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2008年12月

岩崎智子の勝手に目利き

『美女いくさ』 諸田玲子/中央公論新社

 「悲劇の戦国三姉妹」と言われる信長の妹・お市の方の娘達、「茶々・初・お督」。
本書はそのうち、最も幸福な晩年を送ったと思われているお督(小督)を主人公に据えた歴史小説である。お茶々-後の淀どのに比べると地味だが、ここでは女弾正と呼ばれる激しい女性として描かれる。自分の情熱に一途で、嵐の中助けを呼びに城を脱出し、別れた夫と忍び合う。立場が立場なら平凡な人生を送れたはずの女性が、権力者のお膝元にいたために、愛する夫と離別させられ、3度夫を持つ。小督だけではなく、淀君、北政所、秀吉の愛妾達女性達が、男達とはまた別のかたちで、いくさを繰り広げる様が描かれる、淀君は勿論、権力者秀吉、家康、悲劇の関白秀次も、男性側の物語とはまた異なる顔を見せる。三代将軍家光を巡って、春日局と争ったエピソードくらいしか印象にない貴方、是非ご一読を。

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