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暁への疾走
ロブ・ライアン (著)
【文春文庫】
税込810円
2006年7月
ISBN-4167705281
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
久々湊 恵美
評価:★★★☆☆
んん?一体どこからレーサーとして戦時下の状況で活躍しだすんだろう??
前半とても丁寧に状況を描いているせいか、一向にそのメインであろう場面までたどり着かない。
もちろん、寡黙な青年ウィリアムズが一流レーサーとしてのし上がってくところや画家の愛人イヴとの恋愛も面白いんだけど。
戦時下のドイツに占領されたフランスの状況なんかも、悪くはないのだけれどイマイチ突っ込んだところがなくて消化不良だったのです。
もっと色んな工作員としての活躍があるかと思っていたので、まだ?なんて思ってしまって。
とはいえドンデン返しなんかも色々ちりばめてあって、ラストだってシャレているし面白くないわけではないんだけど。
結局、出来事の上っ面を撫でただけのような印象だったのだ。もう少し、物語にワクワク感と疾走感が欲しかったなあ。
せっかくレーサーが主人公の話なのにもったいない!
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松井 ゆかり
評価:★★★☆☆
物語の前半はあまりの逆玉の輿&シンデレラボーイぶりに「ドリーム入りすぎだろ!」と思わず突っこんでしまったが、実話が基になってるんですね、この話。花形レーサーだった主人公とその好敵手がレジスタンスに身を投じていく心情がいまひとつつかめなかったが、スパイものの王道的作品で楽しめる話運びになっている。
そうは言っても戦時中のヨーロッパが舞台となっている以上、気楽なばかりの内容というのはあり得ない。前半の華々しいカーレース風景(車好きの方にはたまらないのではないだろうか。名車もたくさん出てくるようである。40代を目前にしてようやく、あのエンブレムのおかげでベンツだけは見分けられるようになった人間には、到底ありがたみはわからないが)から徐々に暗雲立ちこめる戦争の直中に身を投じていく主人公たち。せめて、車を駆っているときにはこの世の憂さをすべて忘れられる瞬間があったのならいいのだが。
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島村 真理
評価:★★★★☆
オーストリアの湖から引き上げられる英国軍の参謀専用車。それを見届けにきた老婦人。秘めた物語の息吹を感じるこの冒頭シーンは魅力的だ。現在から一気に73年前のフランスへと時代はかけ戻る。2人の天才レーサーがナチス占領下のフランスを解放すべく、イギリス情報部の密命を帯びて活躍する冒険小説。
登場人物たちは実在した人たちだという。核となる事件も歴史的事実。もちろん、これらの事実を元に作者によって創作されたフィクションではあるが、いまどき新鮮なくらい、すがすがしい愛と友情、正義感があふれている。だから、よけい驚きをもって感じられた。
彼らの活躍が光だとしたら、戦争がもたらす命の犠牲は影だろう。ユダヤ人たちを収容所へと運ぶ家畜用貨車の周りにちらばる小さなメモ。収容所での捕虜達の処分。消息不明の工作員。どれも背筋を凍らせる。心地よい勝利ばかりを書いていないというのがいい。
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荒木 一人
評価:★★★☆☆
第二次世界大戦前後のヨーロッパを舞台に、名車「ブガッティ」をかり、疾走する主人公達。追いつ、追われつ、騙し、騙され。レース、ロマン、戦争にスパイ、素材は文句無しの冒険小説。
核になっている部分は事実に近いところの話らしいが、あらすじだけを読んでいる気分。読後感はワクワク・ドキドキが少々足りない。
主人公のウィリアムズ(イギリス人)は、高名なイギリス人画家オーペンのお抱え運転手だった。オーペンの愛人イヴとの背信行為により、運転手と愛人は二人仲良く首になる。ウィリアムズが、イヴの多額の手切れ金でプレゼントされたものは、シリーズ最強ブルーのブガッティ35B。レースでの優勝、結婚。順風満帆だった二人に戦争の影……
素材としては、非常に興味をそそられるのだが、心に残る台詞や場面が少く無いのが残念、全体の印象が薄い。始まり方も非常にドラマティックなのだが、抑揚と臨場感不足で不満が少々。時間軸もちょっと分かりにくい。最後は、それなり満足。
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水野 裕明
評価:★★★★☆
イギリス伝統の冒険活劇小説。良くも悪くもこの一言で本作品を言い表すことができそう。ナチスドイツは残酷で卑劣で人間らしい暖かみもない悪であり、それと戦うイギリスやフランス・レジスタンスは正義の行いをしている。ということらしいのだが、今回の課題図書である『接近』を読んだ後に本作品を読むと、そのあっけらかんとした画一的な位置づけにちょっと考えてしまった。ユダヤ人をガス室へ送り人種抹殺を行おうとしたナチスドイツは許しがたい存在であることは確かだが、といって戦争を行っている一方が悪で一方が善であるとは断定しかねる部分はあろうかとも思うのだが……。とは言え、この作品は冒険小説としては非常に面白かった。戦争が始まってレジスタンスを援護するためにそれまで培ってきたレーシングドライバーの技術を活かして車で走り回る戦闘場面よりも、古き良き時代のル・マン耐久レースの様子やラブロマンス、レーシングドライバーとして有名になっていく前半の方がある意味読んで楽しく、私はこれだけで十分だと感じてしまったのだが……。
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