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天使と罪の街
天使と罪の街 (上・下)
マイクル・コナリー (著)
【講談社文庫】
税込680円
2006年8月
ISBN-4062754762
ISBN-4062754932

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  松井 ゆかり
 
評価:★★★★☆
 スリルありサスペンスあり、そのうえ謎解きまでも楽しめるという、これぞエンターテインメントと呼ぶべき作品と言っていいだろう。惜しむらくは筆者マイクル・コナリーの他の作品を読んでいればもっと楽しめただろうなということ。少なくとも「ザ・ポエット」(扶桑社ミステリー)は先に読んでおいた方がいいみたいですよ!
 かつての仕事仲間だった友人の死の謎を調査する探偵ボッシュと冷酷無比な連続殺人犯を追うFBI捜査官レイチェル。まあよくあると言えばよくある設定なのだが、引っぱるだけ引っぱってうやむやという消化不良を起こしかねない作品も多々ある中、筆者のはっきりとした形で決着をつけようという意気込みが感じられて潔い印象。硬派な描写が続く合間に、時折差し挟まれるナイーブな文章にもぐっとくる。

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  島村 真理
 
評価:★★★★☆
 この本がいくつかの本紹介で取り上げられているのに気がついた。それもたいていが絶賛しているのだ。読む前に先入観をもちたくないけれど、“なんだなんだ”と目がいくじゃないですか。マイクル・コナリーの作品の登場人物が勢ぞろいだという。はじめて読むのにいきなり、オールスター戦ですか?いやがうえにも気分が盛り上がるではないですか。
 大まかにストーリーを説明すると、探偵ボッシュが、かつての仕事仲間で友人だった男の不審な死についての調査依頼をうけ、さっそく調査をはじめた矢先、連続猟奇殺人犯につきあたるというものだが、実はこれは「ザ・ポエット」からの続きものとなっているらしいのだ。きっとそのあたりを読了しているとこの話がより面白いのに!!と歯噛みしたくなったが、それを抜きにしても充分に楽しめるというのが正直な感想です。
 それはさておき、ボッシュの頭脳明晰でクールなさまがたまらない。天才的なひらめきというより、読者がついてこられる範囲での飛躍に、勘の鋭さがプラスされ、手の届くヒーローという感じで好感触。

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  水野 裕明
 
評価:★★★★★
 ハリー・ボッシュシリーズというのは、何かで聞いたことがありつつも、初読だったのだが、これほど面白いとは思わなかった。こんなことならもっと前からシリーズをすべて読んでおけば良かったと後悔。解説によると、特にこの作品は「わが心臓の痛み」のテリー・マッケイレブや「ザ・ポエット」のヒロインであるレイチェル・ウォリングなど他シリーズやノンシリーズの主人公が総出演するという豪華仕立てで、それぞれの人物関係を横糸に、サイコ・キラーによる連続殺人事件を縦糸に、読みごたえのある作品に仕上がっている。と言って、他の作品を読んでいないと人物関係が分からないということもなく、背景や事件との関係、それまでの事件の概略などが分かりやすく書き込まれていて、充分楽しめるようになっている。プロットの巧緻さ、二転三転する状況、綿密に練られた計画、展開のスピード感などジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズに匹敵する、アメリカン・サスペンスノヴェルの傑作のひとつと思った。

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