしたり、まさに今ある現実でないの。だから、大人のケンカで見事に勝利をおさめる基地司令の発言に、ぶんぶんうなずいてしまうのだ。善悪がぱっきり分かれすぎているきらいもあるけれど、娯楽としてはむしろ良しとすべきでしょ。続編が楽しみ。

  延命 ゆり子
  評価:★★★★

 ムギャー!
 図書館が武装化!? 図書館職員が銃撃戦!? なんなんだこれは。
 面白すぎる破天荒な設定。あり得ない奇抜な発想。だけどディテールがやけにリアルでそれを感じさせない。とるものもとりあえず突っ走るその疾走感が、いい!!
 近未来、メディア良化委員会の検閲から本を守るために公共図書館は警備隊を組織する。両者は武装化の一途を辿り、公共図書館付近では激しい銃撃戦が繰り広げられていた。主人公は図書館の特殊防衛軍(タスク・フォース)に抜擢された直情型の新人隊員、郁。自衛隊顔負けの激しい訓練、命がけの任務。けれど一転して図書館内部での地道な配架作業もあり、請求記号を覚えるチマチマした作業とのギャップに、ププププ……笑ってしまう。ありえねー。
 現実には事は単純ではなく、実名報道や未成年者の顔写真の掲載など行き過ぎた報道は微妙な問題を孕んでいるとは思うけれども、ま、これはこれでいいのだ。だって、このおはなし、楽しいもん!
 蛇足ですが郁と上官の堂上との「泣くならオレの肩貸すぞ」的な乙女なやり取りはかなり恥ずかしくはあった。

  新冨 麻衣子
  評価:★★★★★

 厳しい検閲制度に対抗するため図書館が独自に軍隊を持っているという、著者らしいトンデモ設定。ヒロインは男子顔負けの体格と運動神経で図書特殊部隊に配属された新人・郁。高校生のころに書店で自分が欲しかった本を守ってくれた図書隊員にあこがれたことがきっかけで図書隊員を目指し、知識は追いつかないが根性の座った女の子だ。その郁が唯一苦手としてるのが直属の上司である堂上だ。実績トップクラスで隊員たちの尊敬を一身に集める男だが、なぜか郁には特別に厳しくて……。
 著者曰く「月9」風(笑)。読んでるこっちが恥ずかしくなってしまうような、じれったい恋物語ですね。一方で図書館と検閲サイドの争いは、まさに軍隊を必要とする「戦争」状態。また図書館内部でも原則派と行政派が水面下で攻防を繰り広げている。そういうダークな一面を知って絶望するか、前進するか……郁の成長の物語でもある。
 主人公二人を取り巻く他のキャラもいい。美人で賢くやたら情報通な郁のルームメイト柴崎、堂上の同僚で笑い上戸だが世渡り上手な小牧、郁の同僚でエリート予備軍の手塚などなど、魅力的なキャラ満載です。これまた続編希望!


  細野 淳
  評価:★★★★★

 静かで、文化的な場所のイメージがある図書館と、銃声や怒号が飛び交う戦争。両者は、かなり対極的な部分に位置する存在。でも、そんな二つが、本書では見事に一緒になってしまった。
 いきなり出てくるのは、軍隊式の訓練の場面。新人の女性「図書防衛員」笠原郁が、上司である堂上篤にしごかれているところだ。図書防衛員とは、「メディア良化法」なる法律によって誕生した「良化特務部隊」に対抗して、図書館側が生み出した組織。そんな「図書防衛員」と、「良化特務部隊」が両者の威信をかけて争っているから、戦争のような状況になってしまうというわけだ。
 設定はもちろんスバラシイ。あと、惹かれたのは登場人物同士の会話の軽やかさ。登場人物たちのキャラクターが、そのまま直に伝わってきて、スイスイと読めてしまう。これは、純粋に作者の力量。設定や構成、文章……本書のどの部分をとっても、心から楽しめてしまう作品であった。

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