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├2001年6月
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春、バーニーズで
【文藝春秋】
吉田修一
定価 1,200円(税込)
2004/11
ISBN-4163234802
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
朝山 実
評価:A
街中でバッタリと昔、同棲していた人と出会う。こちらには妻と小さい子がいて、むこうにも若い男がいた。互いに気づいていないフリ。居心地の悪い場面の切り取り方がうまいんだよなあ。しかも設定が泣かせる。相手は、人生でただ一人関係をもったオカマだ。そんな表題作から始まる連作短編集。
読後も記憶鮮やかなシーンをもう一つあげるなら、第二話。日曜日に駅前のマクドナルドで、子供を連れた主人公が思案している。空席はなく、四人掛けのテーブルに若い女性が一人。ここ空いているよと子供がテーブルに座った。相席は承諾されたものの、自分は真横か前か。躊躇するんだなぁ。しかもその女性と会話が弾んだりして。彼はそれを妻に言えずに秘密にする。何も起こってないのに、特別な予感のする場面はリアル。東京郊外で暮らしをする“平凡”な主人公に、一瞬訪れるゲート。そこをくぐれば明日は昨日までの路線ではなくなる。揺れる緊張が見え隠れしています。ただ最後の短編の付加されているのがわからない。読み方が悪いんだろうか…。
安藤 梢
評価:A
小説の主人公がその後どんなふうに暮らしているのか想像してしまうことが、ある。そんな主人公にまた会えた時、彼らにも変わらず時間が流れていたんだと嬉しくなってしまう。『最後の息子』で40歳のオカマ、閻魔ちゃんと暮らしていた筒井は30代で他人の子供のパパになっていた。表題作「春、バーニーズで」ではその閻魔ちゃんとの再会を描き、時間が経ったことで穏やかに当時を思い出している。時間の流れがとても優しい。「夫婦の悪戯」では、お互いに分かり過ぎているが故に身動きが取れなくなった夫婦を描いている。一歩離れたところから観察しているような、他人の生活を覗き見ているような雰囲気が漂う。お互いに一つずつ嘘を付くというゲーム、あまりにリアルでぞっとする。鳥肌が立ってしまった。水面下で複雑に感情が絡み合っているような描写が実に巧い。
磯部 智子
評価:A+
どこにでもいそうな普通にみえる人間が、平凡と退屈というレッドカーペットの上をずっと歩いてきたとは限らないという話。そして、又いつ、こちらの世界からあちらの世界へ行ってしまうか解らない。筒井は妻の瞳と、その4歳になる連れ子、更に妻の母と一緒に住む。その平穏で暖かな日常を切り取った連作短編集かに見える。子供を実子のように可愛がり、義母ともうまくやっている。週末には家族で買い物に出かけたりもする。部下の結婚式には夫婦で列席し「理想の御夫婦」とうつる。そんな中、少し酒に酔った瞳がお互い一つずつ嘘をつこうと「狼少年ごっこ」を提案する。筒井のついた「嘘」はオカマバーのママと同棲していたというもので、一方の瞳の「嘘」と共に「正直者の夫婦」に苦い思いを残す。最後の『楽園』では、ついに向こうへ行ってしまったのか、と思う。でも「二つの時間を同時に過ごしている」という楽園は全く別の解釈もあるかもしれない。挿入されるモノクロ写真は、シャレた雰囲気を醸し出しているとも、今いる場所が限りなくグレーゾーンなのだとも、これまた読み手によって受け取り方が違う気がする。空恐ろしい人生の深淵を一瞬覗いたかのような佳品である。
小嶋 新一
評価:D
嫁と息子を連れてバーニーズで買い物をしている最中に、昔々付き合っていたオカマとばったり出くわした主人公は、知らんぷりを決め込むのでなく、息子を連れたままオカマに話しかける……『春、バーニーズで』
出勤途上で衝動的にハンドルを切って道をはずれ、会社からかかってくる携帯電話の着信音に耳をふさぎながら目指した先は、高校時代の修学旅行で腕時計を置き忘れた、日光東照宮だった……『パーキングエリア』
日常の生活の中に突然出現した非日常、普通の生活をしている誰の前にも現れうる一瞬を、連綿と続いていく時間の流れの中からスパッと切り取り、うき彫りにした連作短編集。人生の断面、緊張した瞬間を端的に、冷静に描ききっているのが見事だが、全般的に小説書きの巧みさだけで読まされた感あり。それで?それだけ?との物足りなさを感じてしまったなあ。
三枝 貴代
評価:A
連作短編集+1。子連れの離婚経験女性と結婚した筒井は、新宿のバーニーズ・ニューヨークで、かつていっしょに暮らした人に再会した――。
気負いも格好つけもないままに、良い男、良い女というものはこういうものなのだろうなと思わせる、さらっとした大人の優しさが、ある種のあきらめとともに語られてゆきます。独特の美しい文体は、風変わりでありながら無理なくしみいるように入ってきます。読み終わるのがもったいない贅沢な本でした。
黒一色の装丁も実に上品で美しい。プレゼントにつかいたい本ですが、やや思わせぶりでしょうか。
寺岡 理帆
評価:B
小さな、けれど何もないわけではない日常を切り取った連作短篇集+1短篇。とっても細やかな、そして静かな筆致ですぐに埋もれてしまいそうな感情の襞をうまく描いているように思う。妻と出かけた買い物先で、通勤途中の満員電車の中で、旅先のホテルで、そして出勤で出した車の中で。
普通だったら退屈な小説に終わりそうなのに、シーンの切り取り方が上手いのか、それともやっぱり心象風景の描写が上手いのか、何とも言えない独特の雰囲気を醸し出して、それがフッ、ととぎれるように終わってしまったその後の余韻もじんわりと心に残る。
薄い本なんだけれど、挿入されているモノクロームの写真も素敵。最後の短篇の前にある余白のような見開きページも絶妙。
ちょっとオシャレなヨーロッパの短篇映画を見たよう。
福山 亜希
評価:B
私にとって人生の分岐点は、いつも悲しい。これまでに実際に選んできた道とはことごとく違う道をもし選択していたら、今頃どんな人生を歩んでいるのだろうか。違う人生を生きるもう一人の自分と、そこで出会う筈だった人々への未練は尽きない。
主人公筒井は、オカマと同棲した奇異な過去を持つ。だが現在では、バツイチの子持ち女性瞳と結婚し、一人息子の文樹の父親にもなった。彼は良いパパであるし、仕事も家庭も万事ソツなくこなしていた。だが、通勤で車を運転している時、たった45度だけ、ハンドルを会社と違う方向に切った瞬間に、筒井は現実とは異なる「もうひとつの時間」へと禁断の旅を始めてしまうのだ。私は、このハンドルを切った瞬間の筒井の気持ちに、たまらなく共感する。自分のことのようにスリルを覚え、「今なら間に合う、元の道に戻れる」という良心の叫びをかみ殺し、行く当てのない方向へ車を走らせる筒井の気持ちにぴったり同調した。穏やかなスリルに包まれる傑作だ。