「東京ドーム○個ぶん」に違和感アリ? 大きさの例えにレモンを使ってみるとどうなる

なんらかの事情
『なんらかの事情』
岸本 佐知子
筑摩書房
1,620円(税込)
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 巷でよく使われる表現「東京ドーム○個ぶん」。名古屋や大阪にもドームがあるにも関わらず、判で押したように東京ドームが登場します。そんな東京ドーム、実際の大きさはというと、面積を表す建築面積は46,755m2、体積(容積)を表す東京ドームの容積が124万m3が「東京ドーム1個分」。確かに大きいのかもしれませんが、東京ドーム50個ぶんと言われても、なかなか大きさが実感できないものではないでしょうか。

 こういった例えの一つに「レモン○個ぶんのビタミンCが含まれています」もあります。そんなレモンの例えに、違和感を抱いているのが、翻訳家・岸本佐知子さん。自身のエッセイ『なんらかの事情』のなかで、レモン200個ぶんと聞いて感心するとともに、レモンって実は大したことないんじゃないかという疑念がかすかにわきあがるのも禁じえないと言います。美容・健康系ドリンクなどによく使われるこの言い回し。確かに、この小さな容器のなかにレモン200個ぶんが入っているのなら、レモン1個って大したことないな......と思った人も多いはず。そして、実際、レモンは大したことないようで、含有量でいうなら、ブロッコリーの方が多いのです。

 「『ブロッコリー○個ぶんのビタミンC』と言うかというと、言わない。それはたぶんビタミンCの「C」のあたりが何となく酸っぱそうだからで、だからレモンはすごくビタミンCっぽい」と岸本さんは持論を展開。

 また、「当のレモンにしてみたらどうなのだろう。勝手に単位にされたあげく、見かけ倒しのレッテルを貼られ、正直『放っておいてくれ』という心境なのではないだろうか」と、心配までしています。

 そこで、岸本さんは、彼らの新天地を考えました。

 「レモンをビタミンCからの呪縛から解放してやり、広さの単位に任命する。『東京ドーム677個ぶんの広さ』を『レモン113億個ぶんの広さ』にする。どうだろう。あいかわらず実感はわかないが、数が増えたぶんスケール感が増すし、何より体によさそうだ。逆に東京ドームはビタミンCの単位に任命する。『この一本で東京ドーム250個ぶんのビタミンC』。リーグ優勝ぐらいはできそうだ」

 どうせ良くわからない例えをするのであれば、インパクトがある方が聞き手も残るはず。これからはレモンの名誉のために、広さを例える時にレモンを出してみませんか?

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