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ロミオとロミオは永遠に
ロミオとロミオは永遠に (上・下)
恩田陸 (著)
【ハヤカワ文庫】
税込672円
2006年7月
ISBN-4150308551
ISBN-415030856X
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  久々湊 恵美
 
評価:★★★☆☆
サブカルがいたるところにちりばめられていて懐かしい。その賑やかさと陰惨とも思われる描写をそれによって軽快にしているような気がします。
文章も読みやすく丁寧に書かれているにも関わらず、いまいち世界観に乗り切れなかったのです。
学園生活が中心に描かれているからかもしれないけれど、登場する大人の姿がよくわからない。
知力、体力ともに兼ね備えたエリートだけが入ることのできる学園。さらにトップを目指すために繰り広げられる生死をも左右するような競争。
そもそも大人たちはこの競争をみて楽しんでいるんだろうか。私には楽しんでいるように見えて残酷すぎるように感じてしまって。
そんな悲しい世界なんだろうか。
これが現代批判の一種であるとすると捕らえるなら、こんなに悲しい事はない。
過去のものが大量にちりばめられているので、未来があまりにも先がないように見えるような気もしてしまったのです。

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  松井 ゆかり
 
評価:★★★★☆
 戦前もしくは戦中派の人々に戦争体験があるように、団塊の世代に学園闘争があるように、我々にはサブカルチャーがあったということか(切実さがずいぶん異なる気はするが)。昭和は遠くなりにけり。
 日本人だけが地球に残ったという未来(「日本沈没」の逆バージョンみたいですね)。果たしてこれほどまでに80年代文化が珍重されるだろうかという疑問はやや残るが、各章に付けられた往年の名画の題名や巻末の「20世紀サブカルチャー用語大辞典」はおもしろい。
 それに加えて、なんといっても「大脱走」へのオマージュのような作品なんだもの!私も大好きなのだ、あの映画が。恩田さんの小説ではどちらかというと「ネバーランド」や「ユージニア」のような静かな作品が好みなのだが、こういう動きのある作品もいい。不信や裏切りもある。無情も死もある。しかし自分のすべてを賭けることのできる友情や信頼もまたそこに存在するのだ。

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  西谷 昌子
 
評価:★★★★★
 恩田陸はどこまで幅が広いんだ――といつも思う。今回は昭和ノスタルジーと毒に満ちた近未来小説だ。
狂気に支配された時代、少年たちが死にものぐるいで競争を強いられる。随所随所に出てくる昭和のサブカルチャーと、近未来の滅びかけた地球とのコントラストが何とも奇妙な味を呼んでいる。巻末のサブカルチャー用語大辞典も楽しい。この奇妙さ、独特の味に私はすぐに中毒のようになってしまった。少年たちの脱走劇も、サブカル要素によってひどく郷愁に満ちた、だが毒々しいものになっている。こんな表現は初めてだった。
読み終わるのが惜しい、ずっと読んでいたいと思わせられる作品だ。

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  島村 真理
 
評価:★★★★★
 大東京学園を舞台に男子高校生がくり広げる青春絵巻。ちょっと近未来編。見目美しいシゲルと誰にでも愛されるアキラの友情物語に、少々「大丈夫?」とさきゆき心配になったが上下巻いっき読みでした。日本人だけが地球に残され産廃処理をしていくという暗い設定ではありますが未来は明るい!
 過酷な入学試験の後に待ち受けるのは、労働につぐ労働と、命をも危険にさらされる実力テスト。奇天烈な学校方針といかれた教師達のためにいつ死ぬかもわからない。こんな学校はイヤだーと逃げ出しそうだが、なかにはいってしまえば染まっていくものだ。住めば都なのか、立派なマインドコントロールですね。そういうところは結構こわい。
 過酷な生活を魅力的にしてくれるのが、20世紀のサブカルチャーたち。会話や文中にまぜこまれたそれらのキーワードは、懐かしく楽しい気分にさせてくれる。20世紀サブカルチャー最高。サブカルチャー万歳。巻末の辞典を見るより先に、当時を思い出しつつ思い出を拾っていくのももう一つの楽しみ方です。

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  浅谷 佳秀
 
評価:★★☆☆☆
 学園暗黒ドラマに消費文明批判、20世紀サブカルチャーへのノスタルジアなどをごちゃまぜにしながら脱出活劇へとなだれ込むSFエンターティンメント。
 随所に面白い趣向が散りばめられていて、テンポよくすらすら読める。でも全体としては内容から浮きまくっているタイトルに象徴されるように、大味で中途半端で、行きあたりばったり感が漲っている。テストが毎回命がけのようなゲームになっているのに死者が出ないとか、脱走学生は処刑されることになっているのに、脱走未遂を何回も繰り返している学生たちが大勢いるなど、ツッコミどころ満載。また主人公アキラは格闘技の天才の筈なのに、その彼の肝心の格闘シーンがほとんど無い。悪役リュウガサキもあんまり出番がなくて、そのうち尻つぼみになってしまう。生活指導のタダノもカリカチュアライズされすぎて薄っぺら。
 どうせリアリティなんか蹴飛ばしているんだから、バトル・ロワイアルみたいにもっと思い切り血生臭くした方がかえってすっきりしたんじゃないかなあ。

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  荒木 一人
 
評価:★★★☆☆
 大爆笑! 娯楽作品としては最高の一冊。読後感は、「笑える」の一言に尽きる。上下2巻の厚めの本だが、一気読みできる。印字も大きめで読みやすい。目次が映画の題名であり、好きな人は尚楽しめる。ちなみに、SFでは無いです。(きっぱり)
 著者自身のコメントで、デビュー十周年目「裏」の集大成とある作品。尚、本文を読む前に、巻末の20世紀サブカルチャー用語辞典を読む事を、強くお薦めする。
 近未来、国連の「新地球」移民法制定により、日本人だけが廃棄物処理のために「旧地球」への居残りを余儀なくされた。居住場所、仕事、生活レベルも厳しく制限されている、後片づけの世界。何の保証もない世界で、唯一未来を約束された人間、「大東京学園」卒業総代。過酷な入学試験をくぐり抜けた主人公アキラ。そこで、見たモノは……
 著者と同年代の方々は、ノスタルジックな気分に浸り、毒され歪んだ20世紀文明を想い、爆笑&苦笑い&嘲笑出来る。恩田氏がこういう作品を書けるのは、かなり驚きではある。
 ひとつ気になっているのは、意味深なタイトルが殆ど理解出来ない事。

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