WEB本の雑誌>今月の新刊採点>【単行本班】2008年9月の勝手に目利き
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我が青春のバイブル『竜馬がゆく』に出会わなければ、これほど歴史に思いを寄せることはなかったと思っております。著者であられる司馬遼太郎先生が亡くなられてから、もう十年以上経つのだなあと、この本を読んでしみじみ。
それにしてもこのタイトル、思わずニヤリ。話はそれますが、はらたいら氏の奥様が書かれた本のタイトル『はらたいらに全部』に匹敵するインパクトがあります。
閑話休題。
司遼さんの側面を記した本はいくつかありますが、これはタイトル通り『街道をゆく』という名連載を担当した(しかも最後の)記者さんの回想録。独自の史観を語り、この国を憂う一方でジブリアニメが大好きだったなんて。そして何より、新聞記者の先輩として、著者に接してこられた司遼さんの厳しさ、優しさが滲み出ているのです。ほろり。
「何で、こんなに本を読んでるんだろ」と思うときがある。
振り返ると、小学校では本の虫だったが、それ以降は部活〜バンド〜バイトやらで遠ざかっていた。戻ってきたのは底辺サラリーマン時代、重松さんの『日曜日の夕刊』を書店で見つけタイトル買い。再び本にのめり込んだ。「本に逃げてるでしょ?」と先輩に図星を突かれたことも──確かにあの頃はそうだったなあと。
重松本に入れ込むのは、そこに等身大の自分が点在していて、「追憶」「郷愁」「やさしさ」の三拍子に活字がボウッと滲んで、流した涙の分だけココロが軽くなるから。
本作は『ツバメ記念日』に続く「季節風」シリーズの二作目。今さら重松節を説明する必要はないだろう。今回は「べっぴんさん」がツボだった。今、自分にとって読書はビタミン補給と感じている。だから今日も、これからも本を読んでいこうと思う。
東京創元社はミステリー好きにとって憧れの的と言っていい存在だろう。私としてももし可能であるなら入社したい。
さて、本書はマイ“東京創元社で好きな叢書”の双璧のひとつ「創元クライム・クラブ」(もうひとつは「創元ミステリ・フロンティア」)の1冊である。わくわくしてくるじゃないですか、竹内真にミステリーを書かせるとは!
竹内氏といえば、『自転車少年記』とか『真夏の島の夢』とかの青春小説を書く人というイメージ(いや、私の知る限りで言ってるので、思いっきり的外れだったら申し訳ないんですが)。これがもし違う出版社とかレーベルから出てたら、特に気に留めなかったかも。“文壇バー”“ミーコママ”といった古風なのか新風なのか判断しかねるキーワードに気を取られつつ読んでみたところ、なかなかいいですよ!これまでの著作はと勝手が違うせいか、ところどころややぎこちなく感じられる部分もあるけど、十分楽しめました。竹内さん、かなりミステリー好きなのでは?と思われる点も好印象。みなさん、新しいミステリー作家の登場を喜びましょうぞ!