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勝手に目利き
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俺が近所の公園でリフティングをしていたら
俺が近所の公園でリフティングをしていたら
矢田容生
【小学館】
定価1365円(税込)
2006年3月
ISBN-4093876487
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清水 裕美子
  評価:★★★

 サッカーファンが夢見るのは……高校生プレイヤーの「俺」が日本代表との調整試合で代表を破ってしまう展開。U-20に召集され、平山や森本やカレンとアルゼンチンを破る夢。決勝点は自分の逆転シュートだ!
 衝撃の事件にサッカーを諦めそうになりながら大学へ進学、Jリーグの特別枠の練習生へ。そこに2006年ドイツ。ジーコからの召集がかかる。中田英と中村俊輔の共存という課題。そこに俺が果たすクサビの役割、小野が思い切って前に出ることが出来る黄金の中盤の最終形。
 いいんです。堪能して下さい。ヒロインがモニカ「ちゃん」であろうが、粗末に扱われようがいいんです。頬を綻ばせながら、思わず右足に力が入りながら、涙して下さい。臨場感たっぷりにピッチの上を走る気分、静寂の後、つんざくようなサポーターのコール。2ちゃんねるへの書き込みから始まったサッカー「俺」活躍物語。これぞ小説の醍醐味です。
読後感:サッカーファンならずとも力が入ります。

  島田 美里
  評価:★★★★★

 なんて臨場感! すっかり競技場のスタンドで観戦している気分になってしまった。主人公は、サッカー好きな高校生・樋口。サッカーが得意なハーフの転入生・モニカに影響されて、その潜在能力を開花させていく彼は、まさにシンデレラボーイだ。トントン拍子で国際舞台に進出する展開に、気持ちがスカッとする。いつもは野球派の私でさえ、血が騒いだ。
 それにしても、サッカーのルールがあまりわからなくても、ちゃんと試合の模様が目に浮かんでくるからすごい。ジーコ、川口、俊輔といったビッグネームがそのままの名前で登場していることもあるけれど、臨場感の秘密は一つ一つのプレイの描写にある。まるで古舘伊知郎の実況みたいに、的確で切れ味が良いのだ。
 つい野球に例えてしまって申し訳ないが、甲子園球場に行って、勝ち試合でジェット風船を飛ばしたときのような興奮が甦ってきた。単純明快なストーリーを完璧に補う迫力ある試合に、スタンドの大歓声まで聞こえてくる気がした。スポーツファンにとって、このライブ感はたまらない!

  松本 かおり
  評価:★★★★

 著者は言う。「私は何の気なしに書き始めました」。それホント? 私はプロ野球とNBAは好きだが、サッカーはほとんど観たことがない。ロナウジーニョ、宮本、中田ヒデ、大黒の顔を知っている程度。そんな蹴球ド素人なのに、えらくエキサイトさせられたぞ。
 なんといっても試合描写のスピード感が爽快。鮮やかな球さばき、絶妙のチームワーク、競り合いの緊張感、どれをとっても刺激的だ。主人公・樋口選手の苦悩にはもう少し踏み込んでもいいだろうし、全体をみればスポーツ系青春ドラマにありがちな展開ともいえるけれど、それでも私は、好きなサッカーに一心不乱に立ち向かう樋口の情熱にシビレた。
 また、本作には、単なるサッカー小説以上の奥行がある。選手として大成するためには技術だけではだめ。では最も必要なものは何か。たとえばその答えは、サッカーだけでなく、スポーツとは無関係の世界にも当てはまる普遍性あるものなのだ。

  佐久間 素子
  評価:★

 ある意味、ものすごく正統派のスポーツ小説といえるのかもしれない。印象的には、サッカーの試合描写ばかりという感じ。サイドストーリーがちょっとどうかと思うくらい安っぽいので、相対的に濃く感じてしまうのかもしれないが、小説としてはやはりバランスが悪いかな。むろん、サッカー部分が飛び抜けておもしろいというのなら、こういうのもありなのかもしれないが、実を言うと私、途中で飽きてしまったのよね。敵味方いりみだれた心理戦でもかかれていれば、もう少し楽しめただろうか。実況中継と主人公一人の思惑だけじゃ、興奮にまで想像力が届かない。スポーツ観戦を楽しむ能力がやや欠如しているのは自覚しているが、同じ内容ならば、マンガの方が断然親和性が高いよなあと、ついついよそ事を考えてしまう始末。あるいは、熱烈なサッカーファンであれば、ものすごく楽しめたりするのかもしれないのだけれど。無責任な評でごめんなさい。

  延命 ゆり子
  評価:★★★★

 サッカーはまるで門外漢の私。細かいパスやドリブルの描写を全て理解できているわけではないものの、作者のサッカーに対する溢れるほどの愛情を感じられるだけで、サッカー小説というものがこれ程までに面白くなるとは……! 意外なり!
 何せ主人公を泣く子も黙る日本代表とプレーさせてしまうのだ。有名選手をガンガン脇役で登場させちゃうのがスゴイ。楢崎、宮本、小笠原、川口……。憧れの選手たちと言葉を交わしながら勝利を掴み取っていく描写のそのスピード感よ!
 ただサッカーが好きで好きでたまらなくてボールを追いかけ続けてた男の子がそのまんま大きくなって、ボールをパソコンに変えて小説を書いたらそれもまたすごく楽しくて止まらなくなった。そんなワクワク感が伝染してこちらの気分も高揚してくる。ああ! 思いきり体を動かしたくなってうずうずしてくるよ。気分爽快なストーリーが単純に楽しかった。

  新冨 麻衣子
  評価:★★

 主人公の樋口は埼玉県の高校のサッカー部に所属、隠れた才能を持つが全国区では無名の選手だ。その樋口が公園で一人リフティングをしていると、二人組の女の子が鮮やかに樋口からボールを奪った。そのうちの一人はのちに樋口のチームメイトとなるモニカ。女子ながらその才能はワールドクラスで、それを間近で感じることで樋口はその才能を開花させていく。
 あまり深く考えちゃいけない気がして来た。いいではないか。無名の高校生がジーコジャパンの救世主となってドイツ大会で活躍しても。
 文章に勢いはあるし、試合中の描写なんて素晴らしい。読みやすくて楽しめる一作だと思います。

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