元大統領シェフが「キッチンでフキンを使うな」と厳命~『暴走族だった僕が大統領シェフになるまで 』

暴走族だった僕が大統領シェフになるまで
『暴走族だった僕が大統領シェフになるまで』
山本 秀正
新潮社
1,365円(税込)
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 暴走族から料理人になり、名門ホテル『ザ・リッツ・カールトン』のワシントンD.C.店の総料理長として、レーガン、ブッシュ、クリントンという3人の大統領の就任パーティーを取り仕切った山本秀正さん。日本で生まれ育ち、アメリカに渡って現地の料理界の最高峰にまで登りつめた彼は「アメリカより日本のほうが料理のレベルが高い」と断言しているが、日本の料理界にもアメリカに比べて明らかに遅れている要素があるという。

 その「遅れている要素」というのは驚くべきことに「衛生面」。日本の料理人といえば綺麗好きで几帳面というイメージが強く、山本さんもアメリカ人が大雑把で日本人が几帳面なことは認めているが、曰く「残念なことに、その性質が行動に結びついていない」らしい。

 その典型例として挙げるのが「フキン」の存在。日本の料理屋に行けば、板前さんがフキンでまな板やテーブル、食材を拭く姿は珍しくもなんともない光景だが、山本さんによれば、これは「あっちで拭き取ったばい菌をこっちへ移す最悪の作業」なのだそうだ。それゆえ山本さんは、自分のキッチンでは使い捨て紙タオルの使用を励行。また、手袋についても同様の理由で廃止し、素手で作業をして、その都度手を綺麗に洗うことを慣例にさせたという。

 とはいえ「味覚の繊細さや素材の豊富さという面に関して言えば、日本の料理は非常にレベルが高い」と語り、日本人の舌が肥えていることを認める山本さん。彼の華麗なキャリアの中でも頂点と呼べるのが、前述の大統領就任パーティーだが、山本さんは「ブッシュ=肉さえ食べていれば満足」「クリントン=食のセンスが無いタイプ」とかなり厳しい評価を下している。

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